やさしい異世界転移

第4章 星降る都市

【131話】 新たな任務！

　パゼーレ襲撃から早数日が経過した。
　都市の被害は甚大なものであったが、騎士団や元盗賊団そして街の人達の助けもあり都市は徐々に復興を遂げていった。

　俺も昨日まではその復興に駆り出されていたが今日俺はとある部屋の前まで来ていた。
　そこには以前来た事があった。
　この部屋はセリティアさんの部屋でどうやら襲撃事件ではかろうじて無事だったらしい
　そして俺がここに呼ばれたのは俺に任務があるというそうだ。

　俺は部屋の前で呼吸を整える。
　ここにいる人はこの都市の最高権力者であり俺がこの世界に来てからお世話になった人でもあり更にはとても綺麗な容姿の持ち主だ緊張しないわけがないのだ。

　俺は呼吸を整え終えて部屋の扉を叩く。

「どうぞ」

　扉を叩いた後扉の向こう側から一言入室のための許可をもらう。

「失礼します」

　許可を得た後俺は一言言いながら扉を開けて部屋へと入った。

　そして部屋には数名いて、真正面にはこの部屋の主セリティアさんがいた。
　そしてその次に俺の目に写った人は。

「レイナ！」

「ユート！！」

　そう俺の学園での同期であるレイナが部屋にはいた。
　緊張する場面で知り合いがいた事を知って俺の中の緊張が少し和らいでレイナの隣へと移動した。

　しかしその瞬間はすぐに終わった。

「静かにしろよ、まったくこれだから子供は……」

　俺とレイナが話そうとした時、その言葉が横の方から聞こえてきて俺とレイナは話すのを止めその声の方を向いた。

　俺はその声の主を知っている。

　茶色い髭で中年の男、そう彼は俺がこの世界に来て初めて会って初めて危害を加えてきた人。

　名前は……確か……

「ちょっとチャーチスさん」

　彼の隣にいた男がなだめる。
　そう彼の名はチャーチスでその隣にいる人はあの時チャーチスと一緒にいた人だと俺は思い出した。
　どうやらこの部屋に呼ばれたのは俺を含めた4人だけのようだった。

　こんなところで俺と彼は再開を果たしたのだった。
　はっきり複雑な気持ちではある。
　一応は彼の事を許してはいたがそれでも彼と再開した今、彼に刺された足が少し震えているのがわかった。

　そうして俺とチャーチスはしばらく真正面から睨み合うかのように向きあって場の空気が悪くなっていった。

「ひとまず本題に入りますね」

　セリティアさんはそれを察したのか割って入ってくるように話を始めた。

　セリティアさんが喋った為、俺とチャーチスは彼女の方をすぐに向く。
　そういえば彼はセリティアさんの事を物凄く尊敬しているんだっけか……

「今回あなた方にお願いしたい事は
都市【サンスイン】の調査です」

　セリティアさんから任務の内容が告げられた。
　サンスイン……？聞いた事ない都市だ、それに調査とはその都市でなにが起こっているのだろうか？と俺は疑問に思った。
　その時チャーチスの隣にいた人が口を開く。

「サンスイン……と言いますと、星降る都市のことですか！？」

　星降る都市……またしても聞いたことのない単語だ。

「えぇそうですよ」

　俺が出された単語をいまいち理解出来ていない隣でセリティアさんは肯定の言葉を述べた。

「調査内容を教えてもらってもいいですか？」

　セリティアさんの言葉を聞いたチャーチスが真面目な声で調査について尋ねた。

「はい。実は数日前からサンスインからの連絡が何故か途絶え、その後各都市から調査員を派遣しましたが帰ってきた者がおらず……そこで私達パゼーレにはサンスインで起こった異変、そしてそこの住民や調査へ向かった者達の安否についての調査となります」

　セリティアさんは男の質問にそう答えた。
　連絡が途絶えた都市……更には調査に向かった人達までその消息を絶った。
　確かにその都市で異変が起こっているのは間違いない、だけど……

「ひとつ、質問いいですか？」

　俺が依頼について考えていると隣にいたレイナがセリティアさんに対して発言の許可を得ようとする。

「えぇ、構いませんよ」

　それに対してセリティアさんは快く承諾する。

「ありがとうございます、それでは……なぜこの依頼を私達だけに任せてくださる理由を教えてください。
住民を含めた大勢の人間が危険に晒されている可能性があるのにそれに対して私達4人だけというのは少ないと感じました」

　レイナは質問の許可をもらった事に感謝してすぐに質問を始める。　
　事態に対して対応する人間が少なくないのか？という質問だった。
　それに対してセリティアさんは真っ直ぐレイナを見ながら口を開いた。

「そうですね、あなたたちだけでこの依頼をお任せする理由は単純です。　
人員不足……パゼーレは先の襲撃で多くの被害を受けました、その為復興に人員を割いてしまってる為少数での編成になりました」

　セリティアさんは質問の答えに人員不足だと答えた、確かに元盗賊団の連中が加わったと言ってもそれでも今の騎士団の総数は以前に比べて少なくなっている。
　だから依頼ではなく復興に人員を割いてる今のパゼーレでは大規模な部隊の編成は出来ないという事だろう。

　そしてセリティアさんの言葉はまだ続いていた。

「本当ならこの依頼は受けない方がパゼーレにとっても良い事なのでしょうが……そうなってしまうと私達パゼーレと他の都市との関係が崩れてしまう可能性がありました……
ですので今回の依頼は少数で尚且つ優秀な人材を集めての編成にしました」

　セリティアさんは他の都市との関係についても考えての判断だそうだ。
　優秀……？俺が？他にもディーオンさんやらゼンさんやら強い人はたくさんいるだろうに……
　おそらく凶震戒の襲撃を警戒しての今回の依頼不参加なのだろうか？

「他に質問は？」

　セリティアさんは質問に答えて終わった後、その場にいる全員を顔を見渡すようにする。
　
　しかし声を上げる人は出ない。

「質問がないようなので、これにて解散とします。出発は翌朝です。
今日は帰宅し依頼のための準備を行ってください」

　セリティアさんはそう言って締める。
　解散となってチャーチスと隣の男がセリティアさんに頭を下げた後部屋を出ようとする。
　その瞬間、チャーチスから睨まれているのを感じ取る。

　彼にも色々と言いたい事があるのだろうと、その場では特に言わず2人が出た後俺とレイナもセリティアさんに頭を下げて部屋を出て、新たな戦いのために自室へと戻った。