死亡フラグを回避しつつ、苛め役令嬢Bはツンデレが過ぎる悪役令嬢を全力で推していきたいと思います。

情報量が、多すぎる！①

「へぇ……ここがその、魔女見習いの子の家？
　中々良い所じゃないの！」

　リリィの背に乗せられ、全速力での地獄の空中ランデブーを終えたところだったから、私は吐きそうになりながらもふらふらと彼女の大きな体から降りながら答えた。

「そう？私には、よく分からないけど……」

　イザベラちゃんの邸宅はたくさんの木で覆われた、薄暗い山中にある。
　そう……ここは昼間でもあまりにもおどろおどろしくて、それこそホラー映画にまんま出てきそうな雰囲気の庵なのだ。

　しかし魔女やドラゴンからしてみたら、こういった所こそ居心地がよく、住みやすい場所なのかもしれない。
　……普通の感覚を持つ私から言わせて貰えば、ぶっちゃけあまり住みたいと思えるような環境ではないけれど。

「とりあえず、私がイザベラちゃんを呼んでくるから。
　アンタはそこで、おとなしく待っててね」

　よろめきながらもどうにか玄関まで
辿り着き、コンコンと二度ドアをノックする。
　するとちょこんとドアの隙間からイザベラちゃんは顔を覗かせ、私である事を確認してから扉を開けてくれた。

「ただいま戻りました」
　　
　にっこりと微笑んでそう告げると、彼女も嬉しそうに笑ってくれた。

「お帰りなさいませ、ヴァイオレット様。
　……ドラゴンの鼻水に代わる品は、手に入りましたか？」

　だから私はふるふると左右に首を振り、告げた。

「いいえ、残念ながら……」

　明らかに落胆した様子の、イザベラちゃん。
　でもそんな態度を取るのは失礼だと思ったのか、すぐに彼女はまた穏やかに微笑んだ。

「そう……ですよね。
　ありがとうございました、ヴァイオレット様」

「ですが代わりに、この子を連れてきました。
　リリィ、お願い。姿を見せて！」

　私の声を聞き、リリィが不可視化の魔法を解いた瞬間、その場に一匹のドラゴンが音もなく現れた。