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世界樹を救え?
211話
しおりを挟む目の前に長老と名乗る連中に対して俺が攻撃態勢に入るとこちらに様々な精霊術を放ってきたが少し違和感があった。
見た目から見ても珍しいエルフ族の老人。
技術力も練度も高いだろうが俺は全員の目の前に立って一言魔法句を唱え感想を言葉に出していた。
「『空間遮断』なぁユリアさん。コイツら弱くね?」
これが本当にエルフ族の最高権力者なのか?
この世界の最高権力者って頭脳か武力で頂点に立っている人が多いから拍子抜けした。
「貴様! なんだその奇っ怪な術は!」
ギャンギャンうるさいなぁ……
「『サイレント』ふう、静かになったおっと!『遮断結界』」
精霊や他の人と意思の疎通が取れないと見るや否やすぐさま逃げようとしたので結界で閉じ込めた。
「それでユリアさん。何でこんな権力者が下級精霊しか契約出来てないの?」
そうこの老人達の契約精霊が慌ててるのだけれど下級精霊しか居ないのだ。
それに特殊な属性も居らず基本属性である。
目を見張る技術は精霊術を使う時の行使スピードのみだった。
「これがエルフの国の現状ですわ……家柄や権力者の子孫、歳だけ重ねた変えに変えた歴史を提唱して自分の立場を確立したそれが長老と呼ばれる者なんですの!」
えぇ……国って言うから国王統治じゃないの?
「エルフ族の統治制度って何?」
「私が子供の頃はまだ氏族長会議で運営されてましたが
このボケ老人共が前に出始めてから1人また1人と族長が出て行ってしまったんですの! 私もその1人ですの!」
あぁ……各国に結構な数のエルフがいる理由がこれか。
そして目の上のたんこぶが居なくなったこいつらが国を牛耳ったってことか。
ん?
「ということは今エルフの国は無法地帯なんじゃね?」
カイナとユリアさんは首を横に振る。
「それはないんですの! エルフ族には巫女様が象徴として座していますの。
非常事態時は巫女様を中心にまとまるのが伝統ですの!」
新しいワードが出てきた、巫女様とはなんぞや?
「何の巫女?」
「それは世界樹の巫女ですの! そして世界樹に選ばれし巫女様はハイエルフに成れて国の中心になるんですの!」
えぇ……じゃあなんの為にこの老害が居るんだ?
「長老は何してんの? 逃げちゃってるじゃん」
そこで2人とも顔を顰めた。
「コイツらは普段はふんぞり返ってる癖にこういう時はいち早く逃げる困ったさんですの!」
あぁ、いち早く逃げるとかどこかの権力者だよな。
まぁ、権力者が1番危険から遠いからな。
それはあくまでもちゃんとした権力者の場合だけどな。
それを勘違いした成り上がり権力者は自分は選ばれし存在だと喧伝して危険から逃げようとしたり周りに自分は価値があるから護れと言うんだよな。
「じゃあ要らないな……魔力大鎌」
そう言うと長老達は顔を真っ青にする。
「じゃあバイバイ。哀れな選民思想者達」
そう、言って魔力大鎌を振るうと目の前に大樹が重なり1本1本がかなりの魔力を含んでおり木と魔力大鎌のぶつかり合いとは思えない甲高い金属音が鳴る。
「!!? 誰だ?」
俺は長老と名乗った連中の奥に居るだろう人物に声をかけると姿を表したのは青髪のエルフだった。
「誰だ? お前」
俺は睨みながらそのエルフに問いかけると
「私は……巫女よ。ソイツらを殺されると困るのよ。私が生きる為にね」
俺は殺気をグングンと上げていく。
エルフだけでなく仲間達にすら顔を変える者が出るほどの殺気に反応したのはエルフ族だけじゃない。
『ふん、助かったぞ。ここに居たのか』
そう言って近くの地面から出てきたのは何時ぞや会話した土竜だった。
「あぁ、世界樹の巫女とやらはもう腐りきってるみたいだから世界樹には独り立ちしてもらおう」
『お主、目が変わっておるぞ?』
俺はふと思う、こいつらを見てからどうしても許せないと感じているのだ。
それは多分、指針や成人を認めてくれた神が関係しているんだろう。
「土竜がここに来たということはどういうことかわかってるんだろ?」
そう言うと土竜はフンッと荒い鼻息を出して獰猛な笑みを浮かべた。
『貴様は巫女とやらを相手にせよ。今龍神様から意思が伝えられた。
もう見過ごせない様だな、龍族で魔力を渡したのに回復率は3割程度とは数ヶ月で世界樹は枯れていた可能性が出てきた』
俺はそれを聞いてため息が出た。
「なぁ? 巫女さんよ? 俺達が動かなかったら数ヶ月後に世界樹は魔力が尽き枯れていたそうだ?
お前世界を滅ぼそうとした罪人認定が出てたかもな? まぁ世界が滅びるから関係なかったかもな?」
そう言うと全員が厳しい視線をエルフの巫女に向けていた。
その言葉に1番狼狽えたのは何故か巫女だった。
「そそそ、そんな……でも精霊様は大丈夫って……」
「お前森を見ろよ……世界樹の魔力が無ければ枯れる森なんて終わってるんだよ。
ハイエルフってのは無限と言える寿命を持つんだろ? 但し、世界樹の魔力ありきだけれどな」
そんな狼狽えているエルフ族の巫女の腹を俺は蹴飛ばした。
ギリギリガード出来る速度で攻撃したのでガードされた。
しかし、目的は攻撃では無く遠くに飛ばし距離を取りたかったからだ。
そのまま攻撃を転移しながら続けて後方にどんどんと吹き飛んでいく。
かなり距離を取った所でゴロゴロと転がっている巫女を俺はつまらなさそうに見ていた。
「さて、お前今精霊顕現出来ないだろ? 妖精王が世界樹の方に向かってるからな」
「!!? 何だと!? クソっ! 『ローズショット』」
「は? お前マジか。精霊術じゃなくて魔法使うのかよ……『闇喰』」
俺は面倒なのとちょっとした意趣返しで闇の精霊に魔力を渡し棘を全て食らった。
「どうしてだ!? 何で今更こんな化け物が来るんだよ!」
永き時を生きているのに精神年齢が低過ぎる。
「お前アホだろ……どんだけ腰が重い奴でも世界が滅び自分が死ぬのが分かれば元凶を潰すのは世界の摂理だろうが」
そう言い俺が前に飛び出そうとした時、魔力が地中から吹き出た。
「おいっ!? 妖精王説得失敗したなクソが!」
俺はそう悪態をつくのであった。
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