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天使達との宴①

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「まぁ!
 ではアリシア様は、お菓子作りが趣味なのですか?」

 驚いた様子で、レイたんが聞いた。

 アリシアちゃんが小説内で、ケーキだのクッキーだのを焼き、皇太子様に振る舞うシーンは何度も出てきた。

 だけどこの世界では、これは非常に稀有な事。
 だってご令嬢達は自ら動き、お菓子を作る事なんてほぼないからだ。
 それらは全て、パティシエの仕事なのである。

 そしてその家庭的なアプローチは、結果として皇太子様の心と胃袋をがっちり掴む事となる。

 さっきこっそり聞いた話だと、アリシアちゃんはそれを全部レイたんに押し付け......じゃなかった、譲ろうと考えているのだそうだ。
 本当に、抜かりが無い。

「今度一緒に、皆で作ってみませんか?」

 まるで何も企んでなんていませんよ、とでも言うように、アリシアちゃんは天使みたいな純粋無垢な笑顔を浮かべた。
 だけどその裏事情をすべて知る私は、この人を敵にまわさずに済んだ事に心から安堵した。
 ......だってこんなの、勝てる気がしない。

 でもレイたんは令嬢が自ら厨房に入るのを、躊躇するような素振りを見せた。
 テーブルの下、アリシアちゃんにまたしても足を軽く蹴っ飛ばされ、私も慌てて援護射撃にうって出た。

「あら、素敵!
 そう言えば皇太子殿下も、甘いものがお好きだとうかがった事がありますわ。
 レイチェル様の手作りであれば、きっと殿下もお喜びになるんじゃないかしら?」

 本来ならばこの台詞は私ではなく、アリシアちゃんの親友、カトリーヌちゃんのモノだ。

 物語では彼女のアドバイスもあり、皇太子様とアリシアちゃんの仲は進展していくのだが、当のアリシアちゃんが嫌がっている上、現在彼女は不在なので私が代わりに有効活用させて頂いても問題はなかろう。
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