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最終章:知識の街

246話

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 商業ギルドマスターが獣王を出迎え俺に伝言を送る前に迎賓館に姿を見せた。

「おぉ! ケビン殿か? 久しいな。色々なことがお互いあったが息災で何よりだ」

 一応、身分上は平民だけれどこんな迎賓館の真ん前で膝を着くわけにもいかないので礼を取りつつ挨拶する。

「お久しぶりです。獣王国国王陛下も中々大変な時期をお過ごしだった様で……
 元気なお顔を拝謁出来ただけでも「ククク、そんな丁寧な言葉など要らぬ。2人で乳を飲み分け合った仲だろう?」
 いやどんな言い分だよ! そこの冒険者変な妄想すんなよ!?」

 女性冒険者陣から非難の目を向けられたので突っ込んだ。

「あーもう。ならいいや面倒だし、それよりこれから皇女様達も来るみたい……
 いやもう来たみたいだから獣王も一緒に平民のフリして歓迎の列に加わる?」

 獣王国ビストに居た時の様に話始めると周りが驚いていた。
 俺の知らない顔の護衛や従者さん達が顔を真っ赤にして怒ってるが獣王はニヤリと笑い上着を脱ぐ。

「よしやろうか?」

 俺達も列の1番端に加わり並んで待つと10分程で馬車4台が来た。
 うわー……これで護衛や荷物が少ないってんだから帝国もどうかしてるぜ?

 護衛は装備を見る限り近衛騎士50人程で周りをかなり警戒しながら迎賓館の前に着くと全員が皇女様達が通る脇に列を作り完全防備で馬車の扉が開く。

 2人の女性と従者6人が降りてくる。
 確か、皇族は最側近が最低3人居るんだっけ?

 これは臣籍降下や他国に嫁いだとしても一緒に行動することを定められた運命の従者だ。

 商業ギルドマスターがギルド証明書を近衛騎士に見せてから礼をとる。

「アナスタシア皇女殿下、フローリア皇女殿下知識の街へようこそ。
 私が統治方法が完全に決まるまでの間の街長全権代理ですが今日はこの知識の街の1番の目玉の学校の完成のお祭りの最中のご来訪感謝致します。

 後ほど式典の際には来賓として支援の輪を広げてくださる国や領主と一緒に全街民にご紹介させていただきます」

 そんな時にフローリア皇女殿下はキョロキョロと周りを見渡しているとこちらを見てギョッとしていた。
 従者に何かを伝えて確認しているので多分バレたかな?

 俺はその様子を確認して獣王に声をかけた。

「おいおっちゃん、すぐにバレたぞ?」

「むう? 何故だ?」

 そんな会話をしていると獣王の従者に2人揃って頭を叩かれた。

「2人ともアホか!? どこの平民に王冠を被った平民が居るんだよ!?」

「「あ……」」

 獣王の鬣に乗る王冠が自然すぎて思いっきり忘れていた。
 そりゃ1発でバレるわな……冒険者達、冷めた目で見ないで。

 2人の皇女殿下はお色直しをする為に迎賓館の中へ入っていく。
 迎賓館は他国の重鎮が集まることを想定して近くにある国の数だけ作った。

 竜人族やエルフ族はそう言った豪勢な館は嫌いらしいので作ってない。

 そして何故か皇女殿下の最側近の2人と近衛騎士6人が出てきて大声を上げる。

「ケビン・クロスなる者が居るはずだ。出せ!
 何故帝国皇女が来て頂いてるのに挨拶にすら来ない! 臣下の癖に痴れ者よな!?」

「あ゛?」

 プチンと来たので魔力が漏れる。

「くくく……さて、お主はただのケビンだ。我が後ろ盾になろうか?」

 そう言いつつ獣王様よ? どうして拳をポキポキ鳴らすんだい? 喧嘩売る気満々じゃんか!!

 俺の魔力や獣王のヤル気にワラワラと近衛騎士達が出てくる。ふっGの様だ。

「あー……耳が悪いから聞こえてないんだけどさ?
 誰が誰の臣下だって? 」

 俺はとっくに貴族籍を抜いてる為にクロスの名前は無い。
 一応、帝国の中だけなら親父が名乗っても良いとは言ってるけど使う気もない。

 商業ギルド内部では戦闘力の高い特殊な資格を持っているし収めている保証契約の税金や代理作業が多い為いつの間にかAランクになってたりする。

 それと口座にアホな程金が貯まってる為にこの街に投資している。
 4年寝てた間にそろばんとカレーコンビの売上がえぐいことになっていたのだ。

 アホな連中は俺達が近付いてきた所で抜剣しやがった……指摘されて王冠を着けて無いとは言え隣の奴は国のトップやぞ?

 ほら、ヤル気が殺る気に変わったよ……後ろの獣王従者の気配が変わった。
 当たり前だ、自国の王に剣を向けたのだから。

「帝国にはもう協力も技術提供もしないし、北の辺境伯のドワーフ族も引き上げ指示出しても良いか?」

 彼らは多分、海が近い所とかも好きだと思うんだ?
 錬金術でクラーケンを干物にしてあげたり酒盗を作ったりすれば3日も掛からず来るだろうな?

