やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
上 下
54 / 175
第2章 マジックフェスティバル

【53話】 暗がりに差し込む光

しおりを挟む
 2回戦目が始まる前まで時は戻る。
 会場のとある密室でレイナは目を覚ますところからだ。

 私は目を覚ました。
 私がいるのは長細い部屋 私の反対側である向こう側の右方向には出口と思われる扉が見えた。
 そして私の目の前にいる2人の男にも気が付いた。私の事を見てニタニタと気味の悪い顔をしていた。
 今現在私は両手を後ろの鉄柱に拘束されている状態だった。特に衣服等の乱れは感じられなかった。

「あ、あなたたちはいったいだれ!?なんでこんなことを……」

 私は目の前にいる男達に向かって問いただした。今の状況に恐怖を感じ体を震わせながら。
 昨日 私は彼に"明日の朝会場に来てくれ"と呼び出されて。会場に着くと後ろから誰かに襲われて目が覚めたらこの状況だった。

 今思えばあの時の彼の声は魔法で偽装されたものなのだろう。

「いやなに、君には試合が終わるまでここにいてもらいたいんだよ。そしたら記憶を消して解放してあげるからさ。
でもまぁ、少しくらいは楽しませてもらうけどね。」

 ───!!
 男の下卑た声 私の身体を舐め回すように見ているニヤらしい目。2人の男が私に気味の悪い感情を向けてきた。

「それじゃあ起きた事だし、お手付きといきましょうかね!!」

 さらに男が手を私に近づけてくる。
 その手はいやらしい動きをしており 私になにをしてくるかなんて嫌でも想像がついてしまう。

 そんなのはいやだ。

 私は思い切って 拘束されていない脚で手を近づけてくる男を思いっきり蹴った。

「いっって!!」

 蹴りは男の足に見事に命中して男は痛みで私から少し遠ざかった。

 どうだ!私だってやれば出来るんだ!!
 と心の中で少し自慢してみる。

 けれども現実はそう甘くはなく。

「このクソ女ァ!!」

 腹部に痛みが走る。

「ごっ……」

 蹴られた事で逆上した男が私のお腹に向かって殴ってきたのだ。

 それから何発か体の至る所を殴られる。
 もう1人の男はただその光景を見ているだけだった。

「はっーはっー……もういいやるぞ。」

 殴るのをやめた男が刃物を取り出す。

「ん?いいのか勝手にこんな事。」

 見ていた男が反応した。

「別にいいだろ?俺たちはアイツにここまで従わされるなんて嫌だぜ。」

 何か会話をしている。私はおとこが取り出した刃物を見ている。
 いったいその刃物でなにをするというのだろうか。私の事でも殺そうとでもいうのだろうか。
 そんな不安が脳内をよぎる。

 嫌だ 嫌だ 嫌だ
 まだ私は。

「まぁいいか。そのかわり俺にもやられてくれよ。」

 どうやら話し合いは終わったみたいだ。
 2人して私に近づく。脚でまた男達を蹴る事も出来るのだろうか 抵抗してまたさっきと同じような目に遭うのが怖くてなにも出来なかった。

