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第一章 初めての依頼
09.予想外の襲来
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心臓に悪い入学式が終わり、クラスへ向かう。私は一年C組だ。
外部受験組は全員同じクラスというわけではなく、内部生と一緒に振り分けられている。どのクラスも内部生のグループが既にできており、外部生は少し肩身狭い。
「これから毎日外部の方と一緒に過ごすなんて考えたくないわね。一条様とも桜二様とも同じクラスになれなかったし、ホントに最悪!」
「お二人ともA組じゃ、アタシたちは休み時間しか会えませんね」
休み時間になったとたん、教室の後ろの方から尖った声が聞こえる。
その中でも一番目立つのが綾小路花凛さんで、制服採寸会のとき、最初に嫌味を言っていた子だ。かなりいいところのお嬢様らしく、たくさん取り巻きがいて女子の中心でもある。
(最悪はこっちのセリフだよ……。五クラスもあるのに何で一緒になっちゃうんだろ)
クラスのみんな……特に外部生が目を付けられまいと静かにしている中、そんなことなどお構いなしに私の席まで来た男の子がいた。
「あれ、いつもの事だから気にしないでね」
そう言って机に手を置いたのは三葉秋兎、三年ぶりに再会した私の幼馴染みである。
「アキくん!久しぶり」
「うん。久しぶり、ユキちゃん」
昔は同じ小学校に通っていたけど、アキくんは絵の才能が評価されて、小学四年生の頃に特待生として英蘭学園の初等部に転入したんだ。
(それに合わせて引越しちゃったから、なかなか会えなくなっちゃたんだよね……)
それでも、アキくんはいつも時間を見つけては相談に乗ってくれた。
……人間関係で悩んでいた私に、英蘭学園を進めてくれたのもアキくんである。
「まさか同じクラスになれるなんてね。また昔みたいに同じ学校に通えるの、本当に嬉しいな」
「アキくんが同じクラスで良かった……正直、一人でやっていける自信がないかも」
そう言いながら、これからのことを考えてしまって気が重くなる。
表情が暗くなった私にアキくんは猫のようにつり上がった目を少しだけ丸くすると、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「あいつらは夏場のセミと変わらないから、ユキちゃんが心配することはなにもないよ」
(……それは、すごくうるさいってこと?)
やっぱり綾小路さんはいつもあんな感じなのかな。ああいう派手な子には嫌われ無い方がいいんだけど、確かにこの場合は関わらない方がよさそう。
「うん、そうする。これからよろしくね!」
「ふふ、分からないことあったら何でも聞いてね」
そう言うと、アキくんはえへんと胸を張った。柔らかい茶色のくせっ毛が揺れる。
……身長が伸びることを考慮したのか、アキくんの制服がぶかぶかだ。そのせいで、頼もしいというよりかわいいと思ってしまう。怒られるから言わないけど。
そうして二人で話していると、ざわっと廊下が騒がしくなった。
「見てっ、一条様と桜二様よ!」
クラスの女子の顔が輝いたのと同時に、私は反射的に隠れた。
みんないそいそと立ち上がる中、気配を消そうとしているのは私だけ。突然盾にされたアキくんが驚いたようにこちらを見ている。
「お二人ともあまり教室を出ないタイプですのに、今日はどうしたのかしら」
「やっぱり、教室に外部の方がいるからじゃない?」
「そうかも!やっぱり二人も気が滅入るのね」
女子のほとんどが廊下側の窓に陣取り、花凛さんなんて廊下に出ていた。みんな顔は恋する乙女って感じなのに、口調にどこか棘がある。
「ねえ!こっちに来てない!?」
集まる視線をものともせず、私が最も会いたくない二人がこの教室に近づいてくる。
バレないでしょと考えていた昨日までの私を殴りたい。だいたいなんで二人ともそろいもそろってこんな大人気なんだろう。アイドルか。
「ユキちゃん?さっきからどうしたの?」
「な、なんでもないよ!ただあの人たち、すごい人気だなって」
「あー……あの二人、一条と白鳥は“花持ち”でも格が違うからね」
「花持ち?」
一瞬にしてあふれんばかりの花を抱えた二人の姿が私の頭に浮かんだ。確かに注目をあびると思うけど、たぶんそういう意味じゃないよね。
だけど私が答えを聞く前に、教室のドア付近で声が響いたのだった。
「――ほら見ろ桜二。やっぱりいただろ?」
「オレはときどき、本気でお前が人間かと疑う時があるよ。……よくあの距離で見つけたな」
聞き覚えのある声に、私はビシリと固まった。
「あの、一条様?何かご用件でしたら、わたくしが聞きますわよ」
「探してたやつは見つけたから大丈夫だ。それよりちょっとどいてくれ」
一条くんは目の前で壁になっていた綾小路さんたちを押しのけると……ツカツカと私の前までやってきた!?
