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本格始動知識部!

100話

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~ケビン視点~

 俺達は帝都に帰ってくるとすぐに各自、寮に戻ったけど何か不思議な感じがした。

「1年ちょっとって子供には大きな期間だったんだな……」

 1年でかなり身長も伸びて部屋が手狭に感じたのは
 嬉しい事と寂しい気持ちが混じった感情だった。

 そして、学園所属で獣王国に行っていた生徒、教師は明後日
 慰労会を開くとして皇帝陛下より招待状が送られて来ていた。

 直接手渡しでは無く、教師による口頭説明と寮の部屋の机に手紙が置いてあった。

 これは平民側への配慮だと思う、手紙を開くと
 帝国として他国との関係を良好にしてくれたお礼と労いを兼ねて食事を提供したいと書いてあり
 服装は、急に招待しても持ってないだろうから制服で良い。

 と書いてあった。

 ふっ、皇帝陛下や宰相は一緒に行った貴族の人達や
 実際に内政に関わっていた生徒達との顔繋ぎと褒美をやる事での一体感を表す為に

 秘密裏に動いたのだろうけど、それを簡単に逆手に取られるのでは意味が無いと思う。

 俺は手紙が置いてある机に

 俺は結界を張り頭をガリガリかいて叫ぶ。

「あぁ!!もう無理っ! 俺は楽しく快適に過ごしたいだけなのに
 便利になればと役立つもの作れればと思えば権力が付き纏ってくる!
 力が無けりゃ発言すら出来ない程俺は弱いっ!!

 ちきしょう……」

 本音を吐露した後にどうしても不満が出てしまった。

「この世界は、強さが最低限必要なのは分かるし。
 それでも……子供だからって何でもして良い訳無いだろっ」

 最近、学園の生徒達と前世の記憶の学生への乖離が強くイライラしていた。

 商人志望の我欲が強く搾り取ろうと集ってくるのはある意味
 この世界では正解なのだろうと思うけど……思うけどさ。

 人情につけ込むのは人としてどうなのか?

 プラテリアも強さや獣王国内での権力? 地位の高さの同調圧力が酷かった。

 正直、半年過ぎた辺りから帰りたくて仕方なかったけど
 知識部の文官志望の子達との交流や建築、屋台等の商品開発は楽しくて我慢していた。

 俺は他にも不満があった。
 俺の仲間扱いになっていたムゥ、メロ、サツキの3人の話が
 領地内で塞き止められていた事についてだ。

 彼女達は個人的に俺が雇ってる人間で報告・連絡・相談は義務だ。

 当たり前の話何だが、そもそも彼女達に任せているのは屋敷の管理のみだが。
 普通に暮らしてる人達よりも給料は約3倍+冒険者活動の収益も得ている筈なのだ。

 領地の諜報部隊員1人借りているが、あれは領地からお金が出ているから
 経費以外の給料はカレー粉にしているのだ。

 魔法契約で二心ありと判断されない為の対価なのだ。
 死の契約を結んでいる連中なのだがらかなり慎重に扱わねばならないのはたまにキズだけど。

「はぁ。もう無理ぃ。〇〇〇」

 俺はこうして部屋に魔法をかけて綺麗にして部屋を出た。

~ネロ視点~

 帝国に帰る前からケビンの様子がおかしい気がしたけど。

 常に思考に耽っている感じだから何かまた突飛なアイディアがあるのだろうとスルーしていた。

 寮に着いて1日休んで朝から昼間までは鍛錬して夕方前に着替えをして寮の前でケビンを、待ったけど出て来なかった。


 寮母さんに事情を話してケビンの部屋に向かうと鍵は開いていた。

 部屋は綺麗に何も無く、机には今回の慰労会へ参加予定全員に配られた皇帝陛下からの招待状にナイフが突き刺さっており

 その隣に紙が置いてあったけど、ぐっちゃぐちゃに文字が書いてあった。
 それを読んでいたら目の前が涙で滲んだ。

 手紙を握り潰しそうになるのを何とか我慢した。

 だって最後の一言が

『もう無理、消えたい。逃げる』

 俺はどうして最近のアイツに気を回せなかったんだと悔しくなる。

 アイツは基本的に人を寄せ付けたがらない癖に寂しがり屋なんだ。

 空っぽになってしまった部屋の机を見て俺の心も何か穴があいてしまったのかもしれない。



 ぼーっとしていたら馬車に乗せられて城に移動した。
 不確かな情報で動く訳にはいかないのでケビンの事は『体調不良』として教師に伝え隠した。

 帝城に通されると全員が謁見の間に連れていかれる。
 中に入り跪くと、急にファンファーレが鳴り俺は意味がわからないと驚く。

 帝国で慰労会をするにあたって、皇帝陛下より
 労いの言葉を受けるだけならファンファーレは必要ないからだ。

 ファンファーレという事は何かの式典……式典? 
 何か引っかかったけどもう止まらないし黙って居るしか無かった。

 式典が始まると、皇帝陛下が入って来て俺達に労いの言葉をかけた。

 新しい宰相様が式典の内容を告げた。

『論功行賞授与式』

 は? 論功行賞? 慰労会では無いのか?

