『小説カフェやすらぎ2030』

第1章 ホッピーとルン

ホッピーとルン⑻

マスターがこの近くでカフェを経営していることをその女性に伝えると、翌日の午後、女性はアンディーを連れてカフェにお茶をしに来てくれた。
ルンとアンディーは顔を合わせると、すぐにじゃれあったり、おっかけっこをしたり、ペット用のおもちゃで遊んだりすることに夢中になった。
ホッピーは床に寝そべって、二匹がたわむれているのをのんびりと見ている。

女性はカウンター席でお茶を飲みながらマスターと楽しそうに会話をしている。
名前は百瀬(ももせ)さんといって、わたし達がいつも会う道のそばの住宅街で、だんなさんと二人で暮らしていて、自宅でピアノの先生をしているそうだ。
「最近は別の惑星からピアノを習いにくる星人さん達がいるんですよ。ピアノってとっても珍しいみたいで」
百瀬さんが言って、
「そうでしょうねー。ピアノのない星の人達からみたら、なんだろう、これ、ってまず思うんじゃないかなー」
マスターがこたえていた。

しばらくして百瀬さんが
「またこちらへお茶をしにうかがいますね」
と言って、アンディーをペットカートに座らせてカフェから去ろうとすると、ルンが名残惜しそうにドアまでその後を付いて行った。百瀬さんとアンディーがドアの外へ出た後も、ドアのそばでじっとしていた。
けれど、ホッピーが起き上がって、ルンの近くまで行くと、ルンは急に生き生きとして、ホッピーといっしょに遊び始めた。