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最終章:知識の街
280話
しおりを挟む親父はこの期にカインへ本格的に当主の仕事を移動させようとしてるらしい。
カインの武力の実力はBランク冒険者やAランクの間位は既にあるので充分と判断したのだろう。
ハビスも最近はカインの領主教育に着きっきりになっていた。
当主は時に冷酷な判断もしなければならない。
だからこそ今回の密偵の情報抜きはカインに任せられたんだと思っている。
しかしカインは書類仕事や武力は得意でもそういった判断や切り替えは少し苦手っぽいのでハビスも厳しめに教育していた。
祭りから1週間経ったある日、クロス家に縁のある人間が集められた。
親父は全員が集まると立ち上がり話し始める。
「皆、集まってくれてありがとう。
この街が完成して2年から3年が経ったらカインに正式に家督を譲ることにしたよ」
満面の笑みでそう言う親父に顔を強ばらせたのはカインだが
俺は娘がいる街が隣街になったんだから当然だろうなーなんて思っていた。
「それと今回の件で知識の街からの物資提供と支援金の送金。
そしてケビンからかなりの額の寄付があった。
そのお金だけで領地の経営は2年は持つだろう。
カインよ、それまでに税金をどれくらい民にかけるのかを判断して行くように」
「はい!分かりました!」
そして俺の方を見ると頭を下げた。
「ケビンはクロス家の窮地に私財を投じてくれて感謝する。
これからも友好的で居てくれると助かる」
俺はそんな言葉を聞き流しながら
「親孝行の1種だと思ってくれ、貴族にはなりたくねぇし興味もないけれど
それくらいはさせてくれよ。カインその代わりいい街つくれよ?」
にっこりと笑う母上達と親父。
カインはぎゅっと拳を握りしめて
「あぁ! 任せろ!」
ここにセラやキャロは流石に居ない。
今頃街づくりの作業中だろうね。
下水道を作り、蓋をしてガッツリ固めた(アースさんが)土を土台にしてから家を建てるを繰り返ししていて飽きて来た子達には街の外に出て魔物を狩りに行ってもらい。
自分たちの魔法行使の感覚の違いを確認させる。
するとまた同じような作業でも非常に集中してやってくれるのだ。
最近は5歳以上の子供達も真似したり教えて貰おうと直接生徒達に頼っていた。
冒険者ギルドにはこっそりと俺の方からこの街と知識の街で依頼をかけていたので徐々に人が集まり始めていた。
出来ればこちら側にも冒険者が流れてくれれば良いなぁと思っていたりもする。
この街には低級ダンジョンが複数あることが事前に分かっているので低ランク冒険者が多く流入してくることを願っていた。
それに昔この街に住んでいたという冒険者や人がこの街に出戻りもし始めていた。
その中には中規模な商会も含まれていて楽しそうな顔をしていた。
家や土地の振り分けは既に大まかには終わっている。
商会や職人達の相手はアレンサリーナさんが行っている。
正式にこの街の商業ギルドマスターになるようだ。
農業の方には同族が権力者として居るせいかエルフ族が多く集まっていた。
俺とセラは数日前に協力して転移してきて世界樹の土を持ち帰って少量ずつ農業区に撒いて土に混ぜ込んだ。
そこまでするとクロス領でも農業をしていた人達は早速とばかりに畑を耕し始めていた。
水源は井戸を掘ったのと近くから川の水を引いて来ていた。
水車をドワーフ族に頼んだら簡単に4つも作ってくれた。
しかも俺はよく分からないので適当に
「小麦を粉にしたいので石臼でひく時だけ使える様にしたい」
と頼んだらレバー1つで回すか回さないかを選べる方式になっていた。
流石はドワーフだと思うわ、魔法的な物は一切使わずにカラクリだけでそれを実現させるのだからな。
そうして1ヶ月も経つ頃にはこの街の人口や建物自体も様変わりしていた。
俺は勝手にミカサ商会の支部も作っていたのでアレンサリーナさんからミカサ商会の人に連絡をしてもらっていた。
そもそも布団工場は既に動いているのだ。
ドワーフが簡単に水車のカラクリを作ったことにイメージを働かせて
スリーピングシープの毛を洗うのは水車の力を利用して脱水や乾燥させるのは魔道具を使っていた。
この街の魔道具師に製作を依頼したので壊れたりしても修理や買い直しはできるように既に手を回していた。
そしてその乾燥させる時に使う魔法陣を転用すれば同じ毛を乾かす道具が作れるよ?
と伝えたら保証契約時の説明を求められた。
アレンサリーナさんからジト目で見られたのは言うまでもない。
そして布団に関しては寝具なので魔物の毛や羊毛、そして綿を使って作る寝具として保証契約を変更した為、類似品は出ないだろうな。
まぁ最高級品を作り上げる人は出るだろうけどね。
そうして領主館をガッツリど真ん中に作ってやろうと基礎を皆で作ってる最中にこの街の製作に関わっている上層部がいきなり集められた。
会議室にはフードを被った人が3人居る。
全員がその人達に注目しているとフードの人がそのフードを取ると皇帝陛下だった。
反射的に貴族や騎士はひざまづいたけど俺やSランク組は一切気にしない。
その様子に親父が笑っていた。親父も一切膝をつかなかったのだ。
「クロス家やその協力者達よ、今回のことは皇族の力のなさが原因だった。
申し訳なかったな。それと大変よい街を作っておるな。それだけでこの街が出来上がって良かったと思っている。
アレクサンダーもすまなかった」
そう言って頭を下げたのだ、これには親父もびっくりしていたけど俺は水仙国王のことを思い出しここが既に他国として扱っているので
素直に謝罪と頭を下げれたんだろうなと予想した。
それと後ろの2人は皇女達だった。
そのうち知識の街に留学する予定だから今回一緒に来たのだろうね。
親父と皇帝陛下は臣下と王ではなく、学園の同級生として話しているようなので他の人が気まずそうなので2人には酒を渡してタビを呼ぶ。
「どうされました? ケビン様?」
「2人の皇女の護衛と街案内を頼む」
「かしこまりました。皇女殿下様、私はタビと申します。
街案内兼護衛を仰せつかりましたのでよろしくお願い致します」
そう言うと2人を連れていった。
緊張していた人達は皇族が居なくなった瞬間安堵していた。
これから君達の領主一応国主になるんだけどな?
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