たとえこれが、恋じゃなくても

悪魔見習いとの契約③

　ドヤ顔をして、キラキラと黄金色の瞳を輝かせる悪魔見習い。
　まるで通販番組みたいな事を、言い始めたな。
　……めちゃくちゃ、胡散臭い。

　願い事なんて僕にはひとつしか無かったけれど、それは無理だとさっき言われた。

　それでも時を巻き戻す事が、本当に出来るのならば。
　……僕が聡哉の告白を受け入れたさえ、彼の自殺を未然に防ぐ事が可能なのではなかろうか？

「いいよ。契約、してあげる。　
　対価である僕の命を君に譲るのは、願い事がふたつ叶ってからで良いよね？」

　とはいえ僕が命を賭けても良いと思えるような願い事なんて、どう考えてもやはりひとつしか思い浮かばない。
　だから時間を巻き戻して貰ったら、それで終わりだ。
　みすみすコイツなんかに、魂を譲ってあげるつもりなんて微塵もない。　

　……悪魔見習いだなんて思えないほど素直で、人間の僕にあっさり騙されてしまうようなこの子には、ちょっとだけ申し訳ないけれど。

「やったぁ、毎度あり！
　じゃあお前の気が変わる前に、さっさと契約しちゃおう」

　僕の思惑に気付くことなく、満面の笑みを浮かべて飛び上がる彼。
　少しだけまた罪悪感を感じながらも、笑顔で答えた。

「うん、お願い。
　じゃあ、そうだなぁ……。
　三年と、一週間前まで時間を巻き戻してくれる？」

　すると彼は途端にモゴモゴと、口ごもった。
　それを不思議に思い、宙に浮かぶ悪魔見習いをじっと見上げたまま言った。

「オーイ、悪魔見習い君？
　……もしかして、出来ないの？」

　すると彼の薄紫色の肌が、見る間に真っ赤に染まった。