【完結】あなたから、言われるくらいなら。

たまこ

文字の大きさ
上 下
9 / 13

しおりを挟む


 翌朝。


 熱が下がらない私を、両親も、バーサも、他の使用人たちも心底心配してくれた。私は退屈を感じながら、ベッドの住人となっていた。



「……お嬢様。」


 バーサは複雑な表情で私に近付いた。バーサの手には大きな、色とりどりの花束が抱えられている。


「まぁ!可愛い!」


「……ジェレミー様からお見舞いです。」


「え……?」


「ジェレミー様から、お嬢様へ面会したい旨の連絡があり、お嬢様の体調不良を伝えたそうです。……私は廃棄しようとしたのですが、侍女長にお嬢様に確認しないでそんなことをしないようにと怒られてしまいました……。」


「ふふふ。」


 ジェレミーからの花束、ということで多少動揺したけれど、廃棄できずに悔しそうにしているバーサが可愛くて、私は思わず笑ってしまった。


「バーサ、ありがとう。お花に罪は無いし、こちらに飾ってちょうだい。」


「……分かりました。」



 バーサは、渋々、本当に不本意、と言った様子で私の部屋に花を飾った。その様子があまりに可笑しくて、私はまた笑ってしまった。それから、私の熱が下がる四日後まで、毎日花束のプレゼントは続いた。




◇◇◇◇



 四日後。


 漸く熱が下がった私だが、心配症の両親やバーサたちによって、未だにベッドの住人だった。私の部屋には、ジェレミーから贈られた花が所狭しと飾られている。




「……お嬢様。」


 不満そうに部屋にやって来たバーサに、私は少し戸惑った。


「どうしたの?」



「ジェレミー様が面会に来られています。」



「え……。」



「私は、箒で叩いて追い出そうとしたのです!……ですが、箒を取りに行った所を侍女長に見つかってしまい……。」


 悔しくて堪らない、と言った様子のバーサに、また心が緩んだ。


「お嬢様が会いたくないと一言仰って下されば、私が追い返せます。」


 箒は使えませんが……と付け加えるバーサを見て、私は心強く感じた。


「ううん、バーサ。私、ジェレミーに会うわ。この前は、私の話しかしなかったから、ジェレミーの話も聞かなくちゃ。」


「お嬢様……。」


 それは、お父様から「話し合うように」と言われたから、というのもあるけれど、それだけじゃなかった。


 四日間、ベッドの中で考えていたこと。これを伝えなければ、と拳を握った。


 バーサは、不満そうにジェレミーを呼びに向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】あなたに嫌われている

なか
恋愛
子爵令嬢だった私に反対を押し切って 結婚しようと言ってくれた日も 一緒に過ごした日も私は忘れない 辛かった日々も………きっと……… あなたと過ごした2年間の四季をめぐりながら エド、会いに行くね 待っていて

あなたの仰ってる事は全くわかりません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。  しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。  だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。 全三話

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。

しげむろ ゆうき
恋愛
 キリオス伯爵家の娘であるハンナは一年前に母を病死で亡くした。そんな悲しみにくれるなか、ある日、父のエドモンドが愛人ドナと隠し子フィナを勝手に連れて来てしまったのだ。  二人はすぐに屋敷を我が物顔で歩き出す。そんな二人にハンナは日々困らされていたが、味方である使用人達のおかげで上手くやっていけていた。  しかし、ある日ハンナは学園の帰りに事故に遭い……。

デートリヒは白い結婚をする

毛蟹葵葉
恋愛
デートリヒには婚約者がいる。 関係は最悪で「噂」によると恋人がいるらしい。 式が間近に迫ってくると、婚約者はデートリヒにこう言った。 「デートリヒ、お前とは白い結婚をする」 デートリヒは、微かな胸の痛みを見て見ぬふりをしてこう返した。 「望むところよ」 式当日、とんでもないことが起こった。

処理中です...