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共和国編〜好きに生きる為に〜
141話
しおりを挟むクソ龍が俺では無くクロにぶっ飛ばされてから2週間経った。
この街では変な噂が流れていた。
数日に1度、どこかのお偉いさんが冒険者ギルドに来ては喚き散らし帰って行くのだ。
ギルドマスターが鱗1枚だけを本部に送った結果、情報も証拠品も漏れて消えた。
紛失したという話が俺に来たのは渡してから1週間後のことで
俺は一言冒険者証渡して
「失せろ、これもいらねーや。別に冒険者ギルドだけが稼げる場じゃないからな」
ギルドマスターは顔を真っ青にして何か言い訳を言っていたが聞かなかった。
そもそも紛失したのに最低補償金も持って来て謝りもしない組織に用は無かったからだ。
この事件が冒険者達の耳に入り加速度的に影響を与えるなんて俺はまだ知らない。
そしてすぐに商業ギルドに行きギルドマスターにアポをとった。
使者がすぐにアポの日付を返答しに来て今は商業ギルドに来ていた。
「いやぁ、噂のケビン様とお会い出来ることを光栄に存じます!
私のことは知らなくても貴方様のことはよくご存知なのです。
アレンサリーナとは同期でしてな? 常々自慢されていていつかお目にかかりたいと思っておりまして。
あ、私ギルドマスターのガビンと申します!」
おしゃべり過ぎてこちらが気圧されてしまった。
「それで今回こちらにご用向きになった案件をお聞きしたいのですが……」
俺はマジックボックスから計画書を取り出しまずは読んでもらうことにした。
「えっと……商業ギルドって確か、特殊ダンジョン入場許可証ってありましたよね?
それが欲しいのとこの計画を実行するに当たって面倒見の良い職人をやスラムの建築物の建て直しの許可が欲しかったのです」
アレンサリーナさんに昔たまたま聞いた『特殊ダンジョン入場許可証』
これは商人の護衛を強化したり商品開発をする為の素材をありったけ採取したり
こだわりの強い職人さんが自ら素材を採取に行く時に審査を受けて発行してもらう許可証で
ランク付けをされるとそのランクまでのダンジョンの入場許可が受けれるかなり特殊な制度だった。
冒険者にウマが合わなかった腕のたつ傭兵等にも使われる商業ギルドの緊急時の私兵扱いの許可証だ。
この人さっきからちゃっかりそろばんもどきを使って色々計算してる……
そして計画書を読んでは「ムフフ、うはw」と笑い転げている。
「あ、今回の件に関しては全てのギルドで情報を吹聴させて頂いてます。
冒険者が命懸けで持ってきた素材を紛失又は盗難……いえはっきり言えば強奪等バカにしてますからな。
持ってきた素材の噂話を聞く限りのランクを見てもA+はたまたSランクになりますからね。
龍素材ですからね。バカなことをしたものです。
Sランクの冒険者が本部に乗り込むと豪語してる方もいらっしゃいますので下手したらSランクが減るやもしれませんねぇ」
カイゼル髭を撫でるおっさんは物凄く悪代官の様な笑みを浮かべ机の上にあったベルを振る。
音は鳴らないが魔力反応があったので魔道具だろうな。
1分もしないうちに秘書っぽいお姉さんがトレーを持って現れた。
「商業ギルドでは革命的発明を幾つも出しているケビン様に審査等不要です。
こちらの計画案にも唆るものしかありません。
ちなみになのですが……」
言いづらそうに眉を下げるので俺はニヤリと笑い。
「可能な限りは聞きますのでどうぞ言うだけは“タダ“ですよ?
まぁ商人の皆さんは嫌いでしょうけどね?」
何故か秘書さんもギルドマスターも目がきらりと光った気がする。
「えぇ、実はこの街ではケビン様の取り組みのおかげで孤児が減り就業出来る子供やギルドの訓練よりも実のある訓練を行い死亡率が下がりました。
なので私達ギルドと致しましては……他の街の不遇な子供達や親の我儘により未来を奪われた子供達、保護された子供達も預かって欲しいのです」
うーん……良いんだけど。
俺は脳内で現在の建物の収容人数を計算して、うん足りないな。
「周りの土地や2号館を作る為の土地の融通を受けれるなら考えます。
職員に関してはスラムにあれだけ人材が居ますからね」
「「人材ですか?」」
俺は頷く。
「スラムの中には沢山訳ありな人が居ます。特に裏の人や権力者に狙われた人。潰された人。そして怪我をして冒険者を強制引退させられた奴ら。
そして裏の手足としてしか生きられなかった腕っ節だけが取り柄の脳筋」
そこで俺は一息入れて
「そんな人達に教育や治療を行い復帰させます。下手すりゃ昔有名だった著名な職人が出てくる可能性だってありますよ?
腕っ節だけの脳筋達には冒険者か商人の護衛をさせるには丁度良いですし。
彼等は上下関係だけはしっかりしてます。
更には多分最初の裏の世界を始めた人が貴族か商人の関係なのか言葉使いだけはしっかりしてます。
短気な所さえ落ち着かせれば十分護衛にはなるでしょう」
そこで何故か秘書さんが驚いて声をあげる。
「な、治るとはどこまで治るのでしょうか……?」
ん? 近親者に病人でも居るのか?
「こら! メイカ止めなさい!」
「嫌よ父さん!マリカを治せるなら治してもらいましょうよ!」
親子だったぁぁぁ!!!似てねぇぇー
俺が目をぱちくりとさせていると秘書さんがクスクス笑う。
「すみませんケビン様。私の妹のマリカは事故か故意か分かりませんが右手の指全て失ったのです。
魔道具の故障と商会側は言いましたが……余りのショックに言葉すら失ってしまったのです」
ふーん、精神的な失語症ねぇ。多分受け入れられなかったか事故の原因が余りに醜く家族を巻き込みたくなかったかな?
「別に良いですよ? その代わりもう一度輝くなら修行は必要ですし……
何ならその計画案の教師なら嫉妬されずに自分の足場固めもできますよ」
メイカさんは父親のギルドマスターから書類を奪い取り泣き出した。
「あの……ケビン様。本当に娘の指は治るのでしょうか? 共和国の首都の教会の最上位治癒師でも無理だったのです」
ふーん。何でこの世界の人は失ったらそこで終わりになるのかな?
魔法なんて奇跡があるのにね?
「俺の治癒は錬金術との合わせ技なので治りますよ?
どちらかと言うと治癒というイメージより復元に近いので」
「「復元ですか?」」
さすが親子、息ピッタリ!
この日は許可証と建て直しの優遇の書類を貰い後日視察と称してマリカさんを連れて来てもらうことにした。
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