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共和国編〜好きに生きる為に〜

121話

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~タビ視点~

 私はケビン様をギルドの医務室より転移で洞窟へと移動させました。

 帝国から抜け出しケビン様を追い掛けこの街へと来た時に、もしも追っ手が掛かった時用の避難場所を作っていたのが功を奏しましたね。

 まぁ、諜報部隊にいた時の癖ですね。

 ギルドマスターのエルフがケビン様に近付こうとした時に
 ケビン様の周りを護る様に展開された黒い球は恐ろしい速さだった。

 速さを武器にしてる私が見逃し掛けた程でしたからね。

 ハビス老より貰った事前情報の中にケビン様は確かに人を殺してはいますが……
 武器の近接戦闘は経験が無いと書いてありましたね。

 注意事項に無意識に避けている可能性アリとも書いてあったので
 ケビン様は魔法が大好きだが、戦闘や殺しは嫌い又は忌避感情に似た何かを持っているのでは?

 というちょっとした違和感が今回、爆発したと私は見ている。
 戦闘記録に置いても、ケビン様は必勝という方では無い……現当主様のアレクサンダー様は同年代最強で最凶でありましたが。

 そして、運良く。いえ、現在のことを鑑みると運悪く
 自分の命を脅かす存在に出会ってもその危機を感じ取る前に強者が現れ助けて貰って来てましたね。

 怖いの後に"悔しい"と言葉を発したとのことでしたから
 そういった感情を感じているのであればこの方ならば乗り越えられると唯一の配下のタビめは信じております。

 ケビン様はクロス家に生まれた変人奇人と呼ばれていました……
 影の中には嫌う者も居りましたが私の家やハビス老は違います。

 彼の頭の中には魔法を如何に快適な空間で使う事にしか興味が無いと感じておりました。

 保証契約に置かれましても自分で胴元をすれば莫大な資産と商人としての地位を得られる所を
 他の方の専門職に簡単に渡したり、嫡男候補をあっさりと捨てたりと

 持っていない側には理解出来ない行動原理ですが……
 常々魔法が好きと言っている所を元に考えると理解出来てしまうのが怖い所です。

 領内の改革は、まさに自分が住む街が汚いと暮らしづらいというだけで
 皇帝陛下からの褒美を使ってしまう辺りが凄さが伺えてしまいます。

 おっと……発作が始まりましたね。

「ふぅ、これ洞窟壊れませんかね? 相手の龍とはどれ程の壁だったのでしょうか?
 私は純然たる戦闘職ではないので理解できませんが……」

 ケビン様を見ると違和感に気付いた。

「え……? 体が成長してる?」

 思わず2度見してしまいました。
 確かにケビン様は同年代の子供と比べるとかなり小さい方で本人もそれを気にしていました。
 明らかにズボンの丈が短くなってる程の急成長です。

 10~12歳で大人1歩手前の身長になる人が多い中長命種族と間違われる事もしばしばあったと聞き及んでいましたが……もしや。

「負けた事をきっかけに体が強制的に適応しようとしてる?

 !? ならばマズイです!」

 私はケビン様の居る洞窟最奥より入口側の手前に少し戻り
 預かっていた屋台をマジックボックスから取り出し料理を始める。

 洞窟内部に料理の匂いが漂い始めると黒球の暴れる音が響いてきます。

「やはり……あれはケビン様に代わり捕食行為をしようとしていたのですか」

 料理を黒球の目の前に持っていくと料理のみを包み消えてしまいました。

 軽く20人前を用意したのですが、一瞬ですか……

「ふふふ、やはり貴方様は面白いですね!
 料理人魂にも火がつきましたよ!!

 やったりましょう!!」

 私はうどんの開発と共にケビン様へ料理を捧げる日々を送る事になるのが決定した瞬間でした。

「貴方様に着いていくと決めた時に覚悟は決まっていましたが……

 ケビン様。心配なさってる方が沢山いらっしゃいます。
 お早いご帰還をお願い致します」

 こうして料理を作り、帰還を願う毎日が長く続く事を未だ誰も知らない。


~神界~


 創造神と技巧神アロンダイトは龍神の対峙していた。

「ねぇ? どうして勝手にケビンに戦いをけしかけたんだい?」


 柔らかな言葉使いとは裏腹にその怒りにも似た激情が創造神や技巧神から発せられていた。

「うむ? 愛しき寵児2人を預けるに足りうるか確認をして何が悪い?
 そもそも主らはボケたのか? 神とは試練を与えて力を渡すのが様式美であった筈だが?

 主らは彼奴にポンポン力を渡しすぎなのである。
 力に適応出来ずに成長不全まで起こしていたではないか? ん? 気付いてなかったとは言わせんぞ?」

 そんな3人の剣呑な雰囲気の中、1人の青年風の神……魔法神エストが絶叫した。

「まず1つだけ言わせて欲しい!
 アイツ地球から転生させて力を渡して楽しもうとしたの
 俺だからァァァァ!! 」

 3人の神はポカンとした表情をエストに向けて剣呑とした雰囲気は霧散していた。

「何で!? 最近アイツと話してすら居ないんだけど!
 勝手に力や知識を渡したりする神は居るわ、自分の因子を埋め込む古代の魔王とかふざけんなぁぁぁぁ!」

 エストの叫びに3人全員がそっぽを向き、現在干渉している龍神は静かにフェードアウトしようとすると……

 ガシッと肩を捕まれ、後ろをギギギとブリキ人形の首の様に向くと

 黒い笑みを浮かべたエストが逃がさんぞという決意を瞳に滲ませていた。

「今日は、じっくりゆっくり数年位話を聞いてもらいますよ?」

「う、うぬ。で、ではその招待を受けようではないか。
 あ、技巧神アロンダイトよ? 逃げるでない酒をよこせ」

 アロンダイトはガクンと肩を落とし、一瞬消えたと思うと次に現れると酒の樽を5個持ってきた。

「魔法神エストよ。儂からのお詫びとでも思ってくれ。飲むぞ」

 神界でその日、咽び泣くエストの声が1日中聞こえたとか聞こえないとか。
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