19 / 95
天使達との宴①
しおりを挟む
「まぁ!
ではアリシア様は、お菓子作りが趣味なのですか?」
驚いた様子で、レイたんが聞いた。
アリシアちゃんが小説内で、ケーキだのクッキーだのを焼き、皇太子様に振る舞うシーンは何度も出てきた。
だけどこの世界では、これは非常に稀有な事。
だってご令嬢達は自ら動き、お菓子を作る事なんてほぼないからだ。
それらは全て、パティシエの仕事なのである。
そしてその家庭的なアプローチは、結果として皇太子様の心と胃袋をがっちり掴む事となる。
さっきこっそり聞いた話だと、アリシアちゃんはそれを全部レイたんに押し付け......じゃなかった、譲ろうと考えているのだそうだ。
本当に、抜かりが無い。
「今度一緒に、皆で作ってみませんか?」
まるで何も企んでなんていませんよ、とでも言うように、アリシアちゃんは天使みたいな純粋無垢な笑顔を浮かべた。
だけどその裏事情をすべて知る私は、この人を敵にまわさずに済んだ事に心から安堵した。
......だってこんなの、勝てる気がしない。
でもレイたんは令嬢が自ら厨房に入るのを、躊躇するような素振りを見せた。
テーブルの下、アリシアちゃんにまたしても足を軽く蹴っ飛ばされ、私も慌てて援護射撃にうって出た。
「あら、素敵!
そう言えば皇太子殿下も、甘いものがお好きだとうかがった事がありますわ。
レイチェル様の手作りであれば、きっと殿下もお喜びになるんじゃないかしら?」
本来ならばこの台詞は私ではなく、アリシアちゃんの親友、カトリーヌちゃんのモノだ。
物語では彼女のアドバイスもあり、皇太子様とアリシアちゃんの仲は進展していくのだが、当のアリシアちゃんが嫌がっている上、現在彼女は不在なので私が代わりに有効活用させて頂いても問題はなかろう。
ではアリシア様は、お菓子作りが趣味なのですか?」
驚いた様子で、レイたんが聞いた。
アリシアちゃんが小説内で、ケーキだのクッキーだのを焼き、皇太子様に振る舞うシーンは何度も出てきた。
だけどこの世界では、これは非常に稀有な事。
だってご令嬢達は自ら動き、お菓子を作る事なんてほぼないからだ。
それらは全て、パティシエの仕事なのである。
そしてその家庭的なアプローチは、結果として皇太子様の心と胃袋をがっちり掴む事となる。
さっきこっそり聞いた話だと、アリシアちゃんはそれを全部レイたんに押し付け......じゃなかった、譲ろうと考えているのだそうだ。
本当に、抜かりが無い。
「今度一緒に、皆で作ってみませんか?」
まるで何も企んでなんていませんよ、とでも言うように、アリシアちゃんは天使みたいな純粋無垢な笑顔を浮かべた。
だけどその裏事情をすべて知る私は、この人を敵にまわさずに済んだ事に心から安堵した。
......だってこんなの、勝てる気がしない。
でもレイたんは令嬢が自ら厨房に入るのを、躊躇するような素振りを見せた。
テーブルの下、アリシアちゃんにまたしても足を軽く蹴っ飛ばされ、私も慌てて援護射撃にうって出た。
「あら、素敵!
そう言えば皇太子殿下も、甘いものがお好きだとうかがった事がありますわ。
レイチェル様の手作りであれば、きっと殿下もお喜びになるんじゃないかしら?」
本来ならばこの台詞は私ではなく、アリシアちゃんの親友、カトリーヌちゃんのモノだ。
物語では彼女のアドバイスもあり、皇太子様とアリシアちゃんの仲は進展していくのだが、当のアリシアちゃんが嫌がっている上、現在彼女は不在なので私が代わりに有効活用させて頂いても問題はなかろう。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる