死亡フラグを回避しつつ、苛め役令嬢Bはツンデレが過ぎる悪役令嬢を全力で推していきたいと思います。

情報量が、多すぎる！⑤

　まるで絹糸のように真っ直ぐで、柔らかそうな髪の色は、森の木々を思わせる深緑。
　肌は真っ白だがその頬には紅色の、何やら魔方陣のような、刺青みたいな紋様が刻まれている。

「えっと……。誰？」

　状況から考えて、その答えはひとつしかない。
　そう思いながらも、口をついて出た質問。
　うつむいていた少年の顔がこちら側を向いたかと思うと、まるで矢のように鋭い視線が私を射抜いた。

　しかしこの黄金色の瞳には、やはり見覚えがある。
　アリシアちゃんのペットのドラゴン、リリィの目と同じ色だ。

「……リリィ？やっぱりアンタ、リリィなのね！？」

　ガッ、と両手で頬を挟み、ガン見する。
　そしてそのまま男女を問わず美しいものLOVEな私は、思わず隅々まで舐め回すように見つめてしまった。
　すると少年はぎょっとしたように瞳を見開き、呆然とした様子で硬直したまま私にされるがままになっていたものの、しばらくするといつものように意地悪く笑った。

「当たり前でしょう？他に誰が、居るって言うのよ。
　……全く、ホント気持ちの悪い子ね」

　いつもならば腹を立てるところだけれど、美少年にならばこんな風に蔑むような視線を向けられるのは……良い。非常に、良い！
　もっと私を、罵って！

　はぁはぁと息を乱しながらなおもその姿を見つめたまま、綺麗だの可愛いだのを連発していたら、イザベラちゃんが二人の間に割って入ってきた。
　ヤバい。ようやく落ち着いたと思ったのに、またしても目がイっちゃってる！

「私はもしかして、夢を見ているのでしょうか？
　はぁ……本当に、なんてお綺麗なんでしょう！
　ドラゴン型の時も堪りませんでしたが、人型でもこんなにも美しく、神々しいだなんて……」

　その言葉には激しく同意はするけれど、それにしても。

　ドラゴンで、アリシアちゃん大好き(※ただし、その中の人は男)で。
　人型になると美少年で、なのに本人はお姉系・・・って。
　情報量が、多過ぎる！