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それからのこと。
34(エドモンドside)
しおりを挟むステファニーの様子が可笑しい。
今日は、シャーロットにお茶会に招待されていた。随分前から楽しみにしており、嬉しそうに出発していった。
ステファニーが輿入れの為に隣国から来て三年、知人がほぼ居らず寂しい思いをさせていたのは分かっていた。夫としてステファニーを大切にしているつもりだが、やはり女性同士でないと満たされない部分があるようだ。
なのでシャーロットから招待状を貰い、大喜びしていた。これから、そんなお茶会をステファニーが開きやすいようにサポート出来れば、と考えていた。だが。
シャーロットの家から帰ってきたステファニーは、エドモンドをじっと見つめているかと思えば、ぼんやり物思いに耽ったり、どうも様子が可笑しい。元気が無い訳では無い。だが明らかにいつもと違う彼女に、エドモンドまでソワソワ落ち着かなくなっていた。
◇◇◇
ステファニーの様子が可笑しい理由が判明したのは、就寝前のことだ。寝室でベッドに横になり、お茶会のお土産話を嬉しそうにしていたステファニーが、最後に少し緊張した面持ちで話し始めた。
「•••シャーロット様、ハリー様を十五年想われていたようです。」
「は•••?」
「シャーロット様が、殿下にも私にも謝りたいと仰っていました。早く伝えなかったこと、申し訳ありません、と。」
お茶会の終わり、シャーロットはステファニーと二人で話す時間を設けた。そこで長い間引っかかっていた謝罪の思いを漸く伝えることができた。
「•••何故今まで言わなかったんだ?」
思った以上に低い声が出て、自分でも驚いた。だが、もっと早く知っていれば俺たちは。
「殿下に伝えたら、問答無用でハリー様と婚約されると思ったそうです。」
ステファニーは優しく笑って、そう言った。
「愛する人が無理矢理自分と婚約させられるより、一人で生きていたいと思っていたそうです。」
「それは•••。」
これは自分の落ち度だ、とエドモンドは後悔の念が押し