やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
上 下
141 / 175
第4章 星降る都市

【140話】 十戒士 襲来

しおりを挟む
 都市サンスインにあるとある建物が爆破される。
 爆破の元凶は現在この都市を支配する凶震戒、十戒士の1人クラディによるものだった。

 もちろん捕獲対象を死なせないために手加減はしていた、その際に他の都市から来ている騎士団の連中が出てくるのは想定内だった。

「か、囲まれていますね……」

 元よりサンスインにいた奴らと共に出てきた騎士団と思わしき人物は2人……
 捕獲対象は見当たらない、恐らくは隠して守ろうという魂胆なのだろう。

「あの小娘がいないな……まぁいいか、お前達全員潰してじっくりと探すとしよう!!」

 そう連中に言い放ち、殲滅を始めようとした時──背後、至近距離に敵意を感じた。

「──取った」


 ──奇襲成功だ。
 前方のチャーチス達に気を取られていた襲撃者のリーダーと思われる男、歳は20代前半くらいで右前髪をバックにかきあげたような黒髪が特徴的であり魔力からして十戒士の男の背後でジン器の短剣を振りかざしながら俺は確信する。

 俺達がいた建物が爆破されてすぐに俺は動いた。
 即座にヒョオナを人器の盾で落ちてくるガレキ等から守れるレイナに預け建物の奥に隠れるように指示をして俺はすぐに別行動を取った。

 独断によりチャーチス達との連携はない、それゆえに怪しまれる事なく爆速で奴の背後を取れたコイツを倒せばヒョオナは助かる、このまま両腕と両脚を折り戦闘不能に──
 
「そんなので僕を倒せると?」

 目の前の男は一瞬でこちらを向き、拳を俺へと突きつける。
 即座に俺を察知してさらには反撃……流石は十戒士、だが奴の拳よりも俺の短剣の方が先に到達す──

 その瞬間だった、奴の拳どころか何にも触れていないはずなのに俺は後方へ吹き飛ばされて家屋の壁に激突する。

 ──何が起こった!?

 困惑しながらも再度奴へ攻撃を仕掛けようとする、しかし体を何かで押し付けられいるかのように俺は壁から動けなくなっていた。
 動けなくなっている最中も俺の体に何か強い圧力でも掛けられて潰されているようだ。

「ぐうぅっうっ!!」

「そこで大人しくしてろよ」

 俺に冷たい目線を送りながらそう話す奴の周りには既に襲い掛かろうとしているチャーチスとヒマリがいた。
 奴が俺に気を取られている隙を狙って倒す気だ。

 チャーチスより早くヒマリが攻撃を仕掛ける、彼の真っ直ぐな刀が十戒士の奴に当たろうとしたが……その攻撃は寸前でかわされる。

「だから……」

 その直後奴はヒマリの腹部に拳を直撃させ深くめり込ませる。

「そんなので僕を倒せると思ってるの?」

 ヒマリも俺と同様に後方の家屋へ吹き飛ばされ身動きが取れない状態に陥る。
 次はチャーチスが奴に攻め入る、彼の手には人器である槍が握られておりそれを奴の顔に向けて突き刺そうとする。

 奴は槍が来ることを察知し回避する、しかしその時完璧には回避出来ず頬にかすり傷がついた。

「チッ、貫けねぇ!」

 今度は奴の反撃、槍を伸ばし切っているチャーチスに向かって俺とヒマリと同様に拳が放たれる!
 アレが俺に向けたのなら拳が直撃せずとも何か見えない攻撃がくる
 そんな俺の心配をよそにチャーチスは回避の動きを取った、彼にダメージを負っている様子はなく戦闘を続けている。

 まさかチャーチスには奴の攻撃を見切れるのか!?
 そんな俺の考察をよそに2人の戦闘は続くとはいっても至近距離でのそれぞれ攻撃しては回避、それの繰り返しだ。

「……なるほどそういう魔法か」

 奴がそう呟いた瞬間、今まで一回ずつ振っていた拳を連続で振ったのだ。

「なっ──」

 奴の行動に驚きながらもチャーチスは槍を前方に振る、前から来ている攻撃を弾くかのように。
 しかしそれでも押されているようでついに奴の攻撃がチャーチスに直撃したようで体が後方に飛ぶ。
 その後も奴の放つ何かによってチャーチスは攻撃を負わされていく。

