22 / 52
第二章 いざ捜査へ
22.問題ばかり
しおりを挟む
「付喪神が宿る条件って、百年間大事にされることだろ?たいてい、そういうのは価値がある物でもあるんだ。一つ二つならともかく、そう何個も学校に持ってこれないぞ」
一つ二つなら持ち出せるんだという言葉を心の底にしまった。颯馬くんの言う通りだったからだ。
「そういうことだ。俺は友人に変なルールを押し付けるつもりないから、そんなに心配するな」
「はは、ソウの家はそんな気を遣うような場所じゃないから怖くないよ」
そういう問題じゃなかったんだけど、また別方面で気になる言葉が聞こえてしまった。変なルールってなに……?
密かに震える私を他所に、話はどんどん進んでいく。
「当日の捜索メンバーはここにいる四人。俺、桜二、それから七瀬と秋兎だな」
「ぼくも行くけど、あんまり戦力にならないよ」
「何を言ってるんだ、俺は秋兎の芸術センスを頼りにしてるんだぞ」
「……本音は?」
「人手が足りない」
切実な問題だった。
颯馬くんのお家、話を聞いてるだけでも大きいって分かるもんね。
「ぼく、ユキちゃんのお手伝いだけするつもりだったんだけど」
「それ、オレたちの手伝いと同じじゃない?」
それは私も思う。
「違うよ。だいたい、一条の家でユキちゃんを一人にできるわけないでしょ」
「へえ、アキは以外と過保護なんだ?」
「そういうところなんだけど……って、何その呼び方」
にやにやと笑う白鳥くんに、アキくんは地面に落ちたセミを見るような目をした。
「何って、仲間になった記念?休日に遊ぶ仲になったし、一人だけあだ名じゃないのさみしいかなって」
「ぼくたちは探し物をしに行くのであって、遊びじゃなくて仕事。一ミリもさみしくないから今すぐ適切な距離をとって」
一息で言い切ったアキくんに、白鳥くんはすんっと真顔になった。
「ふぅん、友達じゃないやつの言うことなんて聞く必要ないよね。これからよろしくね、アキ?」
「今決めた。ぼくは一生お前の友達にならない」
「桜二、そうやってすぐに人をからかうのやめろ」
悔しそうなアキくんに、からっと表情を変えた白鳥くんは声をあげて笑う。
空気が悪くなる前に一条くんが間に入る。
「でも、呼び方を変えるのはいい考えだと思うぞ。俺も今更よそよそしいって思ってたんだ」
とても爽やかな笑顔で、一条くんは私を見た。なんだか話の雲行きが怪しくなってきたような……。
「雪乃、俺のことは颯馬って呼んでくれ」
心臓が飛び出るかと思った。
若干鼻にかかった甘い声に名前を呼ばれた瞬間、私は息をすることも忘れて固まった。
でもすぐに我に返って、誤魔化すように勢いよく頭を左右に振る。
「む、無理だよ!」
というかできれば七瀬って呼んでほしい。
校舎で颯馬くんが私のことを名前で呼んだ日には、破滅まっしぐらだ。
「無理ってことはないだろ。確かに内部生には外部生に名前を呼ばれたくないってひねくれた奴いるが、俺は嬉しいぞ」
颯馬くんは喜ぶかもしれませんが、ほとんどの女子は怒るんです。
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、助けを求めようとアキくんを見た。アキくんはまだ白鳥くんと何か言い合っているようで、私の視線に気づいていない。
逆に向かい側に座っていた白鳥くんが私の視線に気づいてしまい、にこりと笑顔を浮かべた。もしかして助けてくれるのかも、という期待は一瞬で砕かれた。
「あ、オレは桜二って呼んでよ。あんまり苗字で呼ばれるの好きじゃないから」
「えっ、いや、」
断りにくい理由をつけないでほしい。
なんとかこの場から逃げる方法を考えていると、十分前を知らせる予鈴がなった。ら、ラッキー……!
「あれ、もうこんな時間か。俺たちは戸締りとかあるから、先に言っていいぞ」
「ありがとう!アキくん!行こう!」
ここぞとばかりにアキくんの手をつかむ。昨日とは真逆だ。
「それじゃ、また土曜日だな。午前十時、この部屋集合するぞ」
「ここ一応学校だから、制服で来てね。手ぶらでいいよ」
ひらりと白鳥くんが手を振ってくれた。それにうなずいて、私は周りの目につかないように教室に向かう。
……颯馬くんたち、次に会う時には全部忘れてないかな。また学校が始まったばかりなのに、問題が多すぎるよ!
一つ二つなら持ち出せるんだという言葉を心の底にしまった。颯馬くんの言う通りだったからだ。
「そういうことだ。俺は友人に変なルールを押し付けるつもりないから、そんなに心配するな」
「はは、ソウの家はそんな気を遣うような場所じゃないから怖くないよ」
そういう問題じゃなかったんだけど、また別方面で気になる言葉が聞こえてしまった。変なルールってなに……?
