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三人目の異世界転移者

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「これも一緒に転生されてきてたのかー」

 たいした時間は経ってないはずなのに『昭和堂』という文字を見て、無性に懐かしい気持ちになったのは異国で見るからなのか。

「これは食べ物なのか?」

「ああ、ご褒美的な食べ物で色々名前があるんだぞ」

 袋から中身を取り出して、皆が取りやすいようにお菓子達を俺は並べる。

「ほぉ、これを貴様が選んだものを先に食べれば少しは我々を信用できるか?」

「別に疑ってはいないが、毒入りではないし」

「暗殺者がこれは毒ですと名乗るはずがないだろう」

 言われてみて、妙に納得をする言葉に苦笑いをする。

「どれ、選んでみよ。私がそれを食べてやろう」

「ロイエルーン様にもしものことがあってはいけませんので、ここは私が」

「ミゼルも食べたーい」

「この者の信用を得る為には国の長である私が代表して……」

「おやめください、私が……」

「ミゼルがー」

 三人が押し問答をしている様子を見て、自分の口に一つ和三盆のお菓子を放り込む。

「うまいな」

「貴様!貴様が先に食べては!」

「私にお任せください!」

「ミゼルも食べるー!」

 三人は言うが早いが手を伸ばして、一気に和三盆を取り合いしては口に入れる。

「う!」

 ジュリアーノがその場で倒れこんだ。

「うまい」

 昭和か? 令和を迎えての敢えて昭和のギャグが流行ってんのか?

「おいしー!」

「いけるなこれ!こんな美味しいものは初めてだぞ!」

 残りの二人も感激して、中に俺が毒を入れていたらどうするのかなどは関係ない程の勢いである。

「毒味というより、食べたかっただけなのか?」

「こんな甘い匂いさせて我慢しろと言う方が無理だからな」

「こんな美味しいものがあるのか!貴様の世界では」

 えらく喜んでくれるものだ。

「良かったらこっちのマカロンも食べなよ」

「マカロン!? この奇抜な色とりどりの物がマカロンと言うのか。いい匂いするがこれは流石に食べれないだろう?」

「うまいよ、これも。色によって味が違うけどね」

 一口かじって、彼女らにマカロンを薦める。

「ミゼルはピンク!」

 続いて二人もマカロンに手を伸ばして食べ始めた。

 ロイエルーンは遠慮なく一気に入れ過ぎて、喉にマカロンを詰まらせて窒息しそうになり、医務室に運ばれるなど大騒ぎになった。

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