32 / 69
第四章 弱小領地の攻撃
第32話 鉄のアイテム
しおりを挟むジョブ『商人』の領民は、現在10名。
タルル、プルルの兄妹もそのうちのふたりである。
「ガゼット領の債権1500万Gは、商人ギルドへの債権に振り替わりました」
とタルル。
ゲーム内では1Gは1Gとしか表記されなかったが、現実では金融というものが存在する。
そもそも1500万Gの小切手は、ガゼット領の賠償金として書かれた借用書だ。
しかし、ただのガゼット領の借用書では価値がないとまでは言わないが、使えるところが限られる。
そこで、商人ギルドへ『1500万の小切手』を譲り渡して、代わりに俺たちは『商人ギルドへの債権額』に+1500万してもらうというわけ。
一方、商人ギルドは彼らの帳簿上にあったガゼット領の債権額にマイナス1500万Gする。
結果だけ見れば、(商人ギルドに対する)ガゼット領の債権額がダダリの債権額へ移ったことになる。
これで賠償金の支払いも「決済された」ということになるのだ。
小切手とはそういうもの。
こうした大口の取引ではG金貨よりもこの『商人ギルドへの債権額』を譲り渡す形で行われるらしい。
だからタルルは王都から1500万Gの金貨をかついで来なくてもよいし、王国全体の経済で言えば物理的に存在する金の量をはるかに超えるGが“債権額”として流通するのである。
「ところでタルル。お前、ひとりで帰ってきたのか?」
決済の話が済むと、俺は気になっていたことを尋ねた。
「はい。ナディア様はまだ王都にいらっしゃいます。妹のプルルはお供として残してきました」
「ずいぶんと長い時間がかかるんだな」
「実は……女王様への謁見がなかなか叶わないようで」
なに……?
「そういうことはよくあるのか?」
「いいえ、どうやら尋常ではないようです。ナディア様がおっしゃるには城内に何か問題が起こったのかもしれない、とのこと。そのことを伝えにボクだけひとりで帰って来たのです」
なるほど。
「わかった。ご苦労だったな」
そうねぎらうとタルルは館を退出した。
俺はそれからちょっと考えて、卓上のベルを鳴らす。
「お呼びでやんすか?」
すると、天井裏から羽目板をはずしてジョブ『忍者』のリッキーがあらわれた。
「ああ。ちょっとお前、王都へ行ってきてくれないか?」
「王都に、でやんすか?」
「どうにも少し様子がおかしいらしい。心配しすぎかもしれんけど、念のためだ」
「御意でやんす」
リッキーはそう言って『シュンッ……』と姿を消した。
◇
鉄は生産され、鉄のアイテムへと形成され始めている。
鉱山から原石を堀り、それを錬金工房で『鉄の延べ棒』へ精製するワケだが……
原石はひと月で、シャベル64杯ぶん入った木箱が4つぶんほど採れる。
64杯×4箱。
そいつを錬金工房で精製すると延べ棒は4つになった。
つまり、『鉄の延べ棒』の生産数はひと月に4つ。
あれから三月たっているので、鉄の延べ棒は×12手に入っている。
これを3人の鍛冶屋へ持っていき鉄のアイテムを作ってもらう。
「アルト様。鉄のアイテムを作るのに必要な『延べ棒』はそれぞれこんな具合ですぜ」
・鋼鉄の矢じり(0.05)
・鋼鉄のナイフ(0.5)
・鋼鉄のつるはし(1)
・鋼鉄の剣(1)
・鋼鉄の槍(2)
・鋼鉄のヘルメット(2)
・鋼鉄の盾(2)
・鎖かたびら(3)
・鋼鉄のプロテクター(4)
他にも建材や食器にも鉄を使うことはできるらしい。
もっと多くの鉄を生産できるようになったらそんな余裕も出て来るだろう。
だが、今優先すべきなのは上記のような武器だった。
鉄の延べ棒はひと月に4つしか生産されないからよく考えて配分しないと。
また、防具はダメージを減らしてくれるので魅力的だが、より多くの鉄を必要とする。
つまり、まだ多くの個数を作ることができないので、戦闘員のごく一部にしか装備させられない。
さしあたっては個数が多く作れてコスパがよそうな『剣』を作って全体の攻撃力を上げていこうと思う。
そう、そもそも。
このあたりには、兵の武器に鉄を使っている領地は少ないんだよな。
この前攻めて来た北のガゼット領が良い例で、木や竹、よくても石の武器ばかりだった。
鉄の剣があるというだけでかなりのアドバンテージを取れるはず。
俺は、この三か月間でできた鉄の延べ棒12のうち、7個を『鋼鉄の剣』、5つを『鋼鉄のつるはし』にした。
そして、つるはしが増えたぶん、掘削者を5人増やしておく。
これでひと月に採れる原石も増えるはずだ。
―――――――――
領地:ダダリ
領主レベル:4
領土:1750コマ
人口:750
兵力:90
魔法:25→27
産業:農75→92 工105→175 商15→22
施設:家屋150 畑70コマ 水車1 訓練所1 祠1 魔法研究所1 鉄の錬金工房1
資源:→鉄
外貨:+1960万G/-787万G
内貨:――
―――――――――
449
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~
おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。
異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。
他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。
無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。
やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。
実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。
まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。
※カクヨムにも掲載しています
怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~
服田 晃和
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。
最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。
今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。
しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。
どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。
また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。
『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』
こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。
『ちょい悪徳領主』になってやると。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる