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プロローグ
06.まさかの再会
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鑑定士が反省している様子はなかった。
ここで逃がしてしまえば、きっとまたどこかで嘘をついて骨董品をだまし取るかもしれない。
(今からでも警備員に話した方がいいかな!?あっ、でも今日は採寸で着替えるからスマホ家に置いてきたんだった!)
しかし焦る私とはうって変わって、颯馬くんに慌てた様子はない。涼しげな顔のまま、そそくさと横を通ろうとした鑑定士の腕をガシッと掴んだ。
瞬間、男からかみ殺した悲鳴が聞こえる。
「その子に謝れ」
冷たく、怒りを押し殺したような声だった。
(……私のために、怒ってくれた?)
予想外の展開に、私はただぽかんと立ち尽くすことしかできなかった。鑑定士も同じだったようで、何を言われたか理解できないという目で颯馬くんを見た。
颯馬くんはそんな鑑定士の反応を気にも止めず、もう一度静かに同じ言葉を繰り返した。
「その子に謝れと言ったんだ。女の子を突き飛ばしておいてそれはないだろ」
「ちょっとぶつかっただけですよ。大騒ぎしただけでッ、痛!?」
鑑定士の言葉が最後まで続くことはなかった。颯馬くんが手に力を込めたからだ。この距離でも骨がきしむ音が聞こえる。
「わ、悪かった!突き飛ばして悪かったって!もういいだろ、急いでいるんだ」
鑑定士が痛みに負けて、半ば悲鳴のように謝罪した。しかし当然、それで開放されることは無い。
「それはできない。貴方がやったことは立派な犯罪だ。警察が来るまで、ここに居てもらうぞ」
「はあ!?ふざけるな!……くそ、どんな馬鹿力だよっ!離せ!」
鑑定士は必死に腕を振りほどこうとしているが、颯馬くんはびくりともしない。それどころかどんどん力がこもっているようで、さっきのあれでもまだ本気じゃなかったと理解してしまう。……何というか、凄い力だ。
「話は録音したから、逃げても無駄だよ」
呆気に取られていると、入り口の方が騒がしいことに気が付いた。ついでに聞き覚えのある声が耳に届く。嫌な予感がした。
「おじさん、もう観念したら?そのゴリラは掴んだら離さないよ」
「おい桜二、誰がゴリラだ!」
(うわっ、やっぱりさっきの金髪の子だ)
友達にも王子って呼ばれてるんだ、……って、あれ?もしかして、二人とも英蘭学園の生徒!?
頭が一気に冷えて、恐ろしい事実に小さく震えた。もう会わないと思ったからどうどうと力を使ったのに、まさかの同級生だったなんて。
「それに、逃げたらもっと罪が重くなるんじゃない?ねえ、警備員さん」
一人青くなる私をよそに、事件はトントン拍子に進んでいく。オウジサマがにこやかに入り口の方を見ると、ちょうど警備員さんが四人ほど入ってきた。
彼らは何も言わずに抵抗をやめた男を引き受けると、小さく解釈を残してそのままどこかに連れていった。それを見届けると、オウジサマが親し気に颯馬くんに近づく。
「いいモノ見せてもらったよ。運が良かったね」
「見てないで早く助けてくれ……」
「仕方ないでしょ。証拠はあるに越したことないんだから」
その気の置けないやり取りに、二人が友達なのは間違いないだろう。つまりオウジサマが気付いてしまったら、高確率で私が英蘭に通うことがバレてしまうということだ。
(よし、逃げよう)
二人が会話しているのをいいことに、私はそっと入り口に近づいていく。
「ああ、それは本当に助かった。今面倒事を持ち帰るわけにはいかないからな」
「それなら、もう一人の功労者にもお礼を言わないと」
まずい、私に意識が向いてる!とっさに頭を下げれば、目を丸くしている小人と目が合う。
最後まで見届けられなくてごめんね!でも今度は私のピンチだから許して!
「ごめんなさい!私、急いでて!」
「え、せめてお礼をさせてくれって、もう居ない……」
「あれ、彼女……」
何か言われる前に、私は彼らに背を向けて走り出す。目のことがバレたら、また小学校のときみたい浮いちゃう。
幸い眼鏡をかけている姿は見られていないし、向こうは私が英蘭に通うことも知らない。絶対に目立たないようにしなきゃ!
ここで逃がしてしまえば、きっとまたどこかで嘘をついて骨董品をだまし取るかもしれない。
(今からでも警備員に話した方がいいかな!?あっ、でも今日は採寸で着替えるからスマホ家に置いてきたんだった!)
しかし焦る私とはうって変わって、颯馬くんに慌てた様子はない。涼しげな顔のまま、そそくさと横を通ろうとした鑑定士の腕をガシッと掴んだ。
瞬間、男からかみ殺した悲鳴が聞こえる。
「その子に謝れ」
冷たく、怒りを押し殺したような声だった。
(……私のために、怒ってくれた?)
予想外の展開に、私はただぽかんと立ち尽くすことしかできなかった。鑑定士も同じだったようで、何を言われたか理解できないという目で颯馬くんを見た。
颯馬くんはそんな鑑定士の反応を気にも止めず、もう一度静かに同じ言葉を繰り返した。
「その子に謝れと言ったんだ。女の子を突き飛ばしておいてそれはないだろ」
「ちょっとぶつかっただけですよ。大騒ぎしただけでッ、痛!?」
鑑定士の言葉が最後まで続くことはなかった。颯馬くんが手に力を込めたからだ。この距離でも骨がきしむ音が聞こえる。
「わ、悪かった!突き飛ばして悪かったって!もういいだろ、急いでいるんだ」
鑑定士が痛みに負けて、半ば悲鳴のように謝罪した。しかし当然、それで開放されることは無い。
「それはできない。貴方がやったことは立派な犯罪だ。警察が来るまで、ここに居てもらうぞ」
「はあ!?ふざけるな!……くそ、どんな馬鹿力だよっ!離せ!」
鑑定士は必死に腕を振りほどこうとしているが、颯馬くんはびくりともしない。それどころかどんどん力がこもっているようで、さっきのあれでもまだ本気じゃなかったと理解してしまう。……何というか、凄い力だ。
「話は録音したから、逃げても無駄だよ」
呆気に取られていると、入り口の方が騒がしいことに気が付いた。ついでに聞き覚えのある声が耳に届く。嫌な予感がした。
「おじさん、もう観念したら?そのゴリラは掴んだら離さないよ」
「おい桜二、誰がゴリラだ!」
(うわっ、やっぱりさっきの金髪の子だ)
友達にも王子って呼ばれてるんだ、……って、あれ?もしかして、二人とも英蘭学園の生徒!?
頭が一気に冷えて、恐ろしい事実に小さく震えた。もう会わないと思ったからどうどうと力を使ったのに、まさかの同級生だったなんて。
「それに、逃げたらもっと罪が重くなるんじゃない?ねえ、警備員さん」
一人青くなる私をよそに、事件はトントン拍子に進んでいく。オウジサマがにこやかに入り口の方を見ると、ちょうど警備員さんが四人ほど入ってきた。
彼らは何も言わずに抵抗をやめた男を引き受けると、小さく解釈を残してそのままどこかに連れていった。それを見届けると、オウジサマが親し気に颯馬くんに近づく。
「いいモノ見せてもらったよ。運が良かったね」
「見てないで早く助けてくれ……」
「仕方ないでしょ。証拠はあるに越したことないんだから」
その気の置けないやり取りに、二人が友達なのは間違いないだろう。つまりオウジサマが気付いてしまったら、高確率で私が英蘭に通うことがバレてしまうということだ。
(よし、逃げよう)
二人が会話しているのをいいことに、私はそっと入り口に近づいていく。
「ああ、それは本当に助かった。今面倒事を持ち帰るわけにはいかないからな」
「それなら、もう一人の功労者にもお礼を言わないと」
まずい、私に意識が向いてる!とっさに頭を下げれば、目を丸くしている小人と目が合う。
最後まで見届けられなくてごめんね!でも今度は私のピンチだから許して!
「ごめんなさい!私、急いでて!」
「え、せめてお礼をさせてくれって、もう居ない……」
「あれ、彼女……」
何か言われる前に、私は彼らに背を向けて走り出す。目のことがバレたら、また小学校のときみたい浮いちゃう。
幸い眼鏡をかけている姿は見られていないし、向こうは私が英蘭に通うことも知らない。絶対に目立たないようにしなきゃ!
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