54 / 95
魔女の目的④
しおりを挟む
それに唖然としていると、彼女は思わぬ事を言い始めた。
「……このルシタスフ皇国の東部では、現在たくさんの方が病に伏せているのだとか。
しかも命を落とす人まで、出始めたのだそうです」
涙を拭い、真っ直ぐに私を見上げるイザベラちゃん。
これはきっと先日シルヴィアちゃんが話していた、疫病の事を指しての事だろう。
少し迷いながらも、小さくコクンと頷き答えた。
「ええ、そのようですわね……。
私は学友から、噂話として聞いただけですが……」
するとイザベラちゃんは驚いた様子で、大きな瞳を更に大きくカッと見開いた。
「ヴァイオレット様も、ご存知だったのですね!?
まだこの当たりでは一部の魔女の間にしか、伝わっていないはずなのですが……」
お喋り好きなクラスメイトが、大騒ぎしながら教えてくれた情報。
極秘という感じでも無かったし、アリシアちゃんが途中で意識を失って倒れてしまった事もあり、有耶無耶になってしまったあの時の会話。
アリシアちゃんの言うように、小説よりも事件が起きる時期が随分早くなった原因を、人為的なモノだと私も結論付けた。
だけどもしかしたら小説内でも、病が発生したタイミングは、同じだったのかもしれない。
だってアリシアちゃんは物語の中で、シルヴィアちゃんに毛嫌いされていた。
だから単にあんな風に、父親が新聞の販売を商いとする情報通のシルヴィアちゃんとは、全くと言ってよいほど関わりがなかったはず。
憑依前は身分が低い上、レイチェルとパトリシアの両派閥から苛められていたせいで、友人の少なかったアリシア。
ミーハーな話題を嫌う彼女の唯一の親友であるカトリーヌも、恐らく噂話には疎いはず。
その結果、規模がかなり大きくなるまで、物語の中に疫病の話題が出てこなかったのだとしたら。
……今の段階であればもしかしたら、これ以上被害が拡大するのを食い止める事が出来るのではないか?
そんな風に考え込む私に、イザベラちゃんは小さな声で、おずおずと語った。
「だけど私は、あれは疫病なんかじゃないんじゃないかと思っているんです。
恐らくダマスエルの毒が、原因かと。
……まだハッキリとは、分からないのですが」
「……このルシタスフ皇国の東部では、現在たくさんの方が病に伏せているのだとか。
しかも命を落とす人まで、出始めたのだそうです」
涙を拭い、真っ直ぐに私を見上げるイザベラちゃん。
これはきっと先日シルヴィアちゃんが話していた、疫病の事を指しての事だろう。
少し迷いながらも、小さくコクンと頷き答えた。
「ええ、そのようですわね……。
私は学友から、噂話として聞いただけですが……」
するとイザベラちゃんは驚いた様子で、大きな瞳を更に大きくカッと見開いた。
「ヴァイオレット様も、ご存知だったのですね!?
まだこの当たりでは一部の魔女の間にしか、伝わっていないはずなのですが……」
お喋り好きなクラスメイトが、大騒ぎしながら教えてくれた情報。
極秘という感じでも無かったし、アリシアちゃんが途中で意識を失って倒れてしまった事もあり、有耶無耶になってしまったあの時の会話。
アリシアちゃんの言うように、小説よりも事件が起きる時期が随分早くなった原因を、人為的なモノだと私も結論付けた。
だけどもしかしたら小説内でも、病が発生したタイミングは、同じだったのかもしれない。
だってアリシアちゃんは物語の中で、シルヴィアちゃんに毛嫌いされていた。
だから単にあんな風に、父親が新聞の販売を商いとする情報通のシルヴィアちゃんとは、全くと言ってよいほど関わりがなかったはず。
憑依前は身分が低い上、レイチェルとパトリシアの両派閥から苛められていたせいで、友人の少なかったアリシア。
ミーハーな話題を嫌う彼女の唯一の親友であるカトリーヌも、恐らく噂話には疎いはず。
その結果、規模がかなり大きくなるまで、物語の中に疫病の話題が出てこなかったのだとしたら。
……今の段階であればもしかしたら、これ以上被害が拡大するのを食い止める事が出来るのではないか?
そんな風に考え込む私に、イザベラちゃんは小さな声で、おずおずと語った。
「だけど私は、あれは疫病なんかじゃないんじゃないかと思っているんです。
恐らくダマスエルの毒が、原因かと。
……まだハッキリとは、分からないのですが」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる