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第四章 犯人を捕らえろ!

41.作戦

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 もう行っちゃってたらどうしようと不安にだったけど、幸いにも二人は私を待っててくれていた。

 そのまま三人で千代さんのコレクションが置いてあるという蔵まで行く。千代さんが趣味のためにわざわざ後から建てたから、蔵はかなり近くにあった。
 ただ近くに建てることを優先しすぎたせいか、蔵に行くためには一度靴を履き替える必要があるのが難点らしい。


「これがひいばあちゃんの蔵だ。半年も手入れされてないからちょっと埃っぽいかも」


 ここの鍵は颯馬くんが持っているみたいで、桜二くんに促されるまま蔵を開けた。
 颯馬くんが扉を押すと、重量感のある音を立ててゆっくりと開いていく。骨董品は基本日光に当てない方がいい。そのためか、昼間だというのに蔵は真っ暗だ。
 颯馬くんは慣れた様子で中に入り、電気をつけてくれた。
 少し迷って、私は眼鏡をかけて中に入ることにした。一気に付喪神を見すぎると、情報があふれかえって気分が悪くなってしまうのだ。


「うわあ、埃が舞ってる。マスクを用意してて正解だったね」


 私の家ほどある二階建ての蔵の中は、まるで工芸展の会場のようにきっちり整理されていた。まるで小さな美術館のようだ。
 ツボや掛け軸のような比較的によく見るものから、入手経路が気になる銅鐸まである。正直、こんな時じゃなければゆっくり数日かけて見て回りたい。


「それで桜二、一体何をするつもりだ?」


 颯馬くんの問いかけに、桜二くんはやる気にあふれる答えを返した。


「証拠がないなら、現行犯で捕まえるしかないよね?」


 その大人っぽい微笑みについ見とれてしまう。


「まず、アキが作った偽物をこの蔵に隠す。それで葵さんをここに呼び寄せて、寄木細工を盗む所を動画に取るんだ」
「証拠として弱くないか?別邸の鍵を開けているところをとった方が確実だと思うが」
「そんなことしてみろ。今ほとんどの人が別邸に注目しているからあっという間に大騒ぎだよ。暴力沙汰になったら困るのはソウでしょ」


 桜二くんはやれやれといったふうに肩をすくめた。
 私は堂々と噂話をしていた男の人たちを思い出す。あの人たちならやりかねない……お母さんもお金は人を変えるって言っていたし。


「それにオレは隠れて動画を撮って終わり、なんてつもりはさらさらないよ。言質を取って録音もしてやる」
「それこそ危ないだろ。葵さんはもう俺たちが知ってる人じゃなくなってるんだぞ」


 颯馬くんが腕を組んで言い返す。


「誰も一人で乗り込むって言ってないでしょ。ソウも一緒に決まってるだろ」
「えっ、私とアキくんは?」


 私たちがのけ者にされていることに気付いて、慌てて口を挟む。だけど桜二くんは、困ったように首を振るだけだった。


「四人も固まってたら相手に気付かれちゃうよ」


 その通りだった。
 この蔵はいかに骨董品を見やすく飾るかに特化していて、人が隠れられるところはそんなにない。私はそこまで運動が得意じゃないし、足を引っ張る可能性の方が高いのは分かっている。
 でもここまで一緒に頑張ってきたのに、仲間外れにされたくなかった。

 気が進まない様子の私に、颯馬くんが優しく笑った。
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