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原作開始
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それから六年。私は十六歳になっていた。
スキンケアも運動も勉強も本気で取り組んだ私は、同年代の令嬢たちと圧倒的な差をつけていた。素材がすこぶるよかったというのもあるけど、もはや次元が違う。
今では立てば花が咲き、座れば空が晴れ渡り、歩くと触れたいと風が吹くすべてを狂わせる魔性の女だ。
「ひぃ、それ以上近寄るな!目がつぶれる!」
さて、いよいよ原作が始まったわけだが。これがまあ大変だった。なぜなら私の顔に耐性がある人間がいないからだ。強いて言えば原作のヒロインくらいだ。彼女は私を見るたびに悔しそうにハンカチを噛んでいるが、まさか私と張り合おうとしたのだろうか。
だって、私は未だにパーティーに出ただけで気絶する人がいるし、気絶しなかった人は瞬き一つせずに見つめてくる。攻略対象は後者だが、正直怖いからやめてほしい。
でも、まったく友達がいないわけではない。
「あ、シャンプー変えた?昨日と香りが違うね。あのはちみつのような甘い香りも好きだけど、この爽やかな香りも好きだな」
金髪碧眼の王子であるオリバーとは茶飲み仲間だ。瞬きはしてほしいが、いつもおいしい物を用意してくれるし、原作のような人間性を疑う言葉も出てこない。距離近いしボディータッチが多いけど。
「そそそそのとと通りだ。さささすがだだだななな」
赤髪赤目のインテリ眼鏡キャラのイアンは、小鹿のように震えながらも私と普通に話そうとしてくれる。勉強も教えてくれる。マナーモード搭載済みで声が震えすぎて少しも聞き取れないけど。
「この花、綺麗だった。あんたには負けるけど、きっと似合うと思って」
親近感を抱く黒髪黒目の騎士レオは見た目に反してかわいいやつだ。体格のいい彼は突然積んだ花を渡してくるし、ボディービルダーのようなポーズを見せつけてくる。常に顔が真っ赤だが、まあいいやつだ。
「ねえねえクロエ、見てよこれ!この宝石絶対にクロエに似合うと思って買って来ちゃった~」
最後に永遠の弟を名乗るルイスだが、彼は最初の友達だ。瞬きせずにハイライトが消えた真顔で見つめてくる瞬間がある以外、明るく可愛い楽しい子だ。何かと彼の実家である隣国に連れていきたがるけど。
何度かヒロインが突撃しようとしていたが、その度に私を取り囲む人の壁にはじき返されていた。もっと鍛えるべきだ。
そんな感じで、私は何の恐れもなく生活を楽しんでいたが。
スキンケアも運動も勉強も本気で取り組んだ私は、同年代の令嬢たちと圧倒的な差をつけていた。素材がすこぶるよかったというのもあるけど、もはや次元が違う。
今では立てば花が咲き、座れば空が晴れ渡り、歩くと触れたいと風が吹くすべてを狂わせる魔性の女だ。
「ひぃ、それ以上近寄るな!目がつぶれる!」
さて、いよいよ原作が始まったわけだが。これがまあ大変だった。なぜなら私の顔に耐性がある人間がいないからだ。強いて言えば原作のヒロインくらいだ。彼女は私を見るたびに悔しそうにハンカチを噛んでいるが、まさか私と張り合おうとしたのだろうか。
だって、私は未だにパーティーに出ただけで気絶する人がいるし、気絶しなかった人は瞬き一つせずに見つめてくる。攻略対象は後者だが、正直怖いからやめてほしい。
でも、まったく友達がいないわけではない。
「あ、シャンプー変えた?昨日と香りが違うね。あのはちみつのような甘い香りも好きだけど、この爽やかな香りも好きだな」
金髪碧眼の王子であるオリバーとは茶飲み仲間だ。瞬きはしてほしいが、いつもおいしい物を用意してくれるし、原作のような人間性を疑う言葉も出てこない。距離近いしボディータッチが多いけど。
「そそそそのとと通りだ。さささすがだだだななな」
赤髪赤目のインテリ眼鏡キャラのイアンは、小鹿のように震えながらも私と普通に話そうとしてくれる。勉強も教えてくれる。マナーモード搭載済みで声が震えすぎて少しも聞き取れないけど。
「この花、綺麗だった。あんたには負けるけど、きっと似合うと思って」
親近感を抱く黒髪黒目の騎士レオは見た目に反してかわいいやつだ。体格のいい彼は突然積んだ花を渡してくるし、ボディービルダーのようなポーズを見せつけてくる。常に顔が真っ赤だが、まあいいやつだ。
「ねえねえクロエ、見てよこれ!この宝石絶対にクロエに似合うと思って買って来ちゃった~」
最後に永遠の弟を名乗るルイスだが、彼は最初の友達だ。瞬きせずにハイライトが消えた真顔で見つめてくる瞬間がある以外、明るく可愛い楽しい子だ。何かと彼の実家である隣国に連れていきたがるけど。
何度かヒロインが突撃しようとしていたが、その度に私を取り囲む人の壁にはじき返されていた。もっと鍛えるべきだ。
そんな感じで、私は何の恐れもなく生活を楽しんでいたが。
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