「おら、下手に動くなよ。もしかしたら服ごとその白い肌が切れちまうかもしんねぇからよ。」

 男がニヤケながら刃物を私の服に当てる。
 ……あぁそういうことか。

 これからわたしがされる事を察する。
 もう抵抗する意思も 逃げ出せる希望もない。
 刃物が少しずつ私の服を切ろうとする。
 もうダメなんだ 私はもう……。

 諦めの考えで頭の中がいっぱいになる。

 けれどその中でも諦めとは違う考えがあった。

 ──助けて。

 彼の顔を思い浮かべる。
 いつでも私の事を助けてくれる人 私の心の支えになってくれてる人。
 私の特別な人。

 こんな時でも助けれくれると信じるなんて私ってほんとバ……

 男が服を切り裂こうとした瞬間だった。

 私から見て奥にあった扉が大きな音を立て倒れ外の光が部屋に入り込む。

 扉を壊した本人が部屋に入ってくる。
 その人は ユート だった。

 ユートは私の方を見る。ユートは私が殴られたと思われる傷が目に入った。

「……てめぇら」

 ユートの声は今まで聞いたことがない冷たくそして憤怒の感情が詰め込まれていた。

「な、なんでお前がここに!?」

 ユートを見た男は驚いていた。どうやらここが見つからないという自信があったのだろう。

「そりゃ立ち入り禁止の場所に人の反応が3つもありましたからね。結構すぐわかった」

 ひょこっと誰が顔を出して説明する。
 いったい彼は誰なのだろう?

「お前ら、覚悟はいいか?」

 ユートは静かに 怒りのこもった声で男2人に威嚇をしながら近づいてくる。

「そ、それ以上近づいて来やがれ!こいつがどうn……」

 私を人質にしようとして刃物を突き付けようとした男の言葉は最後まで言わされる事はなかった。

 ゴッッ!

 鈍い音と共に私を人質にしようとした男が倒れていた。
 彼の直近にはユートが立っており私を人質にしようとした瞬間に殴り倒したのだと察した。

 もう1人の男はユートが相方を倒したことに気がつくのが遅れてしまい反応する前にユートに胸ぐらを掴まれ顔面を殴打される倒れ込む。

 あっという間に2人を殴り倒したユートは魔性輪から短剣を出して短剣で私の拘束を壊した。

「ごめん、遅れた。大丈夫……か?」

 彼の言葉さっきの冷たい声とは変わり暖かくやさしい声色をしていた。
 緊張の糸が途切れる。さっきまでの恐怖から解き放たれた反動で目には涙が溢れる。

「うん……うん。」

 泣きながら返事を返す。

「あの──そろそろ2回戦始まりますよ。」

 後ろにいたユートとついてきた黒髪の青年が申し訳なさそうに会話に入ってくる。
 
 そうだ!ユートの試合!!

「いや、こいつら突き出さないとだし、それにこいつらに詳しく事情を聞かないと……
こいつらは多分単独犯じゃねぇ、だから指示を出した奴を聞きださねぇと」

 ユートは倒れている男に目線を落として言う。このままだとユートは試合に出ないような気がした。  

 それは嫌だ。だから……

「もう大丈夫だよユート。だからユートは行って」

 ユートを安心させるように言った。

「そうですよ。この2人はデイ達と合流してちゃんと拘束しておきます。」

 私の言葉に便乗して青年は言った。

「それにコイツらに指示を出したであろう人物……まぁ察せます」

 その青年の言葉にユートは強く反応する。

「本当か!?いったいそいつは……」

 ユートはすぐに青年のところへ行って両肩を掴み真の犯人について聞き出す。

「簡単な話です。昨日のドウ、そして今日レイナがいない事であなたが試合に参加しなくなる。そうして得する人がいます。
そしてその人はこの2人と同じ学園の生徒……誰だかわかりますね。」

 青年はユートに問いかける様にはなす。
 それを聞いた瞬間ユートは納得した様な顔をして。

「なるほど、アイツか……」

 小さく、そして冷たい声で彼はそう呟いた。

「……わかった、ここは2人に任せる。俺は試合に行ってくるよ」

 少し悩んだのか間を置いてユートは試合に出ると判断する。

「うん……無茶はしないでね」

 私はユートをそう言った、彼の勝利が不安なわけじゃない。
 今の彼の目を見るとこのままじゃ彼が彼じゃなくなるとそう思えたからだ。

 ユートはその言葉を聞いて笑顔で手を振りながらグラウンドの方へと走って行った。

「さてと僕達もやりますかね。」

 青年が体を伸ばして言う。けれどこの人って……

「あの……すみません誰ですか?」

「……えっ?」

 この青年が魔法使用時のパートリーだと知らされるたのはこの後すぐだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。 特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。 その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった! 吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか? ※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...