51 / 101
第三章 ギルド結闘編
第51話 拳と拳 vsウェーン
しおりを挟む親善試合の第三試合が始まった。
僕の対戦相手の名前は、ウェーンと言うらしい。
その男は斧を片手に『かかってこい』と言っているかのように挑発をしている。
その態度からは余裕さえ感じる。その巨大な体からしたら、僕は小さく弱いと思われているのだろう。
まあ否定はできないけども。あんまり挑発には乗らないようにしないとね。
ウェーンさんはニヤニヤしているだけで、特に何もしてこない。不本意だけど、こちらから動くしかないようだ。
僕はウェーンさんのステータスを確認する。
すると、ステータス画面には、職業や、レベルの表記などがなかったのだ。
名前だけは書いてある。何かのバグかと思い、アイヤさんやトゥビーさんのも確認した。
だが二人にも名前の表記はあったが、職業などがなかった。
職業なしでレベルもないってことなのか? 流石に驚きは隠せないが、考えても仕方ない。
ここは、僕らしくはないけど攻めてみようと思い、走り出す。
すると、ウェーンさんは、持っていた斧を前に突き出して口を開く。
「おっと、これ以上近づくと危ないぜ?」
その言葉に僕は立ち止まる。ウェーンさんは、手に力を込める。
すると、黄色で丸い形をした謎の種を生成した。その種を空中に投げると、
「いくぜ! 避けないと怪我するぜ!
『束縛する植物
』!」
斧をバットのように扱い、僕に向かって打ち込んできた。
まるで野球のバッティング練習の光景のようだ。
その種を避けると、地面に勢いよくぶつかる。
数秒経つと、その種から鳥籠の形をした植物が生えてきた。
植物で拘束する能力か。厄介な能力だとは思う。
まあ、当たらなかったらいいだけの話だ。と、思っている内にウェーンさんがこちらに近づいている事に気づいた。
あれは囮だったのか。脳筋だと思っていたのだけど、意外と頭脳プレイをしてくる。
「おらぁ! 潰れろぉ!」
振りかざしてきた斧を僕は後ろに下がって避ける。斧は地面に突き刺さった。
僕はその斧を踏みつけ、抜けないようにした。そして剣脊の方で、連続で攻撃をおこなった。
「グハッ! なかなか、いい攻撃だな。だが、剣身で攻撃しないと、俺様を倒せんぞ。
次は俺の攻撃を……うおぉ。お? あれ? 斧が抜けん。チビのくせにどんな脚力をしてやがる」
「僕の仲間が舐められっぱなしってのは気分が悪いんでね。少し意地悪させて頂きます。まだまだいきますよ!」
僕は攻撃を続けた。頭が悪いのか、何かの意地なのか、抜けない斧を引き抜こうとする。
これじゃあ僕がイジメいるみたいじゃないか。
そして、何度か攻撃をおこなった後、肘打ちを入れた。
「ぐおっ! 俺の筋肉にダメージを与えるとは。やるなぁチビ。
俺も負けるわけにはいかねぇからよぉ。手加減はしねぇぞぉぉ!!!」
ウェーンさんは斧から手を放し、雄叫びをあげながら、拳を振りかざしてきた。
僕はその拳を避けて、ボディにカウンター攻撃をいれた。ウェーンさんも負けじと、僕に殴りかかってくる。
まるで、ボクシングの格闘技の試合をしている感覚になる。
負けたくないと強い思いが、僕の中に眠っていた、闘争心が
今、目覚めようとしているようだ。
(楽しい。そして負けたくない。戦うことを楽しめるなんて、こんな感情まだ僕の中にもあったんだ)
僕とウェーンさんの攻防は数分に亘った。息を切らしながらウェーンさんが口を開く。
「はぁ……はぁ……。こんなに熱くなる殴り合いは久しぶりだ。面白い。ただのチビだと思ったら、意外とガッツあるじゃねぇか。俺は……負けねぇぞぉ!!!」
「僕も負けるわけにはいかない。勝つのはこの僕だ! 決着を付けましょう!」
「望むところだぁぁぁ!!!」
再び僕たちは、激しい攻防戦に入る。そして今、決着が付こうとしていた。
ウェーンさんが思いっきり殴りかかってきた瞬間。僕はその拳を流し、蹴りをいれ態勢が崩れたところに、顎にアッパーを入れる。
ウェーンさんは後ずさり、フラフラしながら、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「ま、まだだ……。ここで俺が倒れるわけにはいかない」
「いえ、もう終わりです。今の一撃で……」
僕が言いかけると、ウェーンさんは倒れてしまった。そして、ドリアード様が近づいてきて言った。
「親善試合第三試合……勝者トワ! そして,二回勝利した、人間族の勝ちよ。エルフの民よ、これで彼らの実力が分かったわね」
ドリアード様の言葉にトゥビーさんが反応した。
「はい、私は満足ですよ。皆様お疲れ様でした。試すような真似して申し訳ありませんでした」
「いえ、僕も楽しかったですよ。エルフの皆さんもお疲れ様でした。ーーウェーンさん、いい試合をありがとうございました。
僕にもこんな気持ちが残ってたことを確認できました。ありがとうございました」
声をかけたが本人は気絶をしているようだ。僕はみんなの元へと歩きだした。
「ギルドマスターー! お疲れ様です! 勝利おめでとうございます!」
「ありがとうございます。ヒロさん、また、ギルドマスター呼びですか。いい加減辞めてくださいよぉ。言われ慣れてないので恥ずかしいんですよ」
「ヒロさんお疲れ様です。いい試合でした」
「ジークさんありがとうございます。なんとか勝ててよかったです」
「いてっ!」
背中に痛みがはしった。ーーザーハックさんだ。満面の笑みでこちらを見て言った。
「俺たちの勝利だ! 坊主やるじゃねぇか! いいガッツだった! 見ていて楽しかったぞ!」
「ありがとうございます。あと、背中を叩くのはやめて下さいよー。結構痛いんですから」
ザーハックさんはガッハッハーと高笑いを上げ上機嫌のまま、エルフたちの元へと去っていった。
みんなから、労いの言葉をもらい、ドリアード様の元へみんなで向かった。
「では、みんなを回復させるわね」
ドリアード様がそういうと、僕たちを回復してくれた。
痛みがあった箇所もなんとも、なかったのように回復した。
だけど、疲れまでは回復しないらしい。まあ僕はまだまだ動けるけども。
体力を回復した、ウェーンさんが立ち上がり、僕を見るなり言葉を発した。
「チビ……いや、トワだったな。いい試合だった。またやろう。
次は負けない。そして、数々の失言を撤回する。申し訳なかった。俺らと一緒に、魔物退治一緒に戦ってくれるか?」
「こちらこそ。いい試合でした。僕も久しぶりに熱くなりました。僕も負けるつもりはありませんよ。
僕も意地になってた部分がありました。失礼しました。もちろん! 一緒にエルフの里を守りましょう」
そして、僕とウェーンさんは固い握手を交わした。
周りから、盛大な拍手の音が鳴り響いた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる