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良薬は口に、苦すぎる①

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 ちょうどタイミング良く出入り口を警備するが門番が交替する時間だったらしく、開いた門から私達はちゃっかり城の内部へと侵入した。

「で。城内の見取り図は、ちゃんと頭に入ってるんでしょうね?」

 リリィが手を繋いだまま、こそこそと聞いた。
 だから私は、即答した。

「ううん、全っ然!だってリリィが急かすから、見る暇もなかったじゃない」

 グッと言葉に詰まる、リリィ。
 乗馬用のパンツのポケットから見取り図を取り出すと、彼女はバッと私の手からそれを奪った。

「んー、そうねぇ。レイチェルが眠る医務室に行くには、こっちからが近そう」

 素早く地図を読み、私の手を引くリリィ。
 ちょっと屈辱な気もしないではないが、方向音痴なためここは素直に従う事にしよう。

「やっぱり警備は、厳重みたい。
 皆には見えていなくても、さすがにドアを開けたらバレちゃうわよね?」

 レイたんが眠っていると思われる、医務室の前まで到着すると、キョロキョロと周囲の様子を確認しながら聞いた。

「そうねぇ……。やっぱりこの際、強行突破しちゃう?
 私の炎でボヤ騒ぎでも起こして、その隙に突入するとか」

「絶対に、やめて!
 ……人様に迷惑は、なるべく掛けない方向で」

 なかなかの過激発言にドン引きし、慌てて制止した。

「冗談よ。アンタじゃあるまいし、そんな無計画で無鉄砲な真似、私がするはずがないでしょう?
 イザベラから私、良いものを預かってきたの。
 あの子は小娘と違って、ホンット有能よねぇ」

 チクチクと嫌味を言いながら、彼女はベストのポケットに手を突っ込み、スプレーのような怪しげな瓶を取り出した。
 誠に嫌な感じだが、ぐうの音も出ない。
 
 それでもやはり腹が立ったから、思わず地団駄を踏んで騒ぎ立てようとしたのだけれど、それはリリィに羽交い締めにされて止められた。
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