上 下
281 / 296
最終章:知識の街

280話

しおりを挟む

 親父はこの期にカインへ本格的に当主の仕事を移動させようとしてるらしい。
 カインの武力の実力はBランク冒険者やAランクの間位は既にあるので充分と判断したのだろう。

 ハビスも最近はカインの領主教育に着きっきりになっていた。
 当主は時に冷酷な判断もしなければならない。

 だからこそ今回の密偵の情報抜きはカインに任せられたんだと思っている。

 しかしカインは書類仕事や武力は得意でもそういった判断や切り替えは少し苦手っぽいのでハビスも厳しめに教育していた。

 祭りから1週間経ったある日、クロス家に縁のある人間が集められた。
 親父は全員が集まると立ち上がり話し始める。

「皆、集まってくれてありがとう。
 この街が完成して2年から3年が経ったらカインに正式に家督を譲ることにしたよ」

 満面の笑みでそう言う親父に顔を強ばらせたのはカインだが
 俺は娘がいる街が隣街になったんだから当然だろうなーなんて思っていた。

「それと今回の件で知識の街からの物資提供と支援金の送金。
 そしてケビンからかなりの額の寄付があった。

 そのお金だけで領地の経営は2年は持つだろう。
 カインよ、それまでに税金をどれくらい民にかけるのかを判断して行くように」

「はい!分かりました!」

 そして俺の方を見ると頭を下げた。

「ケビンはクロス家の窮地に私財を投じてくれて感謝する。
 これからも友好的で居てくれると助かる」

 俺はそんな言葉を聞き流しながら

「親孝行の1種だと思ってくれ、貴族にはなりたくねぇし興味もないけれど
 それくらいはさせてくれよ。カインその代わりいい街つくれよ?」

 にっこりと笑う母上達と親父。
 カインはぎゅっと拳を握りしめて

「あぁ!  任せろ!」


 ここにセラやキャロは流石に居ない。
 今頃街づくりの作業中だろうね。

 下水道を作り、蓋をしてガッツリ固めた(アースさんが)土を土台にしてから家を建てるを繰り返ししていて飽きて来た子達には街の外に出て魔物を狩りに行ってもらい。

 自分たちの魔法行使の感覚の違いを確認させる。
 するとまた同じような作業でも非常に集中してやってくれるのだ。

 最近は5歳以上の子供達も真似したり教えて貰おうと直接生徒達に頼っていた。
 冒険者ギルドにはこっそりと俺の方からこの街と知識の街で依頼をかけていたので徐々に人が集まり始めていた。

 出来ればこちら側にも冒険者が流れてくれれば良いなぁと思っていたりもする。
 この街には低級ダンジョンが複数あることが事前に分かっているので低ランク冒険者が多く流入してくることを願っていた。

 それに昔この街に住んでいたという冒険者や人がこの街に出戻りもし始めていた。
 その中には中規模な商会も含まれていて楽しそうな顔をしていた。

 家や土地の振り分けは既に大まかには終わっている。
 商会や職人達の相手はアレンサリーナさんが行っている。

 正式にこの街の商業ギルドマスターになるようだ。

 農業の方には同族が権力者として居るせいかエルフ族が多く集まっていた。
 俺とセラは数日前に協力して転移してきて世界樹の土を持ち帰って少量ずつ農業区に撒いて土に混ぜ込んだ。

 そこまでするとクロス領でも農業をしていた人達は早速とばかりに畑を耕し始めていた。

 水源は井戸を掘ったのと近くから川の水を引いて来ていた。
 水車をドワーフ族に頼んだら簡単に4つも作ってくれた。

 しかも俺はよく分からないので適当に

「小麦を粉にしたいので石臼でひく時だけ使える様にしたい」

 と頼んだらレバー1つで回すか回さないかを選べる方式になっていた。
 流石はドワーフだと思うわ、魔法的な物は一切使わずにカラクリだけでそれを実現させるのだからな。

 そうして1ヶ月も経つ頃にはこの街の人口や建物自体も様変わりしていた。
 俺は勝手にミカサ商会の支部も作っていたのでアレンサリーナさんからミカサ商会の人に連絡をしてもらっていた。

 そもそも布団工場は既に動いているのだ。
 ドワーフが簡単に水車のカラクリを作ったことにイメージを働かせて
 スリーピングシープの毛を洗うのは水車の力を利用して脱水や乾燥させるのは魔道具を使っていた。

 この街の魔道具師に製作を依頼したので壊れたりしても修理や買い直しはできるように既に手を回していた。

 そしてその乾燥させる時に使う魔法陣を転用すれば同じ毛を乾かす道具が作れるよ?
 と伝えたら保証契約時の説明を求められた。

 アレンサリーナさんからジト目で見られたのは言うまでもない。
 そして布団に関しては寝具なので魔物の毛や羊毛、そして綿を使って作る寝具として保証契約を変更した為、類似品は出ないだろうな。

 まぁ最高級品を作り上げる人は出るだろうけどね。

 そうして領主館をガッツリど真ん中に作ってやろうと基礎を皆で作ってる最中にこの街の製作に関わっている上層部がいきなり集められた。

 会議室にはフードを被った人が3人居る。
 全員がその人達に注目しているとフードの人がそのフードを取ると皇帝陛下だった。

 反射的に貴族や騎士はひざまづいたけど俺やSランク組は一切気にしない。

 その様子に親父が笑っていた。親父も一切膝をつかなかったのだ。

「クロス家やその協力者達よ、今回のことは皇族の力のなさが原因だった。
 申し訳なかったな。それと大変よい街を作っておるな。それだけでこの街が出来上がって良かったと思っている。
 アレクサンダーもすまなかった」

 そう言って頭を下げたのだ、これには親父もびっくりしていたけど俺は水仙国王のことを思い出しここが既に他国として扱っているので
 素直に謝罪と頭を下げれたんだろうなと予想した。

 それと後ろの2人は皇女達だった。
そのうち知識の街に留学する予定だから今回一緒に来たのだろうね。

 親父と皇帝陛下は臣下と王ではなく、学園の同級生として話しているようなので他の人が気まずそうなので2人には酒を渡してタビを呼ぶ。

「どうされました? ケビン様?」

「2人の皇女の護衛と街案内を頼む」

「かしこまりました。皇女殿下様、私はタビと申します。
 街案内兼護衛を仰せつかりましたのでよろしくお願い致します」

 そう言うと2人を連れていった。
 緊張していた人達は皇族が居なくなった瞬間安堵していた。

 これから君達の領主一応国主になるんだけどな?
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)

丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】 深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。 前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。 そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに…… 異世界に転生しても働くのをやめられない! 剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。 ■カクヨムでも連載中です■ 本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。 中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。 いつもありがとうございます。 ◆ 書籍化に伴いタイトルが変更となりました。 剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~ ↓ 転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...