死亡フラグを回避しつつ、苛め役令嬢Bはツンデレが過ぎる悪役令嬢を全力で推していきたいと思います。

情報量が、多すぎる！③

「……あなた、名前はなんだっけ？」

「えっと……私、ですか？イザベラ……と申します」

「ふぅん、イザベラね。
　めちゃくちゃ可愛い、良い娘じゃないの！気に入ったわ」

　一気に態度を軟化させ、アリシアちゃんに対するのと同じように、優しく穏やかな笑顔を振り撒くドラゴン。
　……私への態度とあまりにも異なるから、なんとなくムカつくんだけど。

「えっと……私なんて、そんな……」

　ブンブンと顔の前で照れ臭そうに両手を振りながら、否定の言葉を口にするイザベラちゃん。
　はぁ……でもやっぱり、確かに可愛い。天使だわ、ホント。　

　しかしさっきリリィが話していたように、今は時間が無いのだ。
　あまりの変わり身の早さに軽く引きながらも、ここはドラゴンのご機嫌がまた斜めを通り越して直角になる前に、とっとと採取を済ませるべきだろう。

「あのぉ……そろそろ、鼻水を……」

　こそこそと、瓶をドラゴンに向かい差し出す私。
　するとリリィは、小馬鹿にした感じでふんと笑って答えた。

「分かってるわよ、小娘。
　はぁ……あなた本当に、空気が読めないんだから」

「小娘じゃないわ！私は、ヴァイオレット。
　ヴァイオレット・コバン！」

　名前を聞かれていたイザベラちゃんの事が少しだけ羨ましくて、改めて今更ながら再び名乗ってみたのだけれど。
　……ドラゴンは、またしても鼻で嗤った。

「死ぬほど、どうでも良いわ。
　あなたなんて、小娘で充分よ！」

　ぐぬぬ、屈辱！

「あのぉ……ちょっと、すみません。
　鼻水を採取と言っても、そんなにたくさんは要らないので。
　ほんの三、四滴分けて頂ければ……」

　ボソボソと小さな声で、イザベラちゃんが控えめに会話に割って入ってきた。

「何よ、それ……。そんなちょっとで、良いの？
　小娘の口ぶりから、この瓶一杯にいるモノだとばかり思っていたわ」

　申し訳なさそうに、コクンと小さく頷く魔女見習いの少女。
　ギロリと私を睨み付ける、ドラゴン。

　でもそんなの、聞いてなかったし！
　それに大は小を兼ねるっていう言葉もあるように、足りないよりは多い方が良いじゃないか！

「とはいえやっぱり、不純物はなるべく避けたいので……。
　可能性であれば、リリィ様。
　……人間のお姿に、変身して貰っても良いですか？」