 その時……俺の体にかかっていた負荷が少し緩んだ、おそらく奴はチャーチスとの戦闘に気を取られて俺の方に集中出来なくなっているんだ。

 ならチャーチスに加勢しろ!好きだとか嫌いだとか関係ない、勝つ為に!!
 俺はすぐにその場から跳躍して上空へと飛んだ。

「──接続」

 ジン器を接続する、形態は弓。
 チャーチスに当たらない角度で奴に無数の魔力の矢を当ててやる!
 俺はチャーチスに当たらないように奴に向かって無数の魔力の矢を放つ、奴は俺が矢を発射した瞬間にチャーチスを吹き飛ばした。
 奴の魔法はおそらく拳から何かを発射する魔法!ならこの無数の矢を弾き落とすのは不可能!!

 ──その程度の魔法で十戒士になれるのか?

 脳内に現れた不吉な考え、俺はすぐに振り払って奴を見た今頃無数の矢を受けている頃……

 しかし俺の矢は一本も奴には当たっていなかった……何故なら俺の矢は奴の前の地面に打ち落とされていたからだ。
 いや打ち落とされたというよりは地面にへばりついて動かなくなっていた。
 
 そしてその時俺は奴の魔法を察する。

「重力魔法か!!」

「その通り」

 重力、ならおそらくさっきまでの攻撃は!?
 重力は確か鉛直下方向にしか影響がないはず!!
 
「さっきまでの不思議か?答えてやるよ
さっきまでの攻撃は空気を重力で1箇所に固めてそれを発射した……それだけのこと」

 奴は余裕を見せるかのように解説した。
 だけどその余裕が命取りだ。
 俺は奴の解説を聞きながら彼等を視界に入れていた。

 "今度は単独ではなく、部隊としての攻撃だ"

 俺が見ていたのはヒマリとチャーチス、彼等は再びタイミングを合わせ攻撃を奴に仕掛けにいった。
 奴の行動を見て一つわかった事がある、俺はそれを利用する為に2人と攻撃のタイミングを合わせにいった。

 奴の周りにはすでに俺ヒマリチャーチスがそれぞれ別の方向から囲まれていた。

 奴の重力魔法……俺の矢を打ち落とした時、何故打ち落とす前にチャーチスを飛ばしたのか?俺なら出来るんだったら自分の周りに重力負荷をかけチャーチスもろとも矢を落とす。
 それをしないって事は、おそらく奴は360°じゃなくて一定の角度にしか重力の負荷をかけられない。

 そう踏んでの3方向からの同時攻撃。
 他2人がその事に気付いてるかどうかなんて知らないけど、この機会を逃す訳にはいかない。

「お前らの行動的に俺の魔法が全方位には出来ないと思ってるだろ?
それは正解だ……"普通"ならな」

 俺達に囲まれているのに奴は冷静に言葉を放った。

「──結界魔法、グラヴィトン・シーナ」

 奴がそう唱えた瞬間、奴を中心として魔力のどーむが出来上がり俺等3人全員そのドームに巻き込まれ地面に叩き落とされた。

「ぐぁっっ……!!」

 さらにさっきとは比べの間にならない重量が俺の体にのしかかり指一本動かす事が出来ない。
 重力だけじゃない……この"空間"そのものが変わってるようで、まるでバクトリの!?

「こっ……れは、結界魔法!?」

 重力に押し潰されながらもチャーチスの驚きの声が聞こえていた。
 結界魔法!?それって確かバクトリが使っていた……

 重力による負荷がどんどん強くなって……

「ひとまず自己紹介からな、僕の名前はクラディ・レイオン"一応"十戒士が1人
そして魔法はこの通り重力魔法、よろしくな

……と言っても聞いてないか」

 グラディは結界魔法を解く。
 彼の足元ではさっきまでの威勢の良く自分に攻撃を仕掛けてきた3人が地面にめり込み動かなくなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。 特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。 その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった! 吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか? ※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...