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第二章 王国奪還編
第23話 ジークとリーフィス王女
しおりを挟むここは通さないと、挑んできたプレイヤーを、次々と薙ぎ倒し進み、ルルード城の入り口まで着いた僕たち。
ジークさんのステータスを確認したら、レベルは18で職業はランサーだった。
この近くにいる敵プレイヤーのレベルは平均して10~14レベルくらいが多い。
お世辞にもレベルが高いとは言えない。僕が言えたことでもないけど。
あんまりレベリングなどは行っていないのだろうか?
走りながらジークさんが話す。
「アルダー国王がいる大広間までもうすぐです」
焦げた匂いや錆びた匂いなどがしてくる。
金属同士がぶつかり合う甲高い音も聞こえる。誰か戦っているのだろうか。
「次の部屋を左に曲がった所が目的地。あそこにアルダー国王陛下がいらっしゃいます」
「あれですね。了解です」
目的地である場所に辿り着くと、長剣を持った中年の男性が息を切らしながら立っていた。
茶髪のその強面の男性は、赤色をベースにし、剣の紋章だろうか。金色に輝いている。かなり高そうな鎧だ。
「アルダー国王! リーフィス王女! ご無事ですか!?」
「ジーク殿か。無事であったか。そちらの者は?」
「ルナたちと一緒にこの国まで同行してくださった方です。もう一人仲間がいるとの事です」
「初めまして、トワと申します。以後お見知り置きを……」
「うむ、そのトワという者は信用出来るのか? 見たところ、プレイヤーのようだが。敵ではないのか」
「ルナが信用出来る方と言っておりましたので、俺はルナやトワさんを信じます」
「そうか。失礼なことを言ったな」
「いえ、無理もありません」
周りを見渡すと、プレイヤーの姿はない。アルダー王が一人で倒したのかな。
「アルダー国王。城内にいた敵プレイヤーはこれで全部ですか?
ここら辺にいるプレイヤーは以前より弱く感じます。レベル20前後のプレイヤーも減っているようですが」
「ガーッハッハー! 向かってくる奴はわしが全員、教会送りにしてやったわ!
おかげでレベルも大分上がったぞ」
「おめでとうございます。それでアルダー国王。リーフィス王女たちはご無事なのでしょうか?」
「あぁ。リーフィスならシャロたちと裏におるぞ。そなたが来られたなら安心じゃ。
おーい。リーフィスー。もう出てきても大丈夫だぞ」
「はい、父上」
名前を呼ばれて出てきた金髪の女性は、胸元が見える白いドレス。
胸まで届く長く艶やかな髪の毛。茶色の瞳をパチパチとさせこちらを見つめていた。
「リーフィス王女! お怪我はありませんか!?」
「はい。私は無事ですよ。ジーク様こそご無事でしたか? 追われてると聞きましたが。
あら、一人増えてますね。初めまして、私はルルード王国の第一王女。リーフィス・ルルードです」
「良かった! 僕は全然大丈夫です! リーフィス王女のためなら、例え火の中だろうと、水の中だろうと、永遠に続く闇の中だろうと! 必ずあなたさまをお守りします!」
「うふふ。ありがとう。心強いわ」
ジークさんのキャラが崩壊している。一人称も俺から僕に変わっているし。
セリフもなかなか変だし。もしかして、ジークさんはリーフィスさんの事が好きなのかな?
僕はリーフィス王女に挨拶の言葉を言う。
「お初にお目にかかります。リーフィス王女。自分はプレイヤーのトワと申します。以後お見知り置きを」
「よろしくお願いしますね」
リーフィス王女は優しく微笑んでくれた。
「では、ジーク殿。今の状況の確認と今後の対応について話し合おうではないか」
「その必要はない」
その言葉に大広間にいる人たちは静まり返る。
「必要はないとはどういう事だ。説明してもらおうか」
アルダー国王が強めの口調で問う。
「今の状況? 今の状況わなぁ、アーティダル王国へ援軍に行った現住人共の軍隊はドミニデスによって崩壊。
今後については、このルルード王国はこの俺様によって完全に滅びお前らは俺の奴隷となる。ぐははは」
後ろを振り向くとそこには、見覚えのある人物がこちらへ歩いて向かっていた。
「紅葉さん!? なんでここに?」
「なんでもいいだろ。てか、お前見たことがあるな。…………あぁ、思い出した。
ギルド対抗戦の時に橘にボコられていたガキか。
お前こそなんでここにいるんだ? ドミニデスに言われたのか?」
「言われてないです。僕はプレイヤーの悪行を止めに来ました。
なんで酷いことするんですか? 早くこんなことやめて下さい!」
「悪行? 酷い? 何が悪いのか俺には分からないな。ゲームは自由に、楽しくプレイするのがプレイヤーの特権だろ?
ゲームの説明書にも人を殺してはいけないとか、支配してはいけないとか物を壊してはいけないとか書いてなかっただろ?
俺らは楽しく自由にプレイしているだけだ! お前のようなガキにそんなことを言われる筋合いはないはずだ」
確かに説明書にはそんな事は書いてはなかった。書いてなくてもいい事悪い事くらいの区別はつくと思うんだけどな。
「説明書に載っていなかったら何してもいいと思っているんですか? いい大人なんだから、善悪くらいつくでしょ!?」
「ほぉ? この俺に説教だと!? 生意気なガキだ。捻り潰してやる。
いいか、俺に指図するな! ガキは黙って大人の言う事を聞いてればいいんだよ!」
「僕が紅葉さんに指図をしてはいけないとかガキは大人の言う事を聞かなければならないって説明書に書いてあるんですか? 書いてないですよね?」
イラッとした僕は、紅葉さんに楯突いた。
「あーー! うぜぇ! ぶっ殺してやる!!!
お前を教会送りにしたあと、ここの国を俺の物にしてやる。かかってこいガキ」
少し挑発気味に言ってしまったので、紅葉さんは激怒したようだ。
すると、アルダー国王が落ち着いたトーンで。
「二人とも下がってなさい。ここはルルード王国。俺に任せてもらおう。
……今のパパかっこいいよね? 国王っぽいよね? シャロやナタリーにも見せたかったなぁ……」
最後のボソボソ言葉は心の声なのだろうがダダ漏れである。
「分かりました」
「ところでトワさん、彼とは知り合いなのか?」
「知り合いというか、一度ギルド対抗戦で戦った事があるくらいですね」
「ギルド対抗戦? なんだいそれは」
ジークさんにギルド対抗戦の説明をすると、興味を持ったのか、俺もやってみたいと言ってきた。
ドミニデス帝国からアーティダル王国を取り戻す事が出来たら一緒にやってみようと約束した。
「ジジイが相手か。確か国王だったな。お前を倒して俺の国にしてやる」
「お主の国になった所で国民はついてこないだろう。国民の信頼のない国など国とは言えん。
それはただのおままごとだ。分からせてやる。かかってくるがよい」
「自惚れるなよ、ジジイが! 行くぜ!」
相変わらず紅葉さんからは小物臭がすごい。
アルダー国王と紅葉さんレベルは同じ28のようだ。レベル差はない。
が、紅葉さんの職業はパラディンで、アルダー国王の職業はソードマスター。パラディンはナイトの中級職で、ソードマスターはナイトの上級職だ。
普通に考えれば練度の高さや取得できるスキルやステータスに違いが出てくるはずだ。
疲れているだろうけどひとまずアルダー国王に任せようと思う。今は僕にしか出来ない事を優先したい。
「ジークさん。ルナさんたちと合流はまたでいいですか?
紅葉さんの話が本当なら、アーティダル王国に向かった人たちが心配です。
僕の仲間とルナさんたちには先に向かってもらおうと思うのですが。ジークさんも先に一緒に向かいますか?」
「いや、トワさんを一人にするのは失礼だし、アルダー国王の前だしな。
状況が状況だから仕方ない。会えないのは寂しいが我慢するよ。
その仲間には、ルナたちを連れて、アーティダル王国に向かってもらおう。連絡頼めるかな?」
「分かりました。では、先に向かってもらいますね。紅葉さんを倒して、僕たちも向かえるようにしましょう」
「えぇ。頼みます」
僕はヒロさんにアーティダル王国に向かった人が心配だから、先に向かってて欲しいことと、後から僕たちも合流するとと文章で伝えた。
ヒロさんから、分かったー。先に向かっておくね。無理はしないでね。と返事が返ってきた。
「先に向かってくれるそうです」
「そうか。それは安心だ。俺たちは周りのやつを相手しよう」
入口にはさっきまでいなかった、プレイヤーたちがぞろぞろと姿を現した。どこから湧いてきたんだろう。
回数は少ないがザーハックさんとの戦闘訓練のおかげで、少しは対人戦ができるようになった。
人を斬る事には躊躇ってしまうが、気絶は狙えるようになった。
プレイヤーたちを片付けた僕たちは、アルダー国王の方を確認するが、あんまり戦いが進んでいないようだ。
「アルダー国王! こちらは片付きましたが、加勢致しましょうか?」
「大丈夫だ。見ておれ、ソードマスターの戦いを。王としての強さを」
「分かりました。勉強させてもらいます」
僕も同じ武器種を使う者として、色々勉強になると思う。
ルルード王国を守るため、アルダー国王は紅葉さんの前に立ちはだかる。二人の戦いはどうなっていくのだろうか。
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