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最終章
04
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最初に声を掛けた時は断られたが、俺は懲りずに次の日にも咲良に声を掛け、昼飯に誘った。
すると、少し驚き、間があった後に
「・・・別に、いいけど」
と、前日と同様に素っ気ない返事ではあったが、その声は心なしか、弾んでいるように聞こえたのだ。
共に食堂に向かうと、その間、俺と咲良は注目の的だった。
道行く人の視線を集めながら廊下を進むと、咲良がどれだけ有名なのかがよく分かる。
「凄いな、咲良くん、やっぱめちゃくちゃ注目されてるのな」
「別に・・。てかあんたこそ有名だろ」
「え、俺のこと知ってるのか?」
「・・・同じクラスの奴の名前くらい、知ってる。朝日くん、だろ」
憧れである咲良に認知されていて、名前を呼んでもらえるなんて・・。たったそれだけのこと。それだけのことなんだ。
・・・でも、俺は、かなり舞い上がってしまっていた。
咲良は高嶺の花なんて言われてるからどんだけおしとやかなのかと思ったら、口は大きく開けて豪快に笑うし、寝癖は付けたまま学校に来るし、高嶺の花、というイメージとはとてもとてもかけ離れていた。
・・・でも、なぜかは分からないが、俺はそんな咲良に、強く惹かれたんだ。
咲良とつるみ初めてから数ヶ月程度経った時、俺は咲良に告白した。
その時はとても驚いていたが、顔を真っ赤にしていて、咲良も俺のことが好きだと言ってくれた。
凄く嬉しくて、勢いでキスまでしてしまったことを覚えている。
意外なことに、咲良は今まで恋人がいたことはなかったらしく、何もかも俺が初めてだと言う。
まず付き合えたことだけで嬉しいのに、その上全部俺が初めてなんて、俺はかなり浮かれてしまっていた。
一応、那智の件もあるので、念の為付き合うのは二人だけの秘密にした。
それからは、毎日が幸せだった。大好きな咲良と毎日一緒に過ごし、俺の部屋で初めて体を重ね、そしてたまに空き教室でイチャついたりもして、本当に楽しくて、俺の生活は咲良中心になっていた。
ーーそんな、ある日のことだった。俺の日常に、亀裂が入り始めたのは。
俺の家には、父親がいない。
会社を経営していた父は、俺がこの学校に入学したと同時に亡くなってしまった。
父の補佐をしていた母が社長になり、慣れない中、毎日夜中まで身を削ってまで働いていた。
大変な母の現状を知っている俺は、高額な学費のかかるこの学校を辞める気でいたのだ。
だが母はそれに反対した。父が入学させてくれたのに辞めるなと、学費のことは父の保険金もあるし、何とかするからと言ってくれた。
だから俺はせめて、この進学校で良い成績を収め、良い職に就き、母を楽させてあげようとしていただけだ。していただけなのに、
咲良と付き合い初めてからのことだった。母が倒れてしまったのだ。
なんでも、急にクレームが増えたらしい。一日に一件もなかったのに、数件、数十件と、日に日に増え、対応に追われた母はろくに睡眠も取れず、休みなく働いた結果がそれだ。
そんな母の為に、学校は絶対に辞められないのだ。
そんな時だった。那智に呼び出されたのは、
この時から、俺は何だか嫌な予感はしていたんだ。
「ーー朝日くん、前回のテスト中、君がカンニングをしているのを見たって子がいるんだよ」
「・・・・・はい?」
急に、何を、言っているんだろうか。
自分で言うのも何だが、俺は勉強はできる方だ。カンニングなんてせずとも自力で良い点は取れる。
「俺、そんなことしてないです」
すると那智は深い溜息をつくのだ。
「・・・朝日くん、君って、本当に物分かりの悪い子だよね」
俺を見据えるその目は、俺と目が合うと、にっこりと微笑むのだ。
「・・・え?」
どういうことですか、と聞く前に那智は「ところで」と、口を開くのだ。
「お母様はお元気かな?このご時世だ、業績が上がらなくて頑張り過ぎることもあるだろう。ちゃんと、お母様のことを見ててあげるんだよ」
相変わらず、那智は笑顔だった。気持ち悪い、気味が悪いほどに。
ーーそれで俺は、気付いてしまったのだ。
俺は、母の件は誰にも言っていない。友人はもちろん、咲良にも。
「あ、あんた、まさか・・・・・」
ーーお前の、せいなのか、俺の母を・・・、
「どうしたのかな、朝日くん。顔色が悪いね、座ってもらって構わないよ」
「・・・そして、俺と今後の話をしようじゃないか」
カンニングをしたと言われている俺は、本来は退学だそうだ。
那智は、手伝いをしてくれるなら、特別にカンニングを見逃してやると俺に提案をした。
ーー俺の恋人を、嵌める手伝いを。
このままでは那智によって母が殺されてしまう。俺の家よりも地位も財力もある生徒会長の那智にこれ以上逆らうと、カンニングをしたとされる俺は退学になり、その上、母は殺され会社も無事では済まされない。
