やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
上 下
26 / 175
第1章 転移!学園!そして……

【25話】 その後

しおりを挟む
 見知らぬ天井だ。

 と目を覚ました俺はありきたりな感想を抱いたがすぐさっきまでの出来事を思い出していた。
 先程まで俺は、中庭でレイナの魔力暴走を止める為にあの吹雪に入ってそして……

 そうだレイナ!
 レイナの安否が気になった俺は体を起こす。

 体を起こして辺りを見回した。
 どうやらここは中庭じゃなく、何かしらの部屋のようだ。
 見た事ない場所だったが、見ただけでここがどんな場所かわかった。

 白いベッド、薬品の入った棚どうやらここは医務室とかなのだろう。
 行った事が無かったがこんな感じなのか、元の世界とはそう変わらない感じなんだな。

「もう起きたのかい」

 俺は部屋にいた人物に気付いた。
 椅子に座り、机に肘をついている人は白髪でシワシワの年老いた女性だった。
 どうやらこの人が、この学園の保健師のようだ。

「まったく無茶な事したね、あと少しあの吹雪の中にいたらアンタ死んでたよ」

 保健師の人は強い言い方で俺に言う。
 確かに無茶な事だったし、死んでいてもおかしく無かったから、まぁ反論は出来ないな。

「デイのおかげで助かりましたよ。そんな事よりも、俺以外にもここに運ばれた人がいると思うんですけど、その人達は大丈夫だったんですか!?」

 俺はレイナとユイン達の安否を聞いた。
 周りを見渡しても、俺とこの保健師さん以外は誰もいなかったからだ。

「アンタより怪我が酷い娘はいなかったよ。黄色い頭の子が連れて来た2人は本当に軽い怪我程度だし、アンタと一緒に運ばれた娘は腹部の刺し傷を魔法で凍らせてたみたいでそんなに重傷じゃなかったよ。」

 保健師の人は俺に他の3人の怪我の具合を教えてくれた。
 とりあえず酷い怪我をしている奴はいないようで安心する。

「そうですか、みんな無事ならよかったらです。それじゃあ俺も帰りますね。」

 俺は近くにあった窓の外を見て、今の時間が大体夕方だと気付き自室へと帰ろうとする。

「わかったよ、わたしの魔法であらかたアンタの処置は済んでいるから、もう大丈夫な筈だからはやく帰りな。」

 保健師に人は帰って良いと許可してくれた。
 その保健師の人に言われて、俺が怪我してた事を思い出した。
 そういえば確か結構体がボロボロになっていた気がしたが、まぁこの保健師の魔法で治ったって言うんだから気にする必要はないか。

 俺は自分の部屋へと帰ろうとして保健室の扉へと向かう。
 扉へ向かう途中、保健師の人を通り過ぎた瞬間俺はふと思い出したかのように保健師の方を振り返った。

「そうだ、名前まだ聞いていませんでしたね。聞いてもいいですか?」

 そういえば名前を聞いていないなと思い、俺は保健師の方を振り返って聞いた。

「!?……まったく、人に名前を聞く時はまず自分から名乗りな。」

 保健師の人は俺が振り返った瞬間、ビクッと体が動いてそれと同時にガサガサッと袋が擦れる音が聞こえた。
 よく見ると、その保健師の足元に隠すように袋が置いてあるのが見えた。
 中に入っているのは紙だろうか、何か書いてあるのはわかったが、ここからでは見えない。

 袋は気になったが、それはそれとして俺は保健師の人の言葉に答える事にした。

「す、すみません。俺の名前はユウト・シンドウって言います。」

 俺は保健師の人に言われた通り、自分の名を名乗った。

「それでいいんだよ、わたしの名前はチユ・ナオシってんだい。」

 少し微笑んで、チユさんは自分の名前を名乗った。

「ありがとうございましたチユさん。それじゃあまた。」

 名前を聞いた俺は感謝の言葉を述べて、保健室を出ていった。


「ふぅ……あの子大丈夫かね。」

 優斗が出ていった保健室でチユは袋の中を見ながら呟いた。
 その袋に入っていた紙に書いていたのは、優斗に対しての数々の罵倒の文字だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです

熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。 そこまではわりと良くある?お話だと思う。 ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。 しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。 ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。 生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。 これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。 比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。 P.S 最近、右半身にリンゴがなるようになりました。 やったね(´・ω・`) 火、木曜と土日更新でいきたいと思います。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。 特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。 その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった! 吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか? ※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...