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序章

10.鑑定2

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 ステータスを確認し終えて前を向くと、ミハイルは柔らかい笑顔を浮かべたままフブキを私に突き出してきた。


おい、何をするんだグルルルルッ!』
「はいはい、威嚇しないの」


 ぞんざいな扱いにフブキが抗議の声を上げるも、ミハイルはそれを気に留めることなくぐいぐいと私に押し付けてくる。


「次はフブキを鑑定してみようか。レベル差はあるけど、使い魔なら大丈夫でしょ」
「わかりました。〈鑑定〉」


 フブキを見つめて、さっきと同じように鑑定を発動させる。今度も無事成功したようで、再びウィンドウが現れた。

【フブキ
♂/Lv.155
種族:フェンリル
HP:4500/4500
MP:500/500
スキル:〈全属性適性Lv.6〉〈獣の王Lv.7〉〈心眼Lv.6〉
契約者:聖川心白】


「レベル155!?」


 体力もとんでもない数値をたたき出している。
 さっき私が思考のかなたに追いやった近衛騎士長すら超えている。今のところ二人が圧倒的の高みに居て、絶対に超えられない壁を何個も挟んだ先に私がいる。筋トレで追いつけるのかな……。

 ほとんど叫ぶようにそう言った私だが、ミハイルは予想していたようで小刻みに肩を揺らしていた。素直に笑えばいいのに。
ちょっとむかついた私は、フブキにがぶがぶ噛まれているミハイルのステータスを鑑定してやろうとじっと見つめた。


「〈鑑定〉……あれ?」


 確かに手ごたえをはあったのに、ウィンドウは現れなかった。


「あ、勝手に鑑定するなんて悪い子だね」
「失敗してしまいましたけどね」
「〈鑑定〉は対象とレベル差が高すぎると、弾かれて失敗しちゃうんだ。今みたいにね」
「さっき言っていたの、このことだったんですね」
「そうだよ。使い魔は契約者の一部として扱われるから簡単に鑑定できるけど、人間相手だとそうはいかないから」


 ミハイルが言っているレベルというのは、おそらく私自身のレベルのことだろう。
 でもレベルってどうやって上げるのか。ゲームみたいにモンスターとかを倒すのかな。


「経験値は生きているだけで勝手に溜まっていくよ。確かに強い敵と戦った方が効率よくレベルを上げられるけど、スキルや魔法を使ったり、物を作ったり、料理洗濯掃除でも経験値溜まるね」


 その言葉に胸を撫で下ろす。たとえモンスターでも、さすがにまだ現実で倒す覚悟はまだない。


「これからは目に入った物を片っ端から鑑定してみたら?ぼくもやってたけど、レベル上げと情報収集同時にできるからお得だよ」
「物にレベル差は関係無いんですか?」
「物にレベルの概念はないからねえ。魔物にはレベルがあるから難しいけど、普通の動物ならヌシとかじゃない限り問題ないと思うよ」


 すごい情報量だったけど、日本のサブカルチャーと似ている点が多いから何とか覚えられそうだ。
 私は濃すぎる二日間の出来事を思い返し、静かにため息を着いた。

 それにしてもさすがはフェンリル。ステータスが恐ろしく高かったなあ。改めてすごい存在に助けられたものだと思う。
 感謝の気持ちを込めて、近くにあったその頭を撫でた。


 フブキのスキルがほとんど意味分からないのは課題だが、これからずっと一緒にいるのならそのうち機会があるだろう。
 私の頭は既にキャパオーバーだ。
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