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第十章 二人だけのイブの始まりに

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「あたしもバカよねぇ、カオル君が席外してる隙に連絡先渡されてさぁ寂しいからってあんなバカ男にお金かしてぇぇぇ、うえぇぇぇん」

 また泣き出したが、その件は解決したじゃないかと言いたい。何故なら今目の前にいる俺が解決したんだから。ね? そうでしょ?

「カオル君、そういうの厳しい子だからあの時相談もできなくって、ズルズルお金貸しちゃって。あたし一人じゃどうにもできなくってぇぇぇ」

 そりゃカオル君とやらも怒るだろうな、自分が慰めに連れ出してるのにその隙にナンパされた挙句その男に金をむしり取られてたなら。

 詩織さんは男運が無いのかそれともお酒で失敗しちゃうタイプなのかもしれない。

「いっぱい泣いたら喉が乾いちゃった。あたしぃ雪国。明君も一緒に飲もぉ!」

 まだ飲むの? と驚くもとことこん付き合うことに決めた。カオル君とやらに負けていられないんだという思いがあったからだ。

 その前の元彼が何のヲタクだったかを聞き出したいのだが、この様子ではそれは無理っぽい。

 それでも聞いててこっちが自暴自棄にならずに済んだのは、詩織さんの言ってることが全て本当だったならまだ救われると思ったからだ。

 酔ってるから本音なんだろうと決めつけているのは俺が女性の本性をまだ知らないからだろう。けどそれは相手によると思うが詩織さんの事を疑い出したらそれは愛じゃなくなってしまうんじゃないだろうか。

 恋は盲目とよく言われるが真剣に恋をしている時に相手を疑ってしまっては恋にならない。

 疑ってるけどキミと付き合いたいって言っても誠実さが伝わらない。

 だけど、疑わないからあやかしに騙されそうになった詩織さんの実例があるんだけど。

「お待たせしました、雪国です」

「綺麗でしょ? 銀色に輝く雪国を連想させてくれるから好きなの。えへへ、あたしの心が純白の間はこの雪国を飲んでもいいことにしようってカオル君と約束してるの。へへへ、バカみたいでしょ?」

 男というか女性の経験がない童貞だからなのか、女性には潔白を求めてしまう自分がいる。

 その時真剣だったら男女が愛し合うのは自然の流れ。けど、若さゆえに別れもある。いちいち過去のことに縛られていたら前には進まないのに、過去の成り行きを気にしてしまう。

 それは俺が子供だからなのか、世の男性はそんなこと気にしないのか。

 詩織さんが過去の彼氏と関係をもっていても、俺の好きなのに変わりはないのに、より純粋で完璧を求めてしまうというのか。

 逆に純粋な童貞って気持ち悪く思われたりしそうなのに、どうして男女でこうも真逆なのだろうか。

 俺が大人だったら過去の出来事なんてなにも気にしないのに。

 過去の詩織さんも今の詩織さんも全て包み込んであげれるくらい、大人になりたい。

 こんなに、こんなに愛する気持ちが溢れてくるのに……カクテルを見て俺は、雪実のことを思い出してしまった。

 クリスマスイブの夜に、ずっと好きだった人と二人っきりで飲んでるのに思い出すなんて……。

 今日の雪実は、ヨッシーと二人で食事に出かけてるというのに、なんだか胸の奥がざわついてくる。

 俺は……どうかしてしまったのだろうか……。
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