死亡フラグを回避しつつ、苛め役令嬢Bはツンデレが過ぎる悪役令嬢を全力で推していきたいと思います。

潜入セット、ゲットだぜ☆②

　きっと未来から来た青い猫型ロボットが、秘密道具を取り出す時の口調を真似たと思われる発言。

　しかしその声色が、似てはいるけれど旧バージョンなのは、彼女が私達とは違い憑依者ではなく転生者としてこの国に、16年も前に飛ばされてしまったせいに違いない。
　だから声の人、今はもう変わったんだよなどと突っ込むのは、野暮というものだろう。

　なので生暖かい笑みを浮かべたまま、私は静かに説明を待つ事にした。

「これはなんと、飲んだら時間を十秒間巻き戻せる魔法のお薬なんよ」

　確かに、すごい。
　魔女見習いのイザベラちゃんだったらきっと、大きな赤い瞳をキラキラと輝かせ、もっと食い付いたに違いない。
　でも……十秒って、微妙過ぎやしないか？
　しかも成分も、よく分からないし。

　……やっぱりこんなの、絶対に口にしたくないんだけど！

　そんな私の感情が、すべて駄々漏れになってしまっていたのだろう。
　パトリシアはセクシーな口元をへの字型に歪め、私の鼻先に人差し指を突き付けた。

「何やねんその、不満そうな顔！
　そこは素直に、ありがとうでええやん。
　使わんで済むに越した事は無いけど、あったら多少は安心出来るやろ？」

　確かに、その通りかもね。
　これから私とリリィはお城に乗り込み、レイたんに解毒剤を飲ませて、アリシアちゃんを地下牢から救出するという極秘任務にあたる予定だ。
　……十秒って短い気もするけれど、いざって時に、何かの役に立つかもしれない。

「ありがとう、パトリシア。
　大切に、使わせて貰うね」

　今度はにへらと笑って、素直に感謝の言葉を口にした。
　すると彼女はそんな反応は予想していなかったのか、頬を赤く染めてプイとそっぽをき、別に良いわよとだけ答えた。

　巨乳はストライクゾーン外だが、そのツンデレはなかなか悪くない。
　アリ寄りの、アリ！
　私がまた新たな性癖に、目覚めそうになった瞬間だった。