 ここにはドワーフ、エルフ、魔人、獣人も居るのにこの態度ヤバいとは思わんのかね?
 多種族を受け入れて尚且つ皇女殿下達の歓迎の列に居るということは大使館の長か、それに準ずる職の人達だと何故気付かない。

「んで? それでどこの誰がお前らごときの臣下だって?」

 俺は誰の下にもつく気がない。神様だってちょっち困ってて仲良いんだから助けてと言われれば動きはするけどな?

 俺に対して1歩動いた瞬間に獣王がそいつを吹き飛ばした。
 遠くから見ている平民達は何かあったけどまたイベント? って感じになってる。

 まぁスラムの裏組織の摘発とかある意味見世物兼お祭りだったもんな。

「なっ!? 獣人風情が! ガハッ!?」

 そう発した従者その1のコメカミを殴り地面にめり込ませた。

「チッ、生命の危機に咄嗟に気を張り巡らせて身を護ったか」

 その言葉に驚く近衛騎士や従者その2。

 そんな時に迎賓館から出てきたのは皇女殿下達だった。

「お前達何をしているの?」

 そう言われた途端、まるでバレたら不味いと言わんばかりに近衛騎士が俺達を非難する。

 そして皇女殿下、こっちがフローリア皇女殿下だね。そして膝を着いた。

 その行動に知識の街側は一切驚かないが、帝国側の騎士達は大慌てした。

「お久しぶりです。獣王陛下。国同士の対談パーティー以来ですね?」

 獣王は剣呑な空気を霧散させてフローリア皇女殿下に向き直る。

「ふむ、久しいな。それと帝国では国を出た人間も臣下で貴族籍を抜いた者もお前達に挨拶をしなきゃならんのか?

 それとそこの地面にめり込んでる奴と今状況を説明しているアホが我に『獣人風情が』と発言されたが帝国の意思と取るがよろしいか?」

 うっわこっわ! ここぞとばかりに外交問題にしたよおっさん。

「帝国では未だに人種族以外を亜人と呼んで差別する風習がある様だな?」

 そう言ったのは水仙国の魔人族の青年だ、何でも侯爵家の次男さんで戦闘、政治、どちらも強いらしい。

 アナスタシア皇女殿下は近衛騎士を完全に蔑んだ目で見ていた。
 フローリア皇女殿下は獣王の言葉に顔が真っ青だ。

「んで? それで俺はお前らに挨拶せにゃならんの?
 ギルド員に強制的な挨拶の強要に国が違うのに人を勝手に臣下扱いですか?
 知識の街を何か属国か何かと勘違いしてねぇか?

 やるなら来いよ? いつでも殲滅してやるからさ?」

 俺の魔力は感情の昂りにより黒いモヤが吹き出している。
 それに反応できている人は数人だけれどもっと厄介な連中が来てしまった。

「『シャドウバインド』悪いけど近衛騎士達は全員拘束させてもらいますね?
 そうしないと全員の首が飛びそうなのでね?」

 そう伝えると近衛騎士の1人が騒ぎ出した。

「貴様先程から無礼過ぎるだろ!? そのそっ首叩きおとして……「どうしました? 首を落とす覚悟がおありなら落とされる覚悟も無いとおかしいですよね?」」

「はぁ……こいつらが来る前に終わらせたかったのに」

 近衛騎士でも老年に近い騎士達の顔が真っ青になっていく。
 皇女殿下達はいきなり現れたこの黒い格好の連中の存在を知らないらしい。

「セラリウム様、キャロリーナ様の命により制圧完了致しました。
 同国の人間として非礼を詫びさせて頂きます」

 影の統括はハビスだけれど実権を握っているのは団長だ。
 ハビスは表と裏の顔繋ぎみたいなものだからな。

「ほう? これが帝国最凶戦力影か……」

 獣王はニヤリと笑うが俺はそれを否定した。

「ん? 獣王それは違うぞ? 帝国最強の矛と盾はクロス伯爵と騎士団だぞ?
 それに影も皇帝からの指示がなければ所属はクロス家だしな。
 帝国建国期に皇族に貸し出し戦力兼人質とひて派遣されているのがこいつら影だからな。

 建国当時に武力という全てを掌握していたクロス家がパフォーマンスとして自分が持つ戦力を2つに分けたのが始まりだしな」

 そんな言葉に皇女殿下達が驚いていた。

「じゃあ近衛騎士でまともそうなの以外と地面にめり込んでる奴は牢にでも入れといてくれ」

「「「「「はっ!!」」」」」

 ここは帝国では無くて知識の街なのだ、帝国で貴族として敬われていてもここでは迷惑を起こせばただの他国のお偉いさんのお金持ちのボンボンバカ息子扱いだからな。

 普通に捕まえますよ?

「っと言うことでここでは権力も何も関係ないので簡単に捕まりますから気を付けてくださいね?

 高ランク冒険者が捕まえられないとこの国最凶最悪の恐ろしい戦力があなた達をボロ雑巾として扱いながら確保しに行きますので」

 何故か影達の背筋が伸びたな。
 こいつらの戦闘能力はSランク冒険者に引けを取らない。
 それ故に相手を欲していたがそこに黒子と琥珀という双子コンビに見つかり捕まった。

 おもちゃ……もとい遊び相手を欲していた双子と本気で修行したい影達の利害関係が一致して修行していたが本当に毎日容赦ないからな。

 それを想像して顔が青くなったんだろうね。
 この後、まともな騎士達に囲まれ式典会場へと向かうのであった。
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