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毒④

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「あら?そちらにいらっしゃるのはヴァイオレット様と、シルヴィア様じゃありませんの?
 ……例の下賎な犯罪者と、仲良くしていた」

 鼻に掛かったような、甘ったるい声。  
 明らかに悪意が込められた言葉が発された方向に、顔を向ける。
  
 するとそこには、THE悪役令嬢(※ただし、雑魚)な雰囲気を垂れ流す、ひとりの女の子の姿があった。

 居たな!そう言えば。
 忘れていたわ、この人の存在そのものを。
 ……スッカリ、スッキリ。

 彼女の名前は、パトシリア・ドミニオン。
 物語を盛り上げる、もう一人の敵役公爵令嬢だ。

 レイたん率いる我々チームレイチェルが口撃・・を専門とするのに対し、こちらのチームパトリシアは主に物理攻撃を得意とする。
 要するにヒロインであるアリシアちゃんにジュースをぶっかけたり、パーティーで着る予定だったドレスをあらかじめ破っておいたり、彼女の私物をこっそり破壊したりといった、ベタで姑息な嫌がらせを担当しているのだ。
 
 ちなみにビジュアル的には、巨乳で垂れ目、赤茶色の巻き髪が特徴的な、セクシー系美少女である。
 ……正直あまり、好みのタイプではないんだよな。
 
 っていうかコイツ、怪しくない?
 レイたんに敵対心を剥き出しにしていた上、あからさまな嫌がらせをアリシアちゃんにしてきたのよね?
 ……このゲス度100%のパトリシアなら、やりかねん!

 でも、だとしたら。
 ……敵の懐に入り、内情を探るのが得策だろう。
 反吐が出そうなほど不快だったけれど、にっこりと微笑み答えた。

「パトリシア様、おはようございます。
 私も今話を聞いて、驚きましたわ!
 あれだけレイチェル様の世話になっておきながらあの女、まさかあんな事件を起こすだなんて……」

 芝居がかった口調で答えるとパトリシアは、訝るようにスッと目を細めた。
 逆に驚いたように見開かれた、シルヴィアちゃんの瞳。
 
 だけど敵を欺くにはまず味方から、という言葉もある。
 罪悪感にかられながらも、発言を続けた。

「パトリシア様の、言う通りでしたわ。
 やはりアリシア様は皇太子妃の座を狙う、女狐だったという事ですわよね。
 本当に、恐ろしい!」

 パトリシアの厚い唇が、満足そうにニタリと歪んだ。
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