10 / 69
第二章 戦争に駆り出されます
第10話 魔法
しおりを挟むそして、初夜があけた……。
でも俺はヘトヘトで、二度寝、三度寝を繰り返し、昼になってようやく起きた。
仕方あるまい。
こっちの身体はひとつ、相手は16歳の花嫁と15歳の花嫁のふたりで、結婚の夜にどちらかを放っておくなんてことはできないのだから。
「やれやれ、先が思いやられるぜ」
頭をガシガシとかき、ベッドから身を起こして窓から庭を見下ろす。
すると花嫁たちはすでに起き出しており、弟たちや遊びに来た村の子らと警泥みたいな遊びにキャッキャと駆け回っていた。
のんきなもんだ。
「ま、仲良くしてんならよかったワ」
俺は着替えを済ませて顔を洗うと、ひとりで人気のない荒地の方へ出かけて行った。
そう。
嫁が二人できたので、俺はもう魔法が二つ使えるはずだから。
―――――――――
領主レベル:3
称号:転生領主
HP:227
MP:83
ちから:127
まもり:111
魔法:亜空間F(New!)、ほのおF(New!)▽
特殊技能:ステータス見、痛覚耐性、移動速度2倍
授与可能ジョブ:▽
―――――――――
で、魔法が使えるとなれば試してみたくなるというのが異世界転生者の人情ってヤツだろ?
「こおおおお……」
俺は風の吹く岩場で構えを取り、魔力をためる。
「……闇の炎に抱かれて消えろ!」
そう叫んで火魔法『ほのお』を放った。
すると手からゴルフボールくらいの火の玉が放たれる。
ひゅるるるる……ジュっ!
火の玉は岩へ当たって表面を少し焦がした。
しょ、しょぼ……
Fランクの魔法は確かにスライムすら一発で倒せないものだったけど、実際に見るとこんなに弱いんだな。
それから亜空間。
ゲームでは『もちもの』欄が増える魔法なのだけれど、現実(?)で使ってみると、どらゑもんのポッケとか、アイテムボックスとか、そんなふうな能力によく似ているようだ。
自分だけの亜空間を作り出し、アイテムを収納。
いつでも引き出せるというワケ。
ただし、こちらもFランクなので、収納できるアイテムの量は手さげカバンくらいの容量しかない。
これら『ほのお』の威力や『亜空間』の容量を増やすには、魔法のランクをFからEへ、EからDへとアップさせていかなければならなかった。
で、プレイヤーである領主の魔法のランクは、その領土の広さに応じて上げることができる。
ステータスで魔法の詳細を見ると、
―――――――――
【魔法】
消費可能コスト600/600
・ほのおF(0%)
・亜空間F(0%)
―――――――――
とある。
現状、ダダリの領地は最初の450コマと新たに獲得した150コマを合わせて、600コマだ。
だから消費可能コストは600。
このコストを費やして100%まで上げれば魔法ランクがひとつあがり、性能が伸びるのであった。
さっそくコストを消費して魔法ランクを上げてみよう。
まず、亜空間にコスト100を投入だ。
・亜空間F(50%)
すると、その半分まで%が伸びたので、もう100投入する。
・亜空間E(0%)
よし、Eランクになった。
ためしにそこらに転がっている石を収納してみる。
すると、今度は大きな段ボール箱くらいの量を込めることができた。
続いて、『ほのお』も200コストを費やし、Eランクに上げてから放ってみる。
「闇の炎に……(略)」
すると、こちらは火の杖で起こる炎くらいの魔法が放たれた。
うん。
魔法ランクを上げれば、ちゃんと効力も上がってくれるようだな。
残りのコストは200。
ならばどちらか一つの魔法をもう1ランク上げられるように思われるかもしれないが、魔法の成長は上位ランクへ行けば行くほど多くのコストが必要になる。
―――――――――
【魔法】
消費可能コスト0/600
・ほのおE(0%)
・亜空間E(50%)
―――――――――
最終的にはこんな感じになった。
さて、ここでTOLにおける領主(プレイヤーキャラ)の魔法についてまとめてみよう。
1、魔法は、嫁一人につき一つ覚えることができる。
2、嫁は『領地のあらゆる成長ファクター』のたびに低確率抽選されており、内部でフラグが立ったら増える。
3、MPは、魔法系ジョブの領民の総MPによって伸びる。
4、魔法の効力はF~SSSまでランクがある。
5、領土を広げると魔法ランクの成長コストを得る。
この世界でも2以外はTOLのシステムを踏襲しているのが確認できている。
いや、もしかしたら2も……
「あ、アルト!」
「おかえりなさい」
家に帰ると、リリアとノンナが左右から寄り添って迎えてくれた。
「あ……ああ」
そのぬくもりを感じると少し寂しくなる。
だって、もしかしたらこの世界の何らかのシステムで低確率抽選が行われ、その反映で二人と結婚する運命が決まったのかもしれないのだ。
もしそうだったとしたら、この世界で人間の『意志』とはなんなんだろう?
「あれ? 元気がないわね?」
「なにかあったの?」
「いや、別に……」
でも、そんなことを考えても仕方ない。
そんなこと、誰も明らかにすることはできないのだから。
「なんでもないよ。それより二人とも……今夜も寝かせねえぜ」
俺がそう宣言すると、少女たちは頬を赤らめて嬉しそうに尻をよじっていた。
いずれにせよ、領地が成長すれば俺の魔法も成長する。
結婚の騒動で『暴れトロル』を倒した戦果を領地に反映させてないから、明日からまた内政だな。
なんて思って気持ちを切り替えていた時だ。
「アルト。ちょっといらっしゃい」
おふくろに呼ばれる。
深刻というほどではないが、真面目な声だ。
「どうした。何かあったのか?」
「ああ。さっき王都から使者が来てね」
おふくろは俺に一通の書状を手渡した。
「これは……早すぎだろ?」
俺は書を開くと思わずそうこぼす。
書状は王都からの召集。
――つまり戦争である。
550
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~
おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。
異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。
他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。
無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。
やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。
実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。
まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。
※カクヨムにも掲載しています
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる