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悪女の掴んだ幸せ②

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「えーっと……こんな時に言うん、申し訳ないんやけど。
 ホンマにうちの事を想ってくれる人が誰なんか、今回の騒動でようやく気付けたんよ」

 そう言うとパトリシアちゃんは胸元に下げていたロケットペンダントを開き、中に嵌め込まれていた一枚の肖像画を私に見せてくれた。

 前世の記憶を取り戻す前、THE王子様代表といった感じの優男、皇太子殿下を追いかけ回していたパトリシア。
 だけど彼女が運命を感じたというその小さな肖像画に描かれている人は、彼とは似ても似つかないゴリマッチョな男だった。

「お、おぅ……!」

 なんと答えてよいか分からず、変な声が漏れた。
 だけど彼女はそれを気にするでもなく、頬を薔薇色に染めて続けた。

「うちな、前はいかにもイケメンって感じの人が好きやったんやけど。
 前世の記憶取り戻したら、顔の良し悪しなんかよりも生命力強くてたくましい男の人に惹かれるようになってん。
 たぶん前の自分が病弱で、すぐにポックリ逝ってもたせいやと思うんやけど」

 確かにこの男ならば、殺しても死ななさそ……ゴホン。生命力が、強そうだ。
 軽く引き気味な私の様子に気付く事なく、パトリシアちゃんの独白は続く。

「しかもな、彼……フレデリック様は騎士見習いとしてお父様の下で訓練受けるために、家に幼い頃から出入りしてたんやけど、ずっとうちの事が好きやったらしくて。
 ……屋敷内にうちは今回の騒動のせいで軟禁されてたのに、彼だけ心配して公爵家を敵に回すかも知れへんのに、こっそり会いに来てくれてん」
 
 恋は盲目とは、よく言ったものである。
 完全に目をハートマークにして、彼への想いを語り続けるパトリシアちゃん。
 それにちょっと胸焼けしつつも、彼女が幸せになってくれるの自体は嬉しかったから、気付くと私も笑顔になっていた。
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