17 / 111
17
しおりを挟む
「ん……分かったよ、約束。
大好きな君にそこまで言われたら、仕方がないね」
デレデレとだらしなく鼻の下を伸ばしてそう言うと、彼は僕の小指に小指を絡めて、あろうことかそのまま自身の口元へ引き寄せ、ちゅっと軽く口付けた。
「んっ……!」
予想外が過ぎる奇行に反応して、つい変な声が出てしまった。
触れたのはただの唇で、小指の先になんてそこまで神経は通っていないはずなのに。
は……恥ずかしい。なんだよ?今の。
慌てて指を引っ込めて、真っ赤であろう顔でまた西園寺さんの事を睨み付けた。
だけど西園寺さんはそんな僕を見て、満足げに笑った。
こんなのを自宅に招くのはやはり恐ろしい気もするが、約束は約束だ。
それに下手にこの変態ストーカーと二人っきりになる危険性を思えば、親や妹が一緒な方がきっと百万倍マシだと思うから。
しかしこの時の僕は、まだ気付いていなかったのだ。
……予定を空ける必要があったのは、西園寺さん本人ではなかったという事に。
***
その日から西園寺さんは、僕の言いつけを守り、昼以外姿を見せる事が無くなった。
それにホッとするのと同時に、自分から言い出した事だと言うのに少しだけ寂しさを感じてしまうなんていうのは、気のせいに違いない。
そして約束の日の、ちょうど一週間前の土曜日。
……思わぬ事が、起きた。
自宅に帰り、夕飯後風呂から上がると両親が正座をして神妙な面持ちで、一枚の封筒を僕に向かい差し出してきたのだ。
あまりにも真剣な顔を彼らがしていたものだから、まさか父親がまた借金を拵えて来たのかと思い、僕にも緊張が走った。
しかし中から出てきたのは、A4サイズのカラフルな印刷物だった。
大好きな君にそこまで言われたら、仕方がないね」
デレデレとだらしなく鼻の下を伸ばしてそう言うと、彼は僕の小指に小指を絡めて、あろうことかそのまま自身の口元へ引き寄せ、ちゅっと軽く口付けた。
「んっ……!」
予想外が過ぎる奇行に反応して、つい変な声が出てしまった。
触れたのはただの唇で、小指の先になんてそこまで神経は通っていないはずなのに。
は……恥ずかしい。なんだよ?今の。
慌てて指を引っ込めて、真っ赤であろう顔でまた西園寺さんの事を睨み付けた。
だけど西園寺さんはそんな僕を見て、満足げに笑った。
こんなのを自宅に招くのはやはり恐ろしい気もするが、約束は約束だ。
それに下手にこの変態ストーカーと二人っきりになる危険性を思えば、親や妹が一緒な方がきっと百万倍マシだと思うから。
しかしこの時の僕は、まだ気付いていなかったのだ。
……予定を空ける必要があったのは、西園寺さん本人ではなかったという事に。
***
その日から西園寺さんは、僕の言いつけを守り、昼以外姿を見せる事が無くなった。
それにホッとするのと同時に、自分から言い出した事だと言うのに少しだけ寂しさを感じてしまうなんていうのは、気のせいに違いない。
そして約束の日の、ちょうど一週間前の土曜日。
……思わぬ事が、起きた。
自宅に帰り、夕飯後風呂から上がると両親が正座をして神妙な面持ちで、一枚の封筒を僕に向かい差し出してきたのだ。
あまりにも真剣な顔を彼らがしていたものだから、まさか父親がまた借金を拵えて来たのかと思い、僕にも緊張が走った。
しかし中から出てきたのは、A4サイズのカラフルな印刷物だった。
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
廃課金最強厨が挑む神々の遊戯
葉簀絵 河馬
ファンタジー
■本編完結いたしました。
人付き合いが下手な最強厨の男と、すべてを失った少女が最強を志す――
VRMMORPGファーアースオンラインを廃課金で最強を誇ったプレイヤー、フォルティシモ。
彼はある誘いを受けてファーアースオンラインそっくりの異世界へ転移する。
そこではフォルティシモを更に強くできると言われたが、実際はそんなことはなくカンストのままだった。更にその異世界では、ルールもよく分からないゲームが催されていて、いつの間にかフォルティシモも参加することとなってしまう。
これは最強厨の彼が更なる最強を目指し、異世界で自由に生きていく物語。
◆◇
家族に捨てられて奴隷として売られた少女、キュウ。
彼女は最強だけど少し変な主人に買われてしまう。
誰からも家族からでさえ望まれなかったキュウは、主人の歩みに合わせていくだけでも精一杯だった。しかし主人はキュウを物理的に強くさせ、その周囲に集まる多くの人々との出会いは、何も持たなかった少女を成長させていく。
これはすべてを失った少女が、最強に並び立つための物語。
その他要素:多視点、主人公チームチート、奴隷、ケモミミ、ステータス、AI
※フォルティシモ、キュウの二人を主人公だと思って書いています。
※状況描写、心理描写共に力を入れて書いていきたいと思います。
この小説は小説家になろう、ノベルアッププラスにも投稿しています。
【第10回ネット小説大賞 一次選考通過】
読んで頂けている読者の皆様、本当にありがとうございます。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される
ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。
瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。
国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・
もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・?
※設定はふわふわです
※差別的なシーンがあります
悪役令息の兄には全てが視えている
翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」
駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。
大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。
そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?!
絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。
僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。
けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?!
これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる