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第十三章 ひとりぼっちの温泉旅行
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「うぅぅ」
雪実は仕事の件に関しては納得せざるを得ないのだろうが、それに紐付けされる詩織さんとの事情を知ってるのは雪実だけなので聞くに聞けない状況なのだろうが、カオル君立ち合いで職場の昇格をしていく約束をしたのだからおおよその予想はしているだろう。
「まぁ、お前の想像通り仕事も詩織さんとも終わったんだよ」
びっくりした顔を見せるが、じいちゃん達に気付かれまいと気を使ってくれているのかそれ以上の事は聞いてこなかった。
この説明、本当は雪実が俺の部屋を出ていく前にちゃんと言えば良かったのだが、あの時は自分も気持ちの整理が出来てなかったのもある。
だけど人間という生き物は、どんなに辛い事があっても時間という薬が悲しみを和らげてくれる。
その時間は生まれたての赤ちゃんでも大金持ちでも大企業の社長でも皆平等に与えられる。使い方はその人自身に委ねられるのだが。
卑怯な気持ちを言うならば、雪実と今生の別れを自らの手で行うという最悪の事態を経験したが、ギリギリの所で助かり今目の前で美味しそうに朝ご飯を食べている。
この何度も見た当たり前の光景を今は本当に幸せに感じている。
だから詩織さんとの関係がどうでも良いというのではないのだが、この世で生きている限り、じいちゃんの言葉を借りるならば「なんとかなるだろう」に尽きるのだ。
※
朝食を終え一先ず自分の部屋に雪実と二人で戻って来た。どうやら無料招待券で雪実は一足早くこの旅館に来ていたのだ。呑気に散歩をしている途中に運悪く九尾達あやかしに捕えられてしまったようで。
後から入った雪実が部屋の扉を閉めた途端、俺の背中に飛び掛かってきた。ったく、子供っぽくじゃれ合う程離れてなかったというのに……。
やれやれといった様子でおんぶする格好になった雪実を降ろそうとしたが、それより早く俺は雪実に連れられ宙を舞いながら布団の上に運ばれた。
「え? え?」
「……お兄ちゃん……雪実、もう……我慢……できない……」
少々荒く布団の上に落とされた瞬間耳元で囁いたかと思うと、今度は荒々しく耳を口にふくまれてしまった。
「はうっ……」
「お兄ちゃん、もうダメ……ずっと我慢してたから……いつも以上に……」
耳から口が離れた時にチラッと雪実の顔を見ると、真っ赤になっているのがわかった。しかもエロそうな顔をしている気がする……。
「お前、もしかして酒呑童子の持ってた酒の匂いで酔ってるんじゃ……」
「酔ってない! けどいいじゃん、お兄ちゃん詩織さんとは付き合えないんだし、それに……お兄ちゃんわらわのこと愛してるって言ってくれたし……」
「えぇ? いや、言ってないような……言ってない言ってない!」
「じゃあ今から言ってよ!」
無理やり俺の服をまくり上げて体中に口づけてきた。朝食を食べている間、性的欲望を理性が抑え込んだ反動でエロだが増し増しになっているのだろうか? ただ雪実の言い分があながち間違いではないというのも断固拒否出来ない部分でもあったのだが。
雪実は俺に口撃を緩めずに自分の服も脱ぎだした。
「子造りしようね、お兄ちゃん」
「こ? いやいやまだ早い、早いよ雪実さん! まだ心の準備とか色々と……」
俺に拒否する理由が見つからなかった。あんなに拒絶していたあやかしなのに、あんなに好きだった詩織さんに振られたばかりなのに、雪実と肌を触れあう事に拒否するなんてできそうにもなかった。唯一引っ掛かるのは、酒の匂いで酔った勢いの雪実の本音はどうなのだろうかということだったが、それさえもどうでもいいってくらい雪実の誘いに委ねてしまいたかった。
雪実は上下の服を脱いで下着姿になって俺の上に覆いかぶさっている時、部屋の扉が開いた。
「明ー」
「げっ! じいちゃん!」
「おいおい若い者は見境ないのう、どれワシも混ぜてくれ」
そのまま部屋に入って来ようとしたじいちゃんの襟足を掴んでストップをかけたのは女将だった。
当の雪実はスヤスヤとまた良い所で眠ってしまった。タイミングが良いのか悪いのか……。布団を掛けてそのまま眠らせ、俺はじいちゃんが泊まっている部屋に呼ばれた。