しかもまっすぐ私を見ていて、さっきからずっと目が合っている。
……まさか、探してたやつって私のこと!?
外部受験組は全員同じクラスというわけではなく、内部生と一緒に振り分けられている。どのクラスも内部生のグループが既にできており、外部生は少し肩身狭い。
「これから毎日外部の方と一緒に過ごすなんて考えたくないわね。一条様とも桜二様とも同じクラスになれなかったし、ホントに最悪!」
「お二人ともA組じゃ、アタシたちは休み時間しか会えませんね」
休み時間になったとたん、教室の後ろの方から尖った声が聞こえる。
その中でも一番目立つのが綾小路花凛さんで、制服採寸会のとき、最初に嫌味を言っていた子だ。かなりいいところのお嬢様らしく、たくさん取り巻きがいて女子の中心でもある。
(最悪はこっちのセリフだよ……。五クラスもあるのに何で一緒になっちゃうんだろ)
クラスのみんな……特に外部生が目を付けられまいと静かにしている中、そんなことなどお構いなしに私の席まで来た男の子がいた。
「あれ、いつもの事だから気にしないでね」
そう言って机に手を置いたのは三葉秋兎、三年ぶりに再会した私の幼馴染みである。
「アキくん!久しぶり」
「うん。久しぶり、ユキちゃん」
昔は同じ小学校に通っていたけど、アキくんは絵の才能が評価されて、小学四年生の頃に特待生として英蘭学園の初等部に転入したんだ。
(それに合わせて引越しちゃったから、なかなか会えなくなっちゃたんだよね……)
それでも、アキくんはいつも時間を見つけては相談に乗ってくれた。
……人間関係で悩んでいた私に、英蘭学園を進めてくれたのもアキくんである。
「まさか同じクラスになれるなんてね。また昔みたいに同じ学校に通えるの、本当に嬉しいな」
「アキくんが同じクラスで良かった……正直、一人でやっていける自信がないかも」
そう言いながら、これからのことを考えてしまって気が重くなる。
表情が暗くなった私にアキくんは猫のようにつり上がった目を少しだけ丸くすると、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「あいつらは夏場のセミと変わらないから、ユキちゃんが心配することはなにもないよ」
(……それは、すごくうるさいってこと?)
やっぱり綾小路さんはいつもあんな感じなのかな。ああいう派手な子には嫌われ無い方がいいんだけど、確かにこの場合は関わらない方がよさそう。
「うん、そうする。これからよろしくね!」
「ふふ、分からないことあったら何でも聞いてね」
そう言うと、アキくんはえへんと胸を張った。柔らかい茶色のくせっ毛が揺れる。
……身長が伸びることを考慮したのか、アキくんの制服がぶかぶかだ。そのせいで、頼もしいというよりかわいいと思ってしまう。怒られるから言わないけど。
そうして二人で話していると、ざわっと廊下が騒がしくなった。
「見てっ、一条様と桜二様よ!」
クラスの女子の顔が輝いたのと同時に、私は反射的に隠れた。
みんないそいそと立ち上がる中、気配を消そうとしているのは私だけ。突然盾にされたアキくんが驚いたようにこちらを見ている。
「お二人ともあまり教室を出ないタイプですのに、今日はどうしたのかしら」
「やっぱり、教室に外部の方がいるからじゃない?」
「そうかも!やっぱり二人も気が滅入るのね」
女子のほとんどが廊下側の窓に陣取り、花凛さんなんて廊下に出ていた。みんな顔は恋する乙女って感じなのに、口調にどこか棘がある。
「ねえ!こっちに来てない!?」
集まる視線をものともせず、私が最も会いたくない二人がこの教室に近づいてくる。
バレないでしょと考えていた昨日までの私を殴りたい。だいたいなんで二人ともそろいもそろってこんな大人気なんだろう。アイドルか。
「ユキちゃん?さっきからどうしたの?」
「な、なんでもないよ!ただあの人たち、すごい人気だなって」
「あー……あの二人、一条と白鳥は“花持ち”でも格が違うからね」
「花持ち?」
一瞬にしてあふれんばかりの花を抱えた二人の姿が私の頭に浮かんだ。確かに注目をあびると思うけど、たぶんそういう意味じゃないよね。
だけど私が答えを聞く前に、教室のドア付近で声が響いたのだった。
「――ほら見ろ桜二。やっぱりいただろ?」
「オレはときどき、本気でお前が人間かと疑う時があるよ。……よくあの距離で見つけたな」
聞き覚えのある声に、私はビシリと固まった。
「あの、一条様?何かご用件でしたら、わたくしが聞きますわよ」
「探してたやつは見つけたから大丈夫だ。それよりちょっとどいてくれ」
一条くんは目の前で壁になっていた綾小路さんたちを押しのけると……ツカツカと私の前までやってきた!?
しかもまっすぐ私を見ていて、さっきからずっと目が合っている。
……まさか、探してたやつって私のこと!?
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