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高嶺の花と生徒会長と朝日

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「・・朝日が俺のこと生徒会に売ったってことはさ、多分朝日が落選した選挙から、俺は朝日に騙されてたってことなんだろ?」
「・・・正直、そこまで朝日に嫌われてるとは思ってなかった」

「兄さん・・・、」

「・・でも、引っかかってることがあるんだ。朝日は生徒会室に乗り込もうとしていた俺を、最後まで引き止めてたんだ。・・何でだと思う?」

 すると、結城は息をはあ、と吐いた。

「知りませんよ、そんなこと」
「だよな・・」

 落ち込んだ様子の俺を見た結城は、さらに続けるのだ。

「・・朝日先輩は最後まで迷ってたんじゃないですか?分かりませんけど」
「迷ってた・・?」
「・・・・・てか咲良先輩さあ、そのことを朝日先輩と一度でも話したんですか?」

 すると類がえ、と声を出すのだ。

「結城いいの?敵に塩を送る様な真似して」
「・・・今の咲良先輩、なんかこの間みたいに元気ないし、つまらないんですよ。・・いじりがいないし」
「わ、結城がデレた!可愛い奴~!」

 類が結城の頭をわしゃわしゃと撫でると、
「おわっ!頭撫でんなバカ!」
と、結城はべしっとその手を払った。

「結城入って来た時のは作ってたんだね。今の方が素直で後輩っぽいな~」
「・・もうアンタらには本性知られちゃったし取り繕う意味ないんで」

 そんな2人の様子を見た弥生は、こいつらは、と息を吐くのだ。

「・・兄さん、俺達はただ、朝日先輩が兄さんを生徒会に差し出すことになったってしか那智先輩に聞いてないから、詳細は分からないんだよ」

 すると類があ、と呟くのだ。

「・・関係ないかもしれないけど、それは俺少しだけ知ってるかも。・・・あいつ、那智はね、実はめちゃくちゃ咲良ちゃんのこと好ーーー」

ーーーカチャ

 那智のことを話していたからか、皆反射的に音のする扉の方をバッ向いてしまう。
 皆の注目を集めた那智はその視線を気にするでもなく、
「何の話をしていたのかな、俺も交ぜてよ」
と、にこっとこちらに向かって笑いかけるのだ。

 すると機転を利かせた類がその場を収め、その後で中断していた生徒会の業務を再開させたので、正直助かったところではある。







 先ほど類は、那智が俺のことを好きと言いかけた。
 那智が、俺のことを好き、・・・か。

 ーーー正直、めちゃくちゃ心当たりはある。

 那智は私生活は規則正しく勉強も見てもらえるし、他の生徒会の奴らと違い手を出されることはないので、特待生の俺としては正直良いことづくめだ。
 ただ、寮の部屋は一人用の為もちろんベッドは一つしかない。
 初日は那智にヤられて、朝起きたら同じベッドで目が覚めたが、さすがに2日目は一緒のベッドに寝るのを遠慮した。そしたら那智に、手は出さないし他に寝るとこないからと言われ、仕方なしにそれからは同じベッドで夜を共にしている。 

 そして那智の部屋の泊まり初めてから、那智はあの日依頼本当に手を出してくることはなかった。初日のアレは本当に善意からのものだったのかと思い初めてきた時のことだった。

 夜中、寝ていた俺は隣から何やらぶつぶつ聞こえてくる声で目を覚ました。目が覚めたばかりで寝ぼけながらに、何を言ってるのかと寝ているふりをしながら耳をすませたのだ。

「ーーー・・・ああ、可愛い美しい、なんて綺麗なんだろう・・」
「俺の咲良、咲良、本当に可愛い」

 頬に温かいものがちゅっと触れた。
 まさか、キスされたのか・・・?

「この柔らかい頬、長いまつ毛、白い肌・・・、本当に、美しい・・・。早く、また君に触れたいよ、咲良・・・」

 それから何度も頬にキスを落とされた。ちなみに太ももには硬く反り立ったもの当たっていた。

・・・正直、ドン引きである。

 そして身の危険を感じた俺は、次の日からお守りをポケットに入れて持ち歩くことにした。
 なぜ寝ている間にやっていたのかは分からないが、俺にバレないようにやっていたことから、まあこれからも手を出してくることはないのだろうと、この時の俺は思っていた。







 那智の生徒会の業務が終わり、今は那智と共に帰路についている。いつもは那智がこちらに話題を振り、話をしながら寮に戻るが、今日はなぜだか口数が少ない。どうしたんだろうか。
 会話がほぼないまま部屋に付くと、扉を開けて中に入った那智に続いて俺も部屋に入った時だった。

「ーーーで、」

 扉が閉まった瞬間、那智がぽつりと呟くと同時に俺の手首を掴んだと思えば、扉にドンっと押し付けられたのだ。

「っ、」

 何事かと見上げると、那智の顔がすぐ近くにあった。髪が頬をくすぐる。唇が触れてしまいそうな距離だった。

「・・・咲良くん。さっきはあの子達と、何を楽しそうに話していたのかな?」

 目は笑ってはいるが、その表情にいつもの穏やかさは、ない。
 那智と過ごし始めて数日、俺は始めて那智の逆鱗に触れてしまったようだ。
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