 微かに生徒達も教師もザワついた。

 宰相から進行役は文官だが大臣に変わる。

 第1功は技術提供の1団を纏めていた、貴族だった。
 第2功は何と、知識部でもケビン達とよく理想論を語る会という会合で
 色々な法整備の話や生活向上に向けた夢を話し合っていた。

 あの場に居たのは貴族籍でも継承権の低い子息や令嬢だった為に
 全員準男爵という貴族位を貰ったらしい。

 そんな時だった。

『第3功 ネロ、ケビン、Dランク冒険者兼学園生徒2学年

 此度はノース辺境伯に居るドワーフと連絡を取り築城を進めたり
 獣王国との友好の義を結んだ立役者としてここに功績を表し男爵位を与える』

 俺は目の前が真っ赤に染まった。

 よく見ると、皇帝陛下とケビンの親父さんも知らなかった様で驚いていた。


『ネロ、ケビンいないのか? 早く壇上に来い』

 俺はケビンの口癖を思い出していた。

『やだよ、貴族何てめんどくさい。絶対にならん』

 プチンと何か切れる音がした。

「お前らのせいでケビンわぁぁぁ」

 俺の意識は壇上前でケビンの親父さんと少し戦闘になったが、すぐに意識を刈り取られた。


 目が覚めると、俺は拘束されておらず。
 隣にはケビンの親父さんが居て涙が出た。

「ごめんなさい。多分ケビンは今回の事知ってたんだ……
 今日、寮の部屋に行ったらもう居なくて」

 わんわん泣いてしまった。

 その後、落ち着いて話を聞くと
 皇帝陛下は論功行賞の途中で大激怒したらしい。

 ケビンの陞爵だけはするなと厳命していたのにも関わらず行われたらしい。

 そしてその話を聞いて知識部に居た文官志望の1人が皇帝陛下に1つの嘆願を出した。

 内容を読み、1つ返事で認められた。

 知識部の生徒達が嘆願したのは新たに部門として『知識部門』を作って欲しいと。

 ケビンが以前に夢物語として話した内容の中に
 大臣職や陛下が毎回、法整備や法律の提案に出突っ張りになるのでは無くて
 下部組織として知識部が法律の草案をまとめるという物だった。

 知識部に入るには魔法契約で知識部の部屋以外では内容が話せない。
 私欲に走った場合、知識部の部屋に入れない等20位ある条件を飲んだ精鋭達らしい。

 嘆願書には

『ケビン氏が学園から居なくなれば知識部は当然自然解散します。

 そもそも知識部はケビン氏が戦闘・商業・政治において
 高水準な知識を持っていたからこそ成り立っていたのです。

 彼が居ないなら自分で調べ物をした方が良いと判断したのです』

 そう書いてあったらしい。

 流石に今回の事は看過できないと皇帝陛下が直に処理するとお触れを出したらしい。


 どこまで行っちまったんだろうな? ケビン。


~ケビン視点~

「あーあー。やっちゃったなぁ。まぁなる様になるかなぁ?
 ワナイナ共和国だっけ? ワナイマ共和国だか忘れたけどそっちに行こうかなぁ。

 はぁ。ダンジョン生活で暮らせると良いなぁ」

 俺は今、帝国から共和国方面に向かう為に急ぎ足で向かっていた。


 捕まる気も何も悪い事してないから最初から捕まる想定はしてない。

 でも捜索は出されてもおかしくないから本当は良くないけど
 全ての領地を抜ける時にある関所を風魔法で空に自分の身を打ち上げ
 空間魔法で地面に着地するという荒業で抜けていった。

 1日で国境は超えたから安心しても良いけどここから先は
 実力者が多い共和国なので油断はしない様に進まねば。

「冒険者登録証そのまま使えるといいんだけどなぁ」

 こうして貴族になりたくないと貴族家から籍を抜いていた俺は
 貴族という枠組みに当てはめられるのが嫌で国を出たのであった。


­­--­­--­­--あとがき­­--­­--­­--

 知識部本格始動という章は実はケビン率いる知識部が活躍していく話では無く。

 知識部門として、帝国の中に出来た知識部の門出のこれからの活躍していくだろうというお話でした。

 ケビンが起点になってこうなりました的な話でした!

 次の章は……多分皇国辺りからずっと言っていた共和国編でっす!

 元々、皇国編書く前に思い付いていましたがケビン氏の成長遍歴が
 間に合わないので後に、後にと後ろ倒しにしていた章です!

 皆様次の章も楽しんで読んでください!!

『はい!!喜んで!!』って言って貰えると嬉しいです。

赤井水
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