52 / 99
第八章 天使のアルコール、悪魔の囁き
05
しおりを挟む
「あっ」
急いでティッシュの箱に手を伸ばした。
俺の意識と関係なく体内から出てくる液体をティッシュで拭き取る。
まだ絞り足らないのか、再度ティッシュに手を伸ばし二、三枚素早く取って押し当てる。
「フンッ」
勢いよく出して今取れる分だけでも拭き取った。また時間が経ったら出てくるのだろうか心配になる。
「……やっちまった……」
上体を起こしたまま、ため息交じりで呟いた。自然と出た言葉だったのだろうか。
隣で寝ている雪実の乱れた髪が時の経過を知らせてくれる。
時が未来にしか進まないように、行為に至ることは結果でしかない。
後はその結果に対してどう対処していくかだ。
覆水盆に返らずではないが、やってしまった事は元には戻らない。ただそれが取返しがつく事なのか取返しのつかない事なのかが問題なのだろう。
例えば、ふたごのくまたんオムライスが出来上がり、持ってくる最中にメイドさんが落としてしまったら。
当然作り直しかキャンセルになるが、時間さえ待てば同じ物が用意される。
だが、ふたごのくまたんオムライスの器が国宝級のくまたん柄で、製作者はもうこの世にいない最後の一品だったとしたら取返しがつかない。
時間と金を掛けて取り戻せるものとそうでないもの。
俺の行為はどっちなんだろうか。フッ、またバカなことを考えてしまって、これはアルコールのせいなのだろうか、それとも……。
俺は喉の渇きを潤す為に冷蔵庫を開け、コップに水を汲んで一気に飲み干す。
だがまだ物足らず、二杯目を汲んだ。
「フー……」
大きく息を吐く。これからのことが頭を過ったため、滅入りそうになるのを打ち消すかのように吐く。
「……参ったな」
空になったコップを流しに置いて振り向いたときにまた急いでティッシュに手が伸びる。
「フンッ! こんなに出るなんて、本物だなこりゃ」
勢いよく出してもまた出るのではないかと不安になりながらも、今ある物を全部とにかく絞り出す。
ティッシュで拭きすぎて先端が赤くなっているのではないかと不安も増える。トナカイじゃあるまいし。
手鏡を持って見るとやはり穴の周りが赤くなっているようだが、部屋の中が暗くてわかりにくい。電気を点けてもいいが、気持ちよく眠っている雪実が起きてしまうかもしれないと思いそのままにする。
本当に気持ち良いのかどうかは、雪実本人に聞かないとわからないけど、それを聞くために起こすなんて本末転倒。
それに今は雪実には優しくしておきたい気持ちが勝っている。ひょっとしたら俺は寝てるだけで雪実に色々としてもらいたい、頼みたいことが出るかもしれなかったからだ。
しかし柔らかい高級ティッシュだとこんなに赤くならないのだろうかと思うも、ティッシュに贅沢をする程家計に余裕はない。
そもそも赤いというよりピンクという表現の方が適していると思うのだが、世の中は信号が青と言ってるようなものか。
トナカイで思い出したけど、今週末はクリスマスなのにこんな様子で大丈夫なのだろうかと一抹の不安が過る。
折角の天野さんと二人っきりになれるというのに、ティッシュ箱片手に登場したのでは今後の関係に支障が出るだろうに。
しかし垂れ流しではこれまた不衛生で不快感を与えること山の如し。
週末までに落ち着いてくれれば良いのだが、最悪の場合やはり雪実の協力が必要になってくる。
それより雪実自体は大丈夫なのか見て確認をするも、薄暗くてよくわからない。起こさないようにそっと触れてみるが乾いているので大丈夫か。
女の子の肌はこんなにも柔らかいものだと、昨日の自分に教えてやりたいものだ。
肌が火照っているように感じたがコタツの熱が影響してるのか、それとも……。
「う、うぅん……」
目が覚めたのかとドキッとしたが、寝返りをしただけの雪実を見て強い後悔の念を抱き、俺達は二度としてはならないと心に強く誓った……。
急いでティッシュの箱に手を伸ばした。
俺の意識と関係なく体内から出てくる液体をティッシュで拭き取る。
まだ絞り足らないのか、再度ティッシュに手を伸ばし二、三枚素早く取って押し当てる。
「フンッ」
勢いよく出して今取れる分だけでも拭き取った。また時間が経ったら出てくるのだろうか心配になる。
「……やっちまった……」
上体を起こしたまま、ため息交じりで呟いた。自然と出た言葉だったのだろうか。
隣で寝ている雪実の乱れた髪が時の経過を知らせてくれる。
時が未来にしか進まないように、行為に至ることは結果でしかない。
後はその結果に対してどう対処していくかだ。
覆水盆に返らずではないが、やってしまった事は元には戻らない。ただそれが取返しがつく事なのか取返しのつかない事なのかが問題なのだろう。
例えば、ふたごのくまたんオムライスが出来上がり、持ってくる最中にメイドさんが落としてしまったら。
当然作り直しかキャンセルになるが、時間さえ待てば同じ物が用意される。