密かに震える私を他所に、話はどんどん進んでいく。
「当日の捜索メンバーはここにいる四人。俺、桜二、それから七瀬と秋兎だな」
「ぼくも行くけど、あんまり戦力にならないよ」
「何を言ってるんだ、俺は秋兎の芸術センスを頼りにしてるんだぞ」
「……本音は?」
「人手が足りない」
切実な問題だった。
颯馬くんのお家、話を聞いてるだけでも大きいって分かるもんね。
「ぼく、ユキちゃんのお手伝いだけするつもりだったんだけど」
「それ、オレたちの手伝いと同じじゃない?」
それは私も思う。
「違うよ。だいたい、一条の家でユキちゃんを一人にできるわけないでしょ」
「へえ、アキは以外と過保護なんだ?」
「そういうところなんだけど……って、何その呼び方」
にやにやと笑う白鳥くんに、アキくんは地面に落ちたセミを見るような目をした。
「何って、仲間になった記念?休日に遊ぶ仲になったし、一人だけあだ名じゃないのさみしいかなって」
「ぼくたちは探し物をしに行くのであって、遊びじゃなくて仕事。一ミリもさみしくないから今すぐ適切な距離をとって」
一息で言い切ったアキくんに、白鳥くんはすんっと真顔になった。
「ふぅん、友達じゃないやつの言うことなんて聞く必要ないよね。これからよろしくね、アキ?」
「今決めた。ぼくは一生お前の友達にならない」
「桜二、そうやってすぐに人をからかうのやめろ」
悔しそうなアキくんに、からっと表情を変えた白鳥くんは声をあげて笑う。
空気が悪くなる前に一条くんが間に入る。
「でも、呼び方を変えるのはいい考えだと思うぞ。俺も今更よそよそしいって思ってたんだ」
とても爽やかな笑顔で、一条くんは私を見た。なんだか話の雲行きが怪しくなってきたような……。
「雪乃、俺のことは颯馬って呼んでくれ」
心臓が飛び出るかと思った。
若干鼻にかかった甘い声に名前を呼ばれた瞬間、私は息をすることも忘れて固まった。
でもすぐに我に返って、誤魔化すように勢いよく頭を左右に振る。
「む、無理だよ!」
というかできれば七瀬って呼んでほしい。
校舎で颯馬くんが私のことを名前で呼んだ日には、破滅まっしぐらだ。
「無理ってことはないだろ。確かに内部生には外部生に名前を呼ばれたくないってひねくれた奴いるが、俺は嬉しいぞ」
颯馬くんは喜ぶかもしれませんが、ほとんどの女子は怒るんです。
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、助けを求めようとアキくんを見た。アキくんはまだ白鳥くんと何か言い合っているようで、私の視線に気づいていない。
逆に向かい側に座っていた白鳥くんが私の視線に気づいてしまい、にこりと笑顔を浮かべた。もしかして助けてくれるのかも、という期待は一瞬で砕かれた。
「あ、オレは桜二って呼んでよ。あんまり苗字で呼ばれるの好きじゃないから」
「えっ、いや、」
断りにくい理由をつけないでほしい。
なんとかこの場から逃げる方法を考えていると、十分前を知らせる予鈴がなった。ら、ラッキー……!
「あれ、もうこんな時間か。俺たちは戸締りとかあるから、先に言っていいぞ」
「ありがとう!アキくん!行こう!」
ここぞとばかりにアキくんの手をつかむ。昨日とは真逆だ。
「それじゃ、また土曜日だな。午前十時、この部屋集合するぞ」
「ここ一応学校だから、制服で来てね。手ぶらでいいよ」
ひらりと白鳥くんが手を振ってくれた。それにうなずいて、私は周りの目につかないように教室に向かう。
……颯馬くんたち、次に会う時には全部忘れてないかな。また学校が始まったばかりなのに、問題が多すぎるよ!
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
へいこう日誌
神山小夜
児童書・童話
超ド田舎にある姫乃森中学校。
たった三人の同級生、夏希と千秋、冬美は、中学三年生の春を迎えた。
始業式の日、担任から告げられたのは、まさかの閉校!?
ドタバタ三人組の、最後の一年間が始まる。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
怪談掃除のハナコさん
灰色サレナ
児童書・童話
小学校最後の夏休み……皆が遊びに勉強に全力を注ぐ中。
警察官の両親を持つしっかり者の男の子、小学6年生のユウキはいつでも一緒の幼馴染であるカコを巻き込んで二人は夏休みの自由研究のため、学校の不思議を調べ始める。
学校でも有名なコンビである二人はいつもと変わらずはしゃぎながら自由研究を楽しむ……しかし、すすり泣くプール、踊る人体模型、赤い警備員……長い学校の歴史の裏で形を変える不思議は……何にも関係ないはずの座敷童の家鳴夜音、二次動画配信者として名を馳せる八尺様を巻き込んで、本物の不思議を体験することになった。
学校の担任や校長先生をはじめとする地域の大人が作り上げた創作不思議、今の世に発祥した新しい怪異、それを解明する間にユウキとカコは学校の最後のにして最初の不思議『怪談掃除のハナコさん』へと至る。
学校の不思議を舞台に紡がれるホラーコメディ!
この夏の自由研究(読書感想文)にどうですか?
イディーラ学園の秘密部
碧猫
児童書・童話
イディーラ学園には知られていない部活がある。
イディーラ学園はイディンの中で最も生徒数の多い学園。
その学園にはある噂があった。
「学園のどこかに誰も知らない場所があるんだよ。そこへ行った子は帰ってこないの」
学園にある秘密の場所。そこで行われている不思議な活動。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる