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しおりを挟む「ああ。ロビン、そろそろ戻る時間かな。」
「•••はい。」
ロビンは、主であるエリックに声を掛けられているのにも関わらず、眉を寄せ睨むようにキャロラインを凝視していた。
「ロビン。キャロライン嬢は、パトリシア様と一緒に来られたんだよ。今、パトリシア様が兄上と話されているから、私が案内していたんだ。」
エリックの説明を受け、漸くロビンの眉間の皺が消えた。
「ああ。ロビン、今日はもう帰って良いよ。キャロライン嬢を送ってあげて。」
「い、いえ。お気になさ•••。」
「分かりました。送ります。」
キャロラインが断る前に、ロビンが喰い気味で了承してしまった。キャロラインは真っ青になるが、ロビンもエリックも気付かない。
「キャロライン嬢。兄上たちはまだ逢瀬を楽しみたいだろうし、先に帰ったと伝えておくから安心して。先程の約束、どうか宜しくね。」
誰もが見惚れる微笑みも、ロビンのことでパニックに陥っているキャロラインは見惚れることはない。気もそぞろに、挨拶をし、ロビンに連れられ帰路に着く。
◇◇◇
「体調、大丈夫なの?」
重苦しい空気の馬車の中で、ロビンは徐ろに口を開いた。
(そうだ、体調不良のことはロビンも知ってるんだった。)
ただの仮病だったので気まずさはあるが、顔に出さないように注意を払いながら返事をする。
「もう大丈夫よ。ありがとう。」
「お見舞い、行けなくてごめん。」
ロビンらしくない言葉に目を丸くする。嫌っている相手を思いやれるロビンに感心してしまう。
「ううん。ロビン、エリック殿下の側近になると聞いたわ。忙しかったでしょう。」
「ああ。すぐ慣れるとは思う。それより、エリック殿下とは何の話をしていたの?」
「今度の舞踏会でエスコートして下さるって。」
「は?」
私のような者が、エリック殿下にエスコートされるなんて意外だったのだろう。ロビンが珍しく驚愕していた。
「私がエスコートして頂く相手がいないと言ったから、同情して下さったんだわ。」
「エリック殿下となんて•••。」
「ええ。根も葉もない噂を立てられるかもしれないわ。だけど、婚約者探しのチャンスかもしれないと思って。」
「は?」
「ほら、私ももう婚約者を決めないといけない時期でしょう。私は見た目が悪役のようだから、見初めてくれる殿方はいないかもしれないけれど、社交の場に積極的に出たら、いつかは見つかるかもしれないわ。」
(だからね、ロビン、心配しないでね。結婚してほしいなんて、もう願わないから安心してね。)
ロビンへの懺悔の思いが込み上げてきた私は、ロビンの表情の変化に気が付かなかった。
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