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序章
09.鑑定
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私の足にすり寄るフブキをじっと見てみる。
しっぽをちぎれんばかり振るその姿は犬そのもので、とてもあの巨大な狼と同じ生き物だとは思えない。ずっと動物を飼いたかった私からすると、フブキの存在は降って沸いた幸運だった。
真っ白でふわっふわな毛並みを堪能していると、ミハイルが何かを呟く声が聞こえた。
「うん、魔力の消費も特に問題なしっと。いやあ、治癒魔法ってとんでもないね!体力も完璧に回復しているのに、魔力がたったこれしか消費されてないなんて」
「あ、もしかして今鑑定スキルを使いました?」
「そうだよー。スキル効果は基本的に他人には影響しないから、コハクちゃんからは見えないだろうけど」
ミハイルの言う通り、私には虚空を見つめているようにしか見えなかった。
「鑑定スキルか……。あったら便利だろうな」
「コハクちゃんも鑑定スキルを持ってるよ」
「えっ!?」
「隠してたわけじゃないよ。治癒魔法がどれくらい魔力を消費するか分からなかったから、スキルのことは後回しにするつもりだったんだ。癒しの魔法と使い魔契約はコハクちゃんの身を守るためにも最優先事項だったからね」
どうやら鑑定のような所有者の意志で発動するスキルは、使うたびに魔力を消費するようだ。特に新しいものや複雑な物を鑑定するには魔力がたくさん必要で、ミハイルは私の魔力が無くなってしまう事を避けたかったらしい。
(まあ、怪我と比べたら明らかに優先順位落ちるよね。フブキと意思疎通できなくて困ることはあっても、鑑定できなくて困ることはないし)
でも今教えてくれたということは、私の魔力に余裕があるという事かな。
「魔力がなくなると何か良くないことがあるんですか?」
「魔力は体力と同じでね。枯渇すると倒れたり、最悪死んでしまうこともあるんだ」
「死っ!?」
「ははは、コハクちゃんの魔力量ならそう心配することは無いよ。スキルも魔法も熟練度が大事だから、余裕ができたらぼくとたくさん練習しようねー」
要するに無理のないレベ上げしろという事だろう。
コクコクと頭を何度も縦に振る私を見たミハイルは、呆れながらも鑑定の使い方を説明してくれた。
「鑑定するにはね、必ず対象を視界に入れないといけないんだ。スキルも詠唱は特に必要ないんだけど、慣れないうちはスキル名を唱えてみるといいよ」
さっそく使ってみる?という問いに、私はヘドバンかくやの首振りを披露した。
「最初は自分の鑑定をしてみようか。他人を視るのと違って簡単にできるし、コハクちゃんも自分のステータス気になるよね?目に魔力を込めるだけで視えるけど……最初は手でも見つめながらやってみて」
癒しの魔法を使ったときに何かが体内で廻っているのを感じたが、今は何も感じ取ることができない。大人しく右手を視ながらスキル名を唱える。
「〈鑑定〉」
すると、目の前にあの詐欺テロップと同じデザインのウィンドウが現れた。
【聖川心白
17歳/Lv.10
職業:聖女
HP:100/100
MP:1354/1500
スキル:〈全属性適性Lv.5〉〈鑑定Lv.5〉〈生産Lv.5〉
使い魔:フブキ(フェンリル)】
「職業のところに聖女ってある!?」
「だからずっとそう言ってるじゃないか!」
ウィンドウのデザインも相まって、本当にゲームのようだ。
ここに書いてあるのが私の能力、いわゆるステータスだと思う。職業聖女というのに少し違和感を感じるが、これは自分の役割や立場をそのまま表しているのだろう。
その下のHPが体力、MPが魔力を現しているはずだ。MPが少し減っているのは癒しの魔法と鑑定を使ったからかな。あとで検証しておこう。
「ミハイルさん、この世界で平均的なステータスってどれくらいですか?」
「宮廷魔導士でも魔力が500あれば安泰だね。一般人なら50もあればどの職でも重用されるんじゃない?」
「差が凄いですね。体力は?」
「体力は誰でも簡単に鍛えられるから、平均数値はかなり高いよ。十歳の子供でも100はあるよ。ヨークブランの近衛騎士長なんて魔力が50しかなかったのに、体力は3000もあったからね」
近衛騎士長は関係ないとして、つまり私の体力は十歳の子供程度ってこと……?
確かに聖女は後方支援職で魔力勝負みたいなイメージがあるけど。もしかしなくても私、貧弱すぎるのでは。今度筋トレしよ。
嫌な現実から目を背けて、私は次に進んだ。
スキルの欄には私が持っているスキルが並んでいて、すべてレベル5になっている。年齢の隣にあるのは今の私のレベルだと思うが、これもレベル10とあった。
こういうのって最初はレベル1からスタートじゃないのかな。
「レベルって、最初からこんなに高いものなんですか?」
「ああ、それは職業補正だね。特に聖女みたいな高位職だといろんな恩恵を受けるよ」
「へえ~」
ゲームでもあったな、そういうの。装備品やジョブとかでステータスの基礎数値が増えたりするんだよね。夢があるなあ。
それから使い魔は文字通りだよね。フブキの名前があるし。
(とりあえずこんなところかな)
まるでゲームのような内容に、気持ちがだいぶ前を向いてきた。うん、今は落ち込んでる場合じゃないよね!