ーー俺には、首を縦に振る以外の選択肢は、なかった。
そして那智によって、咲良を生徒会に差し出す計画が実行されたのだ。
すると、少し驚き、間があった後に
「・・・別に、いいけど」
と、前日と同様に素っ気ない返事ではあったが、その声は心なしか、弾んでいるように聞こえたのだ。
共に食堂に向かうと、その間、俺と咲良は注目の的だった。
道行く人の視線を集めながら廊下を進むと、咲良がどれだけ有名なのかがよく分かる。
「凄いな、咲良くん、やっぱめちゃくちゃ注目されてるのな」
「別に・・。てかあんたこそ有名だろ」
「え、俺のこと知ってるのか?」
「・・・同じクラスの奴の名前くらい、知ってる。朝日くん、だろ」
憧れである咲良に認知されていて、名前を呼んでもらえるなんて・・。たったそれだけのこと。それだけのことなんだ。
・・・でも、俺は、かなり舞い上がってしまっていた。
咲良は高嶺の花なんて言われてるからどんだけおしとやかなのかと思ったら、口は大きく開けて豪快に笑うし、寝癖は付けたまま学校に来るし、高嶺の花、というイメージとはとてもとてもかけ離れていた。
・・・でも、なぜかは分からないが、俺はそんな咲良に、強く惹かれたんだ。
咲良とつるみ初めてから数ヶ月程度経った時、俺は咲良に告白した。
その時はとても驚いていたが、顔を真っ赤にしていて、咲良も俺のことが好きだと言ってくれた。
凄く嬉しくて、勢いでキスまでしてしまったことを覚えている。
意外なことに、咲良は今まで恋人がいたことはなかったらしく、何もかも俺が初めてだと言う。
まず付き合えたことだけで嬉しいのに、その上全部俺が初めてなんて、俺はかなり浮かれてしまっていた。
一応、那智の件もあるので、念の為付き合うのは二人だけの秘密にした。
それからは、毎日が幸せだった。大好きな咲良と毎日一緒に過ごし、俺の部屋で初めて体を重ね、そしてたまに空き教室でイチャついたりもして、本当に楽しくて、俺の生活は咲良中心になっていた。
ーーそんな、ある日のことだった。俺の日常に、亀裂が入り始めたのは。
俺の家には、父親がいない。
会社を経営していた父は、俺がこの学校に入学したと同時に亡くなってしまった。
父の補佐をしていた母が社長になり、慣れない中、毎日夜中まで身を削ってまで働いていた。
大変な母の現状を知っている俺は、高額な学費のかかるこの学校を辞める気でいたのだ。
だが母はそれに反対した。父が入学させてくれたのに辞めるなと、学費のことは父の保険金もあるし、何とかするからと言ってくれた。
だから俺はせめて、この進学校で良い成績を収め、良い職に就き、母を楽させてあげようとしていただけだ。していただけなのに、
咲良と付き合い初めてからのことだった。母が倒れてしまったのだ。
なんでも、急にクレームが増えたらしい。一日に一件もなかったのに、数件、数十件と、日に日に増え、対応に追われた母はろくに睡眠も取れず、休みなく働いた結果がそれだ。
そんな母の為に、学校は絶対に辞められないのだ。
そんな時だった。那智に呼び出されたのは、
この時から、俺は何だか嫌な予感はしていたんだ。
「ーー朝日くん、前回のテスト中、君がカンニングをしているのを見たって子がいるんだよ」
「・・・・・はい?」
急に、何を、言っているんだろうか。
自分で言うのも何だが、俺は勉強はできる方だ。カンニングなんてせずとも自力で良い点は取れる。
「俺、そんなことしてないです」
すると那智は深い溜息をつくのだ。
「・・・朝日くん、君って、本当に物分かりの悪い子だよね」
俺を見据えるその目は、俺と目が合うと、にっこりと微笑むのだ。
「・・・え?」
どういうことですか、と聞く前に那智は「ところで」と、口を開くのだ。
「お母様はお元気かな?このご時世だ、業績が上がらなくて頑張り過ぎることもあるだろう。ちゃんと、お母様のことを見ててあげるんだよ」
相変わらず、那智は笑顔だった。気持ち悪い、気味が悪いほどに。
ーーそれで俺は、気付いてしまったのだ。
俺は、母の件は誰にも言っていない。友人はもちろん、咲良にも。
「あ、あんた、まさか・・・・・」
ーーお前の、せいなのか、俺の母を・・・、
「どうしたのかな、朝日くん。顔色が悪いね、座ってもらって構わないよ」
「・・・そして、俺と今後の話をしようじゃないか」
カンニングをしたと言われている俺は、本来は退学だそうだ。
那智は、手伝いをしてくれるなら、特別にカンニングを見逃してやると俺に提案をした。
ーー俺の恋人を、嵌める手伝いを。
このままでは那智によって母が殺されてしまう。俺の家よりも地位も財力もある生徒会長の那智にこれ以上逆らうと、カンニングをしたとされる俺は退学になり、その上、母は殺され会社も無事では済まされない。
ーー俺には、首を縦に振る以外の選択肢は、なかった。
そして那智によって、咲良を生徒会に差し出す計画が実行されたのだ。
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