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魔女の目的④

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 それに唖然としていると、彼女は思わぬ事を言い始めた。

「……このルシタスフ皇国の東部では、現在たくさんの方が病に伏せているのだとか。
 しかも命を落とす人まで、出始めたのだそうです」

 涙を拭い、真っ直ぐに私を見上げるイザベラちゃん。
 これはきっと先日シルヴィアちゃんが話していた、疫病の事を指しての事だろう。
 少し迷いながらも、小さくコクンと頷き答えた。

「ええ、そのようですわね……。
 私は学友から、噂話として聞いただけですが……」

 するとイザベラちゃんは驚いた様子で、大きな瞳を更に大きくカッと見開いた。

「ヴァイオレット様も、ご存知だったのですね!?
 まだこの当たりでは一部の魔女の間にしか、伝わっていないはずなのですが……」

 お喋り好きなクラスメイトが、大騒ぎしながら教えてくれた情報。
 極秘という感じでも無かったし、アリシアちゃんが途中で意識を失って倒れてしまった事もあり、有耶無耶になってしまったあの時の会話。
 アリシアちゃんの言うように、小説よりも事件が起きる時期が随分早くなった原因を、人為的なモノだと私も結論付けた。

 だけどもしかしたら小説内でも、病が発生したタイミングは、同じだったのかもしれない。
 
 だってアリシアちゃんは物語の中で、シルヴィアちゃんに毛嫌いされていた。
 だから単にあんな風に、父親が新聞の販売を商いとする情報通のシルヴィアちゃんとは、全くと言ってよいほど関わりがなかったはず。

 憑依前は身分が低い上、レイチェルとパトリシアの両派閥から苛められていたせいで、友人の少なかったアリシア。
 ミーハーな話題を嫌う彼女の唯一の親友であるカトリーヌも、恐らく噂話には疎いはず。
 その結果、規模がかなり大きくなるまで、物語の中に疫病の話題が出てこなかったのだとしたら。
 ……今の段階であればもしかしたら、これ以上被害が拡大するのを食い止める事が出来るのではないか?

 そんな風に考え込む私に、イザベラちゃんは小さな声で、おずおずと語った。

「だけど私は、あれは疫病なんかじゃないんじゃないかと思っているんです。
 恐らくダマスエルの毒が、原因かと。
 ……まだハッキリとは、分からないのですが」
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