だが、ふたごのくまたんオムライスの器が国宝級のくまたん柄で、製作者はもうこの世にいない最後の一品だったとしたら取返しがつかない。
時間と金を掛けて取り戻せるものとそうでないもの。
俺の行為はどっちなんだろうか。フッ、またバカなことを考えてしまって、これはアルコールのせいなのだろうか、それとも……。
俺は喉の渇きを潤す為に冷蔵庫を開け、コップに水を汲んで一気に飲み干す。
だがまだ物足らず、二杯目を汲んだ。
「フー……」
大きく息を吐く。これからのことが頭を過ったため、滅入りそうになるのを打ち消すかのように吐く。
「……参ったな」
空になったコップを流しに置いて振り向いたときにまた急いでティッシュに手が伸びる。
「フンッ! こんなに出るなんて、本物だなこりゃ」
勢いよく出してもまた出るのではないかと不安になりながらも、今ある物を全部とにかく絞り出す。
ティッシュで拭きすぎて先端が赤くなっているのではないかと不安も増える。トナカイじゃあるまいし。
手鏡を持って見るとやはり穴の周りが赤くなっているようだが、部屋の中が暗くてわかりにくい。電気を点けてもいいが、気持ちよく眠っている雪実が起きてしまうかもしれないと思いそのままにする。
本当に気持ち良いのかどうかは、雪実本人に聞かないとわからないけど、それを聞くために起こすなんて本末転倒。
それに今は雪実には優しくしておきたい気持ちが勝っている。ひょっとしたら俺は寝てるだけで雪実に色々としてもらいたい、頼みたいことが出るかもしれなかったからだ。
しかし柔らかい高級ティッシュだとこんなに赤くならないのだろうかと思うも、ティッシュに贅沢をする程家計に余裕はない。
そもそも赤いというよりピンクという表現の方が適していると思うのだが、世の中は信号が青と言ってるようなものか。
トナカイで思い出したけど、今週末はクリスマスなのにこんな様子で大丈夫なのだろうかと一抹の不安が過る。
折角の天野さんと二人っきりになれるというのに、ティッシュ箱片手に登場したのでは今後の関係に支障が出るだろうに。
しかし垂れ流しではこれまた不衛生で不快感を与えること山の如し。
週末までに落ち着いてくれれば良いのだが、最悪の場合やはり雪実の協力が必要になってくる。
それより雪実自体は大丈夫なのか見て確認をするも、薄暗くてよくわからない。起こさないようにそっと触れてみるが乾いているので大丈夫か。
女の子の肌はこんなにも柔らかいものだと、昨日の自分に教えてやりたいものだ。
肌が火照っているように感じたがコタツの熱が影響してるのか、それとも……。
「う、うぅん……」
目が覚めたのかとドキッとしたが、寝返りをしただけの雪実を見て強い後悔の念を抱き、俺達は二度としてはならないと心に強く誓った……。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
サウナマナー無双・童貞田中の無言サウナ
鷺谷政明
キャラ文芸
サウナマナー日本1位を自負する童貞・田中の唯一の楽しみは、週に一度の銭湯通い。誰とも関わりを持たずにサウナの世界に没頭したい田中が、大衆浴場コミュニティに巻き込まれていく一話完結型ドラマ。全10話。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
元禿の下級妃、花の園と言われる後宮で花の手入れを行います
猫石
キャラ文芸
イレイシェン国の後宮『四節の苑』に、一人の下級妃が入内した。
名はメイ コウシュン。
現在『主上様』が持てる妃の席は満席にもかかわらず、彼女の入内がかなったのは、彼女の噂を聞きつけた主上様が彼女に興味を持ち、初めて自分から後宮入りを願ったというのがその理由だった。
色とりどり、形も様々な大輪の花たちが、その美を競う女の園に現われた下級妃は、後宮にある大きな池の浮島の、金鳳花の花に囲まれた小さな小さな四阿のような庵を与えられ、四季の女たちはそれを厳しく見張ると言う日が始まった。
そんな中、庵の中の少女は鍵のかかった箪笥を撫でてながら遠い目をして呟いた。
「あ~ぁ、とんだ貧乏くじ、ひいちゃったなぁ……」
⚠️注意書き⚠️
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。あらすじは滅茶苦茶冒頭部分だけです。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆中華風の後宮の様相を呈していますが、様々な世界・様式の後宮&花街(遊郭)設定もりもりです。史実、資料と違う! など突込みは不要です。
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
☆ゆるっふわっ設定です。
☆小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる