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ふたりきりの時間②
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「……ありがとうございます」
「お礼を言うのは、こっちの方だよ。
陸斗くん、ありがとう」
自分の作る料理が世界一うまいだなんて、さすがに思わない。
だけど彼に美味しいと誉めて貰えたり、幸せそうに食べて貰えるのは嬉しい。
出会った頃はこの人とこんな風にふたりきりで過ごす日が来るだなんて、考えた事も無かった。
なのにいまは西園寺さんと逢えない日が続くと、寂しいしつまらない。
彼のいない毎日なんて、もう僕には考えられない。
照れ臭くて視線を上げる事も、答える事も出来ない僕。
すると西園寺さんはクスリと笑って僕に向かって手を伸ばし、くしゃりと頭を撫でてくれた。
そしてさらにひとくち頬張り、言った。
「うん。やっぱり、本当に美味しい。
デザートも、あるんだよね?」
蕩けそうなほど、甘い微笑。
でもそこでいつもの天の邪鬼が顔を覗かせ、可愛くないことこの上ない言葉を告げた。
「ありますよ。とはいえ莉緒の好みに合わせて少し甘めに作ったゼリーなので、西園寺さんのお口に合うかは分かりませんけど。
それも食べたいなら、とりあえず温かいうちに全部食べちゃって下さいね?」
***
「あの……西園寺さん、上がりました」
一緒に入りたいという彼の申し出を丁重……ではなくかなりバッサリ拒絶して、一人でお風呂を借りた。
「髪、渇かしちゃったんだ?
俺が、したかったのに……残念」
何度も夜を共にしたけれど、やっぱりこういう雰囲気はなんとなく落ち着かないし、恥ずかしい。
僕の髪に触れ、当たり前みたいに毛先に口付ける西園寺さん。
いつもであればその手をピシャリと叩き落とし、毒のひとつも吐いてやるところだけれどこういう時は、いつもドキドキが勝り情けないぐらい余裕がなくなってしまう。
それが、少しだけ悔しい。
「お礼を言うのは、こっちの方だよ。
陸斗くん、ありがとう」
自分の作る料理が世界一うまいだなんて、さすがに思わない。
だけど彼に美味しいと誉めて貰えたり、幸せそうに食べて貰えるのは嬉しい。
出会った頃はこの人とこんな風にふたりきりで過ごす日が来るだなんて、考えた事も無かった。
なのにいまは西園寺さんと逢えない日が続くと、寂しいしつまらない。
彼のいない毎日なんて、もう僕には考えられない。
照れ臭くて視線を上げる事も、答える事も出来ない僕。
すると西園寺さんはクスリと笑って僕に向かって手を伸ばし、くしゃりと頭を撫でてくれた。
そしてさらにひとくち頬張り、言った。
「うん。やっぱり、本当に美味しい。
デザートも、あるんだよね?」
蕩けそうなほど、甘い微笑。
でもそこでいつもの天の邪鬼が顔を覗かせ、可愛くないことこの上ない言葉を告げた。
「ありますよ。とはいえ莉緒の好みに合わせて少し甘めに作ったゼリーなので、西園寺さんのお口に合うかは分かりませんけど。
それも食べたいなら、とりあえず温かいうちに全部食べちゃって下さいね?」
***
「あの……西園寺さん、上がりました」
一緒に入りたいという彼の申し出を丁重……ではなくかなりバッサリ拒絶して、一人でお風呂を借りた。
「髪、渇かしちゃったんだ?
俺が、したかったのに……残念」
何度も夜を共にしたけれど、やっぱりこういう雰囲気はなんとなく落ち着かないし、恥ずかしい。
僕の髪に触れ、当たり前みたいに毛先に口付ける西園寺さん。
いつもであればその手をピシャリと叩き落とし、毒のひとつも吐いてやるところだけれどこういう時は、いつもドキドキが勝り情けないぐらい余裕がなくなってしまう。
それが、少しだけ悔しい。
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