※
雪実は仕事の件に関しては納得せざるを得ないのだろうが、それに紐付けされる詩織さんとの事情を知ってるのは雪実だけなので聞くに聞けない状況なのだろうが、カオル君立ち合いで職場の昇格をしていく約束をしたのだからおおよその予想はしているだろう。
「まぁ、お前の想像通り仕事も詩織さんとも終わったんだよ」
びっくりした顔を見せるが、じいちゃん達に気付かれまいと気を使ってくれているのかそれ以上の事は聞いてこなかった。
この説明、本当は雪実が俺の部屋を出ていく前にちゃんと言えば良かったのだが、あの時は自分も気持ちの整理が出来てなかったのもある。
だけど人間という生き物は、どんなに辛い事があっても時間という薬が悲しみを和らげてくれる。
その時間は生まれたての赤ちゃんでも大金持ちでも大企業の社長でも皆平等に与えられる。使い方はその人自身に委ねられるのだが。
卑怯な気持ちを言うならば、雪実と今生の別れを自らの手で行うという最悪の事態を経験したが、ギリギリの所で助かり今目の前で美味しそうに朝ご飯を食べている。
この何度も見た当たり前の光景を今は本当に幸せに感じている。
だから詩織さんとの関係がどうでも良いというのではないのだが、この世で生きている限り、じいちゃんの言葉を借りるならば「なんとかなるだろう」に尽きるのだ。
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朝食を終え一先ず自分の部屋に雪実と二人で戻って来た。どうやら無料招待券で雪実は一足早くこの旅館に来ていたのだ。呑気に散歩をしている途中に運悪く九尾達あやかしに捕えられてしまったようで。
後から入った雪実が部屋の扉を閉めた途端、俺の背中に飛び掛かってきた。ったく、子供っぽくじゃれ合う程離れてなかったというのに……。
やれやれといった様子でおんぶする格好になった雪実を降ろそうとしたが、それより早く俺は雪実に連れられ宙を舞いながら布団の上に運ばれた。
「え? え?」
「……お兄ちゃん……雪実、もう……我慢……できない……」
少々荒く布団の上に落とされた瞬間耳元で囁いたかと思うと、今度は荒々しく耳を口にふくまれてしまった。
「はうっ……」
「お兄ちゃん、もうダメ……ずっと我慢してたから……いつも以上に……」
耳から口が離れた時にチラッと雪実の顔を見ると、真っ赤になっているのがわかった。しかもエロそうな顔をしている気がする……。
「お前、もしかして酒呑童子の持ってた酒の匂いで酔ってるんじゃ……」
「酔ってない! けどいいじゃん、お兄ちゃん詩織さんとは付き合えないんだし、それに……お兄ちゃんわらわのこと愛してるって言ってくれたし……」
「えぇ? いや、言ってないような……言ってない言ってない!」
「じゃあ今から言ってよ!」
無理やり俺の服をまくり上げて体中に口づけてきた。朝食を食べている間、性的欲望を理性が抑え込んだ反動でエロだが増し増しになっているのだろうか? ただ雪実の言い分があながち間違いではないというのも断固拒否出来ない部分でもあったのだが。
雪実は俺に口撃を緩めずに自分の服も脱ぎだした。
「子造りしようね、お兄ちゃん」
「こ? いやいやまだ早い、早いよ雪実さん! まだ心の準備とか色々と……」
俺に拒否する理由が見つからなかった。あんなに拒絶していたあやかしなのに、あんなに好きだった詩織さんに振られたばかりなのに、雪実と肌を触れあう事に拒否するなんてできそうにもなかった。唯一引っ掛かるのは、酒の匂いで酔った勢いの雪実の本音はどうなのだろうかということだったが、それさえもどうでもいいってくらい雪実の誘いに委ねてしまいたかった。
雪実は上下の服を脱いで下着姿になって俺の上に覆いかぶさっている時、部屋の扉が開いた。
「明ー」
「げっ! じいちゃん!」
「おいおい若い者は見境ないのう、どれワシも混ぜてくれ」
そのまま部屋に入って来ようとしたじいちゃんの襟足を掴んでストップをかけたのは女将だった。
当の雪実はスヤスヤとまた良い所で眠ってしまった。タイミングが良いのか悪いのか……。布団を掛けてそのまま眠らせ、俺はじいちゃんが泊まっている部屋に呼ばれた。
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