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侵入②

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「それだ!」

 ガッとパトリシアの手を取り、言った。
 すると彼女は、小馬鹿にしたように嗤った。

「それって、どれやねん。
 忌まわしき魔女イザベラといえど、さすがにそんな古代の高等魔法は使えへんと思うけど?」

 確かにイザベラちゃんが使える魔法には、限界がある。
 魔力の弱い彼女はどちらかというと、派手で華やかないかにもっていう感じの魔法よりも、薬を作ったりする方が得意だと話していたし。

 それに姿を消す魔法なんていうものは、太古の昔に滅んだと伝えられている。
 だからそんなのは、物語の中にしか存在しないのだ。
 でも私が力を借りようとしているのは、彼女ではない。
 
「うん。私もイザベラちゃんの力を借りる気は、ないよ。
 ……お城には、ドラゴンに乗って乗り込む」

「はぁ!?
 アホなん?アンタ、やっぱり。
 目立つんはご法度やて、うち言うたよな?
 それに、そもそもの話。
 ドラゴンなんか、どこにおるんよ!?」

 大きな声で叫び、パトリシアがガタンと席を立った。
 確かにまさか巨大なドラゴンに乗って、お城にこっそり侵入しようだなんて、考える人間が他にいるだろうか?
 いや、いない。

 我ながらとんでもなく大胆で、いかれた作戦だとは思う。
 しかも現代のルシタスフ皇国では、ドラゴンなんて生物、絶滅したと信じられていたのだ。
 これって実は、かなりナイスな作戦なのでは?

 とはいえリリィを危険な目に遭わせるワケにはいかないから、侵入後は彼女……もとい、彼の力は借りる事なく、自力で乗り切るつもりではいるが。

「今頃ドラゴンはイザベラちゃんの家の庭で、水浴びでもしてるんじゃないかな?
 アホでけっこう、メリケン粉。
 ド派手に隠密大作戦、決行よ!」
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