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学園編

23話

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「ふん、ふーんふーん♪」

 俺は今絶賛肉を焼いているのだが……

「視線が辛いよハンナ君!」

「ほら坊っちゃまテキパキ、テキパキお願いしますよ!」

 下味だけ付けて衛生班に任せようとしたらハビスとハンナに邪魔された。

「おい!おい、お前!ぐへぇ」

 えー……忙しい俺にアホ子爵子息がお前って言った瞬間、騎士団長がアホ子息を蹴飛ばした。

「貴様……死にたい様だな? 紋章も読めんのか?」

 いやはや、おしっこ漏らしてますよ? その子。

「騎士団長そいつらには水と干し肉出してー」

 パンパンと手を叩き促し、良く見ると男爵令嬢とメイド達はしっかりテント立てをうちの騎士達に聞いて
 しかも馬車の馬の世話にも挑戦してるのが見えた。

「ハンナ、男爵令嬢をどう見る?」

「普段から平民と余り変わらない生活をしてそうですね?」

「ふーん、ならハンナ君、後4人前追加出来る?」

「ハビス様がどれだけ肉持ってきてたんだって位あるので大丈夫ですよ!しかも今現在肉も増えてますから」

 そうなのだ……鼻の良い魔物が今こちらに来ては騎士達のお肉になっている。
 肉の焼ける匂いに騎士達のテンションとハビスの絶品という口コミがどんどんモチベーションをハイにする好循環だった。

「なぁ!ハビス!竈今から作れる? 明日の仕込みしておきたいんだけど、肉集まり過ぎてるから明日も消費しよう!」

「はっ!ただいま!」

 騎士団長に声を掛けると瞬く間にハビスと騎士が竈を作っていく。
 こいつら……普段絶対魔法使って竈作らないだろと思いつつもも

「騎士団長!鍋に食べれる魔物を骨も割って入れて!それから水を入れて!」

「お前らー!今日を頑張れば明日もいい飯が食えるぞー!」

「「「「うぉぉぉぉぉ肉出てこーい!」」」」

 うわぁ引くわっ全力で引くわ。

 30分後、多分この辺の魔物全部狩られたわ、南無。

「美味いっ!これは素晴らしいです!」

 全員に名前呼びを禁止しているし紋章も二重丸以外は隠している。

 それは……俺の正体を知られたくない事とそして貴族特有の貸し借りの話すら面倒だからだ。
 そんなもの要らんと突っぱねる為に出した案だ。

 本当に面倒くさい事になると実は俺達が計画したんじゃないかと辺境伯が勝手に懸想して攻めてくる可能性だってあるのだ。

 アホくさい。
 しかも子爵家子息は端っこでこちらを既に睨んでる。
 それを男爵家令嬢はため息をついて見ていた。

 やはり同じ家の臣下だから顔見知りなのだろうな。

「ハビス!あの恩知らず共の視線明日までに解消出来なければ捨てて行くぞ?」

「お任せ下さい!我々の顔を1人でも確認したら地面に床を着ける位調教致しましょう」

 やべっ人選ミスったか? いや、周りの騎士達を見ても誰を選んでも同じだったかそれよりも熾烈になりかねん。

 そうなんだよなぁ下位騎士以外は『戦場の炎鬼』と呼ばれてる
 父上と共に微笑みを浮かべ、散歩にでも出掛ける気軽さで
 目の前に布陣している自分達の5倍以上の戦力の敵に突っ込んで1人も死なずに戻ってくる猛者だしなぁ。

 しかも代々騎士団長になれる奴は、『やられ役』をした事がある人だけらしい。

 1番の手練で尚且つ軍規を守らせる為にいの一番に軽い軍規違反をして
 ボッコボコに他家の領軍の目の前でされる役目を担ってないと騎士団長にはなれないらしい。

 見た目はボロボロなのに実際は一切深い傷は負ってないという役者芸。

 やる方とやられ役の全力の演技が揃わないと出来ない事らしい。

 そんな連中の扱き受けたら彼ら帰っちゃうよ領地に。


 その夜は俺は馬車の中で寝たがすぐに悲鳴が聞こえて来たのは聞き間違いでは無いと思う。



 次の日の夜明け前に俺は起き出し鍋を確認する。

 骨からホロホロと肉が取れる位になったのを確認してから
 ちょうど起きてきた騎士達と骨を取り除きそこら辺に骨を捨てて行く。
 野菜を入れて更に煮込みニンニク塩胡椒を入れたら完成だ。

「う、うまぁい」

 こらこらそんな蕩けた表情女の子が見せちゃダメだよ?ハンナ君?

 そんな表情が騎士達から沢山見えた。

「もう半分は俺とハビスで回収して出発!」


 俺は馬車で必死にゴリゴリとスパイスをすり潰していた。
 今日の夜用のカレーもどきを作る為だ。

 明日の昼前には帝都に着くので今日の夜までは頑張る。
 え? 子爵家子息? 怯えた表情でこちらを見てたよ?
 そして誰一人としてスープすら与えなかった。南無。


 その夜、騎士の1人の衛生班の隊長から作り方を教えてくれと土下座された。

「坊ちゃま。馬車の中で契約を結びましょう、そしてそのレシピは商業ギルドのギルドマスターに私が責任持って登録致しましょう」

「レシピは渡しても良いんだけど結構高いよ?商業にするなら採算取れないと思うけどなぁ……」

 ハビスはニヤリと笑い

「坊ちゃま? レシピを買うのは何も商業をしてる料理人だけではございませんぞ?
 貴族の料理人も買いますぞ?」

「ふーん、なら今日のお肉の仕込み方とかハビス見てたよね?
 商業ギルドに試食させる時にガッツリぼったくって良いよ!
 貴族用と商人用でわけて買い取れる様に後は原料の買い占めを防ぐ忠告もよろしく。

 多分うちの領が発信ってのはすぐにバレるだろうしね。
 俺のせいで薬師の婆ちゃんのお店かなり仕入れ繰り返してるからね」

 俺達は3人でふふふと笑みを浮かべて契約書を作り結び。
 そして2部ずつ俺がニンニクや生姜を使って作った料理やカレーもどきのレシピを渡した。

「こっちの辛さは無いけど匂いが良い方は使う量が少ないから騎士達の給料でも余裕で毎日食えるぞ!」

「この下賜絶対に忘れませぬ」

「いやいや、俺主ちゃうやーん!」

 そんなアホな1夜を過ごすのであった。


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