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第四章 犯人を捕らえろ!
34.新問題
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結局着物の付喪神はそれ以上何も言わず、意味深な笑顔だけ残して姿を消した。
「鍵って、まさか今一条家を騒がせている別邸の鍵じゃないよな」
重い沈黙を破ったのは白鳥くんだった。
「……別邸の鍵を管理していたのはひいばあちゃんで、そもそも寄木細工は物入れなんだ。もっと早く気付くべきだった」
颯馬くんがそう告げると大きくため息をついた。アキくんも難しい顔をしている。
「つまり、別邸を空けてほしくないってこと?どういうつもりで”隠して”って言ったんだろう」
「他のヒントって言えば……青いって言葉だっけ?でも青い部屋なんてなかったよな?」
「それより、誰かがこっそり鍵を使って別邸に入ろうとしていることだ」
その言葉で、私たちの間に再び重い沈黙が流れた。
颯馬くんですら、中に何が入っていたのか知らなかったらしい。颯馬くんの両親が寄木細工にこだわっていなかったところを見るに、彼らも知らなかったのだろう。
寄木細工は千代さんがなくなった頃と同じ時期に消えている。つまり、その誰かは前から鍵の在り処を知っているということだ。
「くそ、そうとも知らずに俺はのんびり蔵を漁ってたのか」
「まあまあ。ソウがずっと寄木細工を探してたから、犯人も大っぴらに動けなかったんじゃない?」
「もう犯人扱いしてるし」
ひとまずお昼の時間も近いので、私たちはいったん千代さんの部屋に戻ることになった。
「せめての救いは寄木細工を俺たちのもとおいて置けるくらいか……」
着物の付喪神は寄木細工を別邸に隠していたらしい。道理で鍵も寄木細工も見つからないわけだ。
(私たちのところに届けてくれるって言ってくれたけど)
そこで別の問題が発生した。寄木細工を手に入れたところで私たちは警戒することしか出来ないのだ。
当初の寄木細工を見つけるという目的は果たせそうだが、誰かが別邸に侵入しようとしている事実を放置することはできない。
しかも捕まえられるだけの証拠どころか、目的も分からないのだ。
「向こうがボロを出してくれるのが一番だけど、これだけ潜んでるヤツが簡単に出てくるわけないか」
スマホを触りながら、桜二くんはイライラしたように言った。その隣には、険しい顔をした颯馬くんがいる。
「……たぶん、のんびり証拠を探している時間は無いぞ」
視線が颯馬くんに集まる。颯馬くんは回り見回して、声量を落として口を開いた。
「別邸の鍵を変えようって話が出てるんだ。なにしろ半年も鍵が見つからなかったからな」
「は!?その話出たのいつ!?」
「――先週だ」
思ったよりも最近の事だ。別邸の鍵は特別な物って言ってたけど、早く開けたいんなら気にしてられないよね。
「もしかして、おじさんたちが出かけてるのってその件?朝言ってたよね」
アキくんは目線を鋭くして、颯馬くんに問いかける。確かにそう言っていた。
みんな何も言わなかったから颯馬くんの家ではよくあるものだと思っていたけど、お客さんがいるのに家主がいないのはおかしいよね。使用人がいるからって、不用心すぎる。
「いや、用事は聞いてない。ただ、百貨店に行くとは言っていたような……」
「この辺の百貨店って言ったら、オレたちが制服採寸したところだよね?残念だけど、あそこには鍵屋があるよ」
桜二くんはそう言いながら、スマホの画面を見せてくれた。
そこにはあの百貨店のホームページが開かれていて、フロア情報のところに鍵屋らしき店がある。
「ただ買い物に行っている可能性もあるけど、最悪の事態を想定して動いた方がいいね」
「最悪の事態?」
「今日にでも鍵が取り替えられるかもってこと」
「鍵って、まさか今一条家を騒がせている別邸の鍵じゃないよな」
重い沈黙を破ったのは白鳥くんだった。
「……別邸の鍵を管理していたのはひいばあちゃんで、そもそも寄木細工は物入れなんだ。もっと早く気付くべきだった」
颯馬くんがそう告げると大きくため息をついた。アキくんも難しい顔をしている。
「つまり、別邸を空けてほしくないってこと?どういうつもりで”隠して”って言ったんだろう」
「他のヒントって言えば……青いって言葉だっけ?でも青い部屋なんてなかったよな?」
「それより、誰かがこっそり鍵を使って別邸に入ろうとしていることだ」
その言葉で、私たちの間に再び重い沈黙が流れた。
颯馬くんですら、中に何が入っていたのか知らなかったらしい。颯馬くんの両親が寄木細工にこだわっていなかったところを見るに、彼らも知らなかったのだろう。
寄木細工は千代さんがなくなった頃と同じ時期に消えている。つまり、その誰かは前から鍵の在り処を知っているということだ。
「くそ、そうとも知らずに俺はのんびり蔵を漁ってたのか」
「まあまあ。ソウがずっと寄木細工を探してたから、犯人も大っぴらに動けなかったんじゃない?」
「もう犯人扱いしてるし」
ひとまずお昼の時間も近いので、私たちはいったん千代さんの部屋に戻ることになった。
「せめての救いは寄木細工を俺たちのもとおいて置けるくらいか……」
着物の付喪神は寄木細工を別邸に隠していたらしい。道理で鍵も寄木細工も見つからないわけだ。
(私たちのところに届けてくれるって言ってくれたけど)
そこで別の問題が発生した。寄木細工を手に入れたところで私たちは警戒することしか出来ないのだ。
当初の寄木細工を見つけるという目的は果たせそうだが、誰かが別邸に侵入しようとしている事実を放置することはできない。
しかも捕まえられるだけの証拠どころか、目的も分からないのだ。
「向こうがボロを出してくれるのが一番だけど、これだけ潜んでるヤツが簡単に出てくるわけないか」
スマホを触りながら、桜二くんはイライラしたように言った。その隣には、険しい顔をした颯馬くんがいる。
「……たぶん、のんびり証拠を探している時間は無いぞ」
視線が颯馬くんに集まる。颯馬くんは回り見回して、声量を落として口を開いた。
「別邸の鍵を変えようって話が出てるんだ。なにしろ半年も鍵が見つからなかったからな」
「は!?その話出たのいつ!?」
「――先週だ」
思ったよりも最近の事だ。別邸の鍵は特別な物って言ってたけど、早く開けたいんなら気にしてられないよね。
「もしかして、おじさんたちが出かけてるのってその件?朝言ってたよね」
アキくんは目線を鋭くして、颯馬くんに問いかける。確かにそう言っていた。
みんな何も言わなかったから颯馬くんの家ではよくあるものだと思っていたけど、お客さんがいるのに家主がいないのはおかしいよね。使用人がいるからって、不用心すぎる。
「いや、用事は聞いてない。ただ、百貨店に行くとは言っていたような……」
「この辺の百貨店って言ったら、オレたちが制服採寸したところだよね?残念だけど、あそこには鍵屋があるよ」
桜二くんはそう言いながら、スマホの画面を見せてくれた。
そこにはあの百貨店のホームページが開かれていて、フロア情報のところに鍵屋らしき店がある。
「ただ買い物に行っている可能性もあるけど、最悪の事態を想定して動いた方がいいね」
「最悪の事態?」
「今日にでも鍵が取り替えられるかもってこと」
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