死亡フラグを回避しつつ、苛め役令嬢Bはツンデレが過ぎる悪役令嬢を全力で推していきたいと思います。

ドラゴンなんて、原作には出てきませんでしたけど！？③

「きったねぇなぁ、全く......。
　ちょっとは美里にも令嬢らしさみたいなのが、身に付いたかと思ったのに」

　クククと笑いながらハンカチを取り出し、意地悪を言いつつもそっと私の口元を拭ってくれるアリシアちゃん。
　
　ヤバい。こんなのドキドキし過ぎて、心臓が持たない......。

　ひねくれてはいるものの彼女なりの優しさが嬉しかったのに、同時にちょっぴり照れ臭かったから、悪態を吐き誤魔化した。

「別に、良いでしょ？
　今はアリシアちゃんと、二人きりなんだから！」

　だけど彼女は全部分かってるよとでも言いたげに、ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべた。
　......ホント、性格が悪いんだから！

「それにしても。......ルシタスフ皇国には本当に、ドラゴンなんていう生き物が存在しているの？
　そんなの、物語の中には出てこなかったと思うけれど」

　疑問をまんま、口にした。
　すると彼女は何故か困ったように小さく笑い、告げた。

「うん、出てこないよ。
　それに個体数も少ないから、この国でも滅多にお目には掛かれない。
　だけど間違いなくドラゴンは、最初から皇国に存在してたんだ」

　最初からという言葉の意図するところが分からなかったから、聞こうとしたのだけれど。
　彼女はこれまで見せた事が無いくらい無邪気な、まるで子供みたいな笑みを浮かべて続けた。

「スッゲェ俺に懐いてて、めちゃめちゃ可愛いんだよ。
　今度一緒にアイツに乗って、デートしようぜ！」

　そんな事を言いながらじっと瞳を覗き込まれたものだから、自然と顔が火照るのを感じる。
　そんな私を目にした彼女は今度はまた感じの悪い微笑を浮かべ、言った。

「あー......でも、そうだ。
　先に、言っとくわ。
　いくら二人きりで出掛けたとしても、非力な俺を、絶対に襲うなよ」

　またしても変態扱いされ、口元がへの字型に歪んだ。