しっぽをちぎれんばかり振るその姿は犬そのもので、とてもあの巨大な狼と同じ生き物だとは思えない。ずっと動物を飼いたかった私からすると、フブキの存在は降って沸いた幸運だった。
真っ白でふわっふわな毛並みを堪能していると、ミハイルが何かを呟く声が聞こえた。
「うん、魔力の消費も特に問題なしっと。いやあ、治癒魔法ってとんでもないね!体力も完璧に回復しているのに、魔力がたったこれしか消費されてないなんて」
「あ、もしかして今鑑定スキルを使いました?」
「そうだよー。スキル効果は基本的に他人には影響しないから、コハクちゃんからは見えないだろうけど」
ミハイルの言う通り、私には虚空を見つめているようにしか見えなかった。
「鑑定スキルか……。あったら便利だろうな」
「コハクちゃんも鑑定スキルを持ってるよ」
「えっ!?」
「隠してたわけじゃないよ。治癒魔法がどれくらい魔力を消費するか分からなかったから、スキルのことは後回しにするつもりだったんだ。癒しの魔法と使い魔契約はコハクちゃんの身を守るためにも最優先事項だったからね」
どうやら鑑定のような所有者の意志で発動するスキルは、使うたびに魔力を消費するようだ。特に新しいものや複雑な物を鑑定するには魔力がたくさん必要で、ミハイルは私の魔力が無くなってしまう事を避けたかったらしい。
(まあ、怪我と比べたら明らかに優先順位落ちるよね。フブキと意思疎通できなくて困ることはあっても、鑑定できなくて困ることはないし)
でも今教えてくれたということは、私の魔力に余裕があるという事かな。
「魔力がなくなると何か良くないことがあるんですか?」
「魔力は体力と同じでね。枯渇すると倒れたり、最悪死んでしまうこともあるんだ」
「死っ!?」
「ははは、コハクちゃんの魔力量ならそう心配することは無いよ。スキルも魔法も熟練度が大事だから、余裕ができたらぼくとたくさん練習しようねー」
要するに無理のないレベ上げしろという事だろう。
コクコクと頭を何度も縦に振る私を見たミハイルは、呆れながらも鑑定の使い方を説明してくれた。
「鑑定するにはね、必ず対象を視界に入れないといけないんだ。スキルも詠唱は特に必要ないんだけど、慣れないうちはスキル名を唱えてみるといいよ」
さっそく使ってみる?という問いに、私はヘドバンかくやの首振りを披露した。
「最初は自分の鑑定をしてみようか。他人を視るのと違って簡単にできるし、コハクちゃんも自分のステータス気になるよね?目に魔力を込めるだけで視えるけど……最初は手でも見つめながらやってみて」
癒しの魔法を使ったときに何かが体内で廻っているのを感じたが、今は何も感じ取ることができない。大人しく右手を視ながらスキル名を唱える。
「〈鑑定〉」
すると、目の前にあの詐欺テロップと同じデザインのウィンドウが現れた。
【聖川心白
17歳/Lv.10
職業:聖女
HP:100/100
MP:1354/1500
スキル:〈全属性適性Lv.5〉〈鑑定Lv.5〉〈生産Lv.5〉
使い魔:フブキ(フェンリル)】
「職業のところに聖女ってある!?」
「だからずっとそう言ってるじゃないか!」
ウィンドウのデザインも相まって、本当にゲームのようだ。
ここに書いてあるのが私の能力、いわゆるステータスだと思う。職業聖女というのに少し違和感を感じるが、これは自分の役割や立場をそのまま表しているのだろう。
その下のHPが体力、MPが魔力を現しているはずだ。MPが少し減っているのは癒しの魔法と鑑定を使ったからかな。あとで検証しておこう。
「ミハイルさん、この世界で平均的なステータスってどれくらいですか?」
「宮廷魔導士でも魔力が500あれば安泰だね。一般人なら50もあればどの職でも重用されるんじゃない?」
「差が凄いですね。体力は?」
「体力は誰でも簡単に鍛えられるから、平均数値はかなり高いよ。十歳の子供でも100はあるよ。ヨークブランの近衛騎士長なんて魔力が50しかなかったのに、体力は3000もあったからね」
近衛騎士長は関係ないとして、つまり私の体力は十歳の子供程度ってこと……?
確かに聖女は後方支援職で魔力勝負みたいなイメージがあるけど。もしかしなくても私、貧弱すぎるのでは。今度筋トレしよ。
嫌な現実から目を背けて、私は次に進んだ。
スキルの欄には私が持っているスキルが並んでいて、すべてレベル5になっている。年齢の隣にあるのは今の私のレベルだと思うが、これもレベル10とあった。
こういうのって最初はレベル1からスタートじゃないのかな。
「レベルって、最初からこんなに高いものなんですか?」
「ああ、それは職業補正だね。特に聖女みたいな高位職だといろんな恩恵を受けるよ」
「へえ~」
ゲームでもあったな、そういうの。装備品やジョブとかでステータスの基礎数値が増えたりするんだよね。夢があるなあ。
それから使い魔は文字通りだよね。フブキの名前があるし。
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まるでゲームのような内容に、気持ちがだいぶ前を向いてきた。うん、今は落ち込んでる場合じゃないよね!
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