上 下
45 / 113
咲良と生徒会のゆかいな(?)日常/本編その後

08

しおりを挟む
 襲われた直後で一人にされるのが不安で、俺は結城を引き止めてしまった。
 それ以上の意味はないんだ。なのに、なぜ、キスされた?さっきの結城の言葉も、まるで告白のように聞こえた。
 そして、どうして朝日がここに・・・?

「結城、お前・・・、咲良に何してんだよ・・・ッ!!」

 間に入ってきた朝日は俺と結城を引き離すと、結城の胸ぐらを掴むのだ。
 すると結城は動揺するわけでもなく、黙って朝日を見やるのだ。

 ーーもしかして、生徒二人に襲われたことを朝日に言いたくない俺に、気を使っているのか・・・?

 襲われたことを朝日が知ったら、間違いなく俺に付いて行かなかった自分を責めるだろう。俺としても朝日ではない奴に触られたなど知られたくない。
 先ほど、なぜか結城にキスはされたが。

「ーー朝日、結城は具合が悪かった俺を助けてくれただけだ」

 離してやってくれ、と朝日の腕を掴むと、朝日は不服そうな顔をするのだ。

「じゃあ何でキスしてたんだよ。しかも、お前泣いてるし」
「してないから。してるように見えただけだろ。目は擦りすぎただけだ」

 すると朝日はじっとこちらを見やるのだ。苦しい言い訳に聞こえただろうか。
 俺は表情に出ないように、なるべく平然を装って朝日に目を合わせた。逸らすと絶対やましいことがあると思われてしまうから。
 すると、少し間があった後に分かったよ、と息を吐いた朝日は結城から手を離すと、俺が羽織っていた結城の上着を取り、結城に返すのだ。

「・・誤解が解けたようでよかったです」

 上着を受け取った結城はいつかの時のように胡散臭さを含んだ笑顔を朝日に向けたと思えば、きゅっと俺の手を取るのだ。
 ぎょっとしたのもつかの間、繋がれている俺と結城の手を見た朝日は眉間にしわを寄せた。

「・・・何やってんだよ、結城」
「具合の悪い咲良先輩を、いつまでもここにいさせられないじゃないですか。部屋まで送ってあげようと思って」
「・・だって朝日先輩、忙しいですよね」
と、朝日に微笑む結城はなんだか挑発しているようにも見える。
 朝日もそう捉えたのか、次の瞬間、体がふわっと宙に浮いたのだ。
 そして近くにある朝日の顔に、心臓がどくんと跳ねた。

「・・生徒会の仕事は那智先輩に任せてあるから。咲良は俺が引き受ける。結城、お前の仕事もあるんだからな。早く生徒会室に行け」
「・・・厳しいなあ、もう。・・じゃ、咲良先輩、また明日」

すると結城は自然な笑顔でこちらに向けて軽く手を振り、きびすを返すのだ。

「ゆ、結城・・・、ありがとう、助けてくれて」

 朝日に抱きかかえられ、連れて行かれながらも結城に礼を言うと、背を向けながらも結城はこちらに向かって手を上げていた。
 結局キスのことも告白の詳細も聞けないまま、俺は朝日の部屋で、具合が悪いと言ってしまった手前、看病を受けていた。その間、朝日はあまり機嫌が良くなかった。
 そして結城には気を付けろと再三言われ、面倒になった俺は寝たフリをして流してしまったのだ。


***


「朝日先輩、こいつら退学にして欲しいんですけど」

 放課後生徒会室で業務をしている俺の机に、生徒の情報が載っている書類を、結城はいきなり机に広げたのだ。

「・・・理由は?」
「言えません」

 俺が問いかけても結城は表情一つ変えずに口を割らなかった。
 それは二年の生徒二人の名簿のコピーだった。たまに素行が悪いとは聞いてはいるが、退学とまではいかないくらいくらいの奴らだ。

「あのなあ・・・」

 いくら生徒会長と言っても、少し気に入らないくらいで退学にさせたら前会長の那智と変わらないだろう。
 結城も咲良に対しては少々問題児ではあるが、そう簡単に人を貶めたりはしないはずだが。

 ーーーーー待て、まさか・・・、咲良が、関係しているのか・・・?

「・・・昨日、咲良が泣いてたのと関係あるのか?」
「何で咲良は、俺に言わないんだ・・・・・」
「・・・さあ?朝日先輩が頼りないからじゃないですか?」

 結城を見上げると笑っているのを隠すかのように顔に手を当て、口元を覆うのだ。

「・・お前、何隠してるんだよ」
「何も?ただ、一つだけ確信はあります」
「・・・咲良先輩は、自分の意思で俺の元に来ます。・・・必ずね」

 あはっと声を上げて笑う結城は、一体何を考えているのか、俺には全く分からなかった。

 すると結城はきびすを返すと、生徒会室の扉に手を掛けるのだ。そのまま出ていくのかと思いきや、結城はくるっとこちらに振り返り、朝日先輩、と俺を呼ぶと、
「咲良先輩は、俺がもらいますんで。そのつもりでいてください」
と、何ともまたも楽しそうに笑っていた。

 この時、俺は何を言っているのかと思った。咲良は俺と付き合っているのだから、そんなことあるわけないだろうと。
 ーー後日、咲良が結城に声を掛け、共に寮に向かって歩いている姿を見るまでは、俺はそう思っていたんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

総受け体質

田原摩耶
BL
二人の兄に毎晩犯されて可愛がられてきた一人称僕・敬語な少年が初めて兄離れをして全寮制学園に通うことになるけどモブおじさんにセクハラされたり色々されながらも友達をつくろうと肉体的に頑張るお話。 ※近親相姦、セクハラ、世間知らず、挿入なしで全編エロ、乳首責め多め。なんでも許せる方向け。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

【完】グランディール学院の秘密

伊藤クロエ
BL
【何考えてるかわかんない強面マッチョな下級生×実は気持ちいいことに弱い生真面目クールビューティ優等生】 思春期の欲求不満が原因で学業が疎かにならぬよう、特に優秀な生徒の元に派遣され、性的な奉仕をしてくれる極秘の奉仕委員制度が存在する男女共学の王立グランディール学院。 『笑わないプリンス』と呼ばれる筆頭監督生のアリスティドが出来心で委員を呼び出してみたら、やってきたのは自分よりずっと体格のいい強面の下級生男子ゲオルグだった。 てっきり女子委員が来て手や口で慰めてくれるのだと思っていたアリスティドは驚き戸惑うも、ウブで潔癖な心と身体をゲオルグの『少し意地悪だけどひたすらアリスティドを愛し可愛がってくれるご奉仕』に散々開発されてしまい、彼なしでは眠れない身体にされてしまう。 生真面目なアリスティドはそんな自分をどうしても許せず、また自分をそんな風に変えてしまった彼に激しい苛立ちと不信感を抱く。 一体なぜゲオルグは奉仕委員になどなったのか、そこまでして自分をこんな目に合わせたかったのかと疑いながらも、今夜も彼の下で喘ぎ身悶えながらまた女にされてしまう……的なひたすらえっちなお話です。 ■こんなあらすじですが最終的には愛あるハピエンになります。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!

ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて 素の性格がリスナー全員にバレてしまう しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて… ■ □ ■ 歌い手配信者(中身は腹黒) × 晒し系配信者(中身は不憫系男子) 保険でR15付けてます

処理中です...