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第二章 戦争に駆り出されます

第10話 魔法

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 そして、初夜があけた……。

 でも俺はヘトヘトで、二度寝、三度寝を繰り返し、昼になってようやく起きた。

 仕方あるまい。

 こっちの身体はひとつ、相手は16歳の花嫁と15歳の花嫁のふたりで、結婚の夜にどちらかを放っておくなんてことはできないのだから。

「やれやれ、先が思いやられるぜ」

 頭をガシガシとかき、ベッドから身を起こして窓から庭を見下ろす。

 すると花嫁たちはすでに起き出しており、弟たちや遊びに来た村の子らと警泥ケイドロみたいな遊びにキャッキャと駆け回っていた。

 のんきなもんだ。

「ま、仲良くしてんならよかったワ」

 俺は着替えを済ませて顔を洗うと、ひとりで人気ひとけのない荒地あれちの方へ出かけて行った。

 そう。

 嫁が二人できたので、俺はもう魔法が二つ使えるはずだから。

―――――――――
領主レベル:3
称号:転生領主
HP:227
MP:83
ちから:127
まもり:111
魔法:亜空間F(New!)、ほのおF(New!)▽
特殊技能:ステータス見、痛覚耐性、移動速度2倍
授与可能ジョブ:▽
―――――――――

 で、魔法が使えるとなれば試してみたくなるというのが異世界転生者の人情ってヤツだろ?

「こおおおお……」

 俺は風の吹く岩場で構えを取り、魔力をためる。

「……闇の炎に抱かれて消えろ!」

 そう叫んで火魔法『ほのお』を放った。

 すると手からゴルフボールくらいの火の玉が放たれる。

 ひゅるるるる……ジュっ!

 火の玉は岩へ当たって表面を少し焦がした。

 しょ、しょぼ……

 Fランクの魔法は確かにスライムすら一発で倒せないものだったけど、実際に見るとこんなに弱いんだな。

 それから亜空間。

 ゲームでは『もちもの』欄が増える魔法なのだけれど、現実(?)で使ってみると、どらゑもんのポッケとか、アイテムボックスとか、そんなふうな能力によく似ているようだ。

 自分だけの亜空間を作り出し、アイテムを収納。

 いつでも引き出せるというワケ。

 ただし、こちらもFランクなので、収納できるアイテムの量は手さげカバンくらいの容量しかない。

 これら『ほのお』の威力や『亜空間』の容量を増やすには、魔法のランクをFからEへ、EからDへとアップさせていかなければならなかった。

 で、プレイヤーである領主の魔法のランクは、その領土の広さに応じて上げることができる。

 ステータスで魔法の詳細を見ると、

―――――――――
【魔法】
消費可能コスト600/600
・ほのおF(0%)
・亜空間F(0%)
―――――――――

 とある。

 現状、ダダリの領地は最初の450コマと新たに獲得した150コマを合わせて、600コマだ。

 だから消費可能コストは600。

 このコストを費やして100%まで上げれば魔法ランクがひとつあがり、性能が伸びるのであった。

 さっそくコストを消費して魔法ランクを上げてみよう。

 まず、亜空間にコスト100を投入だ。

・亜空間F(50%)

 すると、その半分まで%が伸びたので、もう100投入する。

・亜空間E(0%)

 よし、Eランクになった。

 ためしにそこらに転がっている石を収納してみる。

 すると、今度は大きな段ボール箱くらいの量を込めることができた。

 続いて、『ほのお』も200コストを費やし、Eランクに上げてから放ってみる。

「闇の炎に……(略)」

 すると、こちらは火の杖で起こる炎くらいの魔法が放たれた。

 うん。

 魔法ランクを上げれば、ちゃんと効力も上がってくれるようだな。

 残りのコストは200。

 ならばどちらか一つの魔法をもう1ランク上げられるように思われるかもしれないが、魔法の成長は上位ランクへ行けば行くほど多くのコストが必要になる。

―――――――――
【魔法】
消費可能コスト0/600
・ほのおE(0%)
・亜空間E(50%)
―――――――――

 最終的にはこんな感じになった。

 さて、ここでTOLにおける領主(プレイヤーキャラ)の魔法についてまとめてみよう。


1、魔法は、嫁一人につき一つ覚えることができる。

2、嫁は『領地のあらゆる成長ファクター』のたびに低確率抽選されており、内部でフラグが立ったら増える。

3、MPは、魔法系ジョブの領民の総MPによって伸びる。

4、魔法の効力はF~SSSまでランクがある。

5、領土を広げると魔法ランクの成長コストを得る。


 この世界でも2以外はTOLのシステムを踏襲しているのが確認できている。

 いや、もしかしたら2も……

「あ、アルト!」

「おかえりなさい」

 家に帰ると、リリアとノンナが左右から寄り添って迎えてくれた。

「あ……ああ」

 そのぬくもりを感じると少し寂しくなる。

 だって、もしかしたらこの世界の何らかのシステムで低確率抽選が行われ、その反映で二人と結婚する運命が決まったのかもしれないのだ。

 もしそうだったとしたら、この世界で人間の『意志』とはなんなんだろう?

「あれ? 元気がないわね?」

「なにかあったの?」

「いや、別に……」

 でも、そんなことを考えても仕方ない。

 そんなこと、誰も明らかにすることはできないのだから。

「なんでもないよ。それより二人とも……今夜も寝かせねえぜ」

 俺がそう宣言すると、少女たちは頬を赤らめて嬉しそうに尻をよじっていた。

 いずれにせよ、領地が成長すれば俺の魔法も成長する。

 結婚の騒動で『暴れトロル』を倒した戦果を領地に反映させてないから、明日からまた内政だな。

 なんて思って気持ちを切り替えていた時だ。

「アルト。ちょっといらっしゃい」

 おふくろに呼ばれる。

 深刻というほどではないが、真面目な声だ。

「どうした。何かあったのか?」

「ああ。さっき王都から使者が来てね」

 おふくろは俺に一通の書状を手渡した。

「これは……早すぎだろ?」

 俺は書を開くと思わずそうこぼす。

 書状は王都からの召集。

 ――つまり戦争である。

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