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裏切り②
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確かにこの状況から思うに、パトリシアちゃんに裏切られたと考えるのは当然の事と言えるだろう。
それに彼女は記憶を取り戻した際に改心したと話していたが、それだって本当かどうかなんて、分からないではないか。
でも私には彼女を完全に裏切り者として断定する事が、出来そうになかった。
だって彼女もまた私と同じように『ルシタスフの風』の物語に魅せられ、この皇国に引き寄せられたひとりなのだから。
「リリィ、ごめん。
このまま、降下して。
……私がパトリシアちゃんと、直接話してみる」
私の言葉に、ぎょっとした様子で瞳を見開くドラゴン。
だけど私の決意が固いと理解したのか、リリィはフゥと大きく息を吐き出した。
「私はアリシアから話に聞いただけで、実際には会った事がないけれど、アンタはその子の事を信じたいのよね?」
なんだかんだ言いながらも、面倒見が良く優しいリリィ。
巻き込んでしまったのは申し訳ないけれど、もう後には引けない。
「うん。パトリシアちゃんは確かに良いヤツではないけど、私達を裏切るような真似をするとも思えない。
……だから、お願い」
優しく撫でながら、アリシアちゃんが以前していたみたいにその額にそっと口付けた。
するとリリィはちょっぴり困ったように笑い、呆れ口調で告げた。
「パトリシアの、部屋は分かる?
その付近の窓まで、寄ってあげる。
ただしチャンスは、一回きりよ?
そこに彼女が居なかったら、諦めてちょうだい」
「ありがとう、リリィ!」
今度は強く私が抱き付くと、リリィは不愉快そうに口元を歪めた。
「気持ちが悪いから、やめなさい小娘!
あとお礼を言うのは、まだ早いわ。
ちゃんと全てが、うまくいってからにしてちょうだい」
そんな風にぶつくさと文句を言いながらも彼女は申し出を聞き入れ、私の指示した通りパトリシアの部屋目掛けて急降下し始めた。
それに彼女は記憶を取り戻した際に改心したと話していたが、それだって本当かどうかなんて、分からないではないか。
でも私には彼女を完全に裏切り者として断定する事が、出来そうになかった。
だって彼女もまた私と同じように『ルシタスフの風』の物語に魅せられ、この皇国に引き寄せられたひとりなのだから。
「リリィ、ごめん。
このまま、降下して。
……私がパトリシアちゃんと、直接話してみる」
私の言葉に、ぎょっとした様子で瞳を見開くドラゴン。
だけど私の決意が固いと理解したのか、リリィはフゥと大きく息を吐き出した。
「私はアリシアから話に聞いただけで、実際には会った事がないけれど、アンタはその子の事を信じたいのよね?」
なんだかんだ言いながらも、面倒見が良く優しいリリィ。
巻き込んでしまったのは申し訳ないけれど、もう後には引けない。
「うん。パトリシアちゃんは確かに良いヤツではないけど、私達を裏切るような真似をするとも思えない。
……だから、お願い」
優しく撫でながら、アリシアちゃんが以前していたみたいにその額にそっと口付けた。
するとリリィはちょっぴり困ったように笑い、呆れ口調で告げた。
「パトリシアの、部屋は分かる?
その付近の窓まで、寄ってあげる。
ただしチャンスは、一回きりよ?
そこに彼女が居なかったら、諦めてちょうだい」
「ありがとう、リリィ!」
今度は強く私が抱き付くと、リリィは不愉快そうに口元を歪めた。
「気持ちが悪いから、やめなさい小娘!
あとお礼を言うのは、まだ早いわ。
ちゃんと全てが、うまくいってからにしてちょうだい」
そんな風にぶつくさと文句を言いながらも彼女は申し出を聞き入れ、私の指示した通りパトリシアの部屋目掛けて急降下し始めた。
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