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死亡フラグが、立ちました④

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「ふーん、なるほどな。
 じゃあお前、イザベラと仲良くなったんだ?」

 アリシアちゃんは穏やかな口調でそれだけ言うと、艶やかな黄金色の髪を指先で弄りながらそっと目を閉じた。

 確実に怒鳴られると思い、ぎゅっと私も目を閉じ身構えた。
 しかし彼女は予想に反し、私の事を小さく華奢な体で抱き締め、ワシワシと頭を撫でた。

「でかした、美里!
 昨日俺は待ち伏せしてたのにイザベラに逢えなかったから、もう小説通りにしかならないのかなって、ちょっと諦め掛けてたわ」

 心底ホッとしたように、ニッと笑うアリシアちゃん。
 相手は見た目は可憐な、女の子なはずなのに。
 ......強く抱き締められると、胸が締め付けられるみたいにきゅんってときめいた。

 だけど彼女はそんな私の心情にはまるで気付く事なく、真剣な表情で何やらブツブツとひとりごとを言っている。
 それに少しだけムカついたから、顔には動揺を出さぬまま、そっと彼女から体を離した。

「どういう事?絶対に、罵倒されると思ったのに。
 ちゃんと説明してくれないと、分かんないよ」

 すると彼女はちょっと考えるような素振りを見せ、言った。

「昨日はレイチェルがイザベラと、初めて出逢う日だったんだよ。
 ......本当なら忌まわしき魔女と仲良くなるのはお前じゃなく、悪役令嬢のレイチェルだったんだ」

 その言葉に驚き、さっきまでの苛立ちだとかきゅんきゅんは吹っ飛んだ。

「え......待って。ホント、どういう事?
 だってそんなシーン、小説内には無かったわよね?」

 私の質問には答えず、アリシアちゃんはこれ以上は聞くなとでも言うように、ただ静かに微笑んだ。

 何度も何度も繰り返し読んだ、『ルシタスフの風』の物語。
 でもその中にレイたんとイザベラちゃんの出会いなんて、特に描かれてはいなかったはずだ。
 それは、間違いない。

 ......なのに何故アリシアちゃんは、そんな事を知っていたの?

 絶対的な信頼を寄せていた彼女に、この日初めて芽生えた猜疑心。
 それは消える事なく、いつまでも私の心に残り続ける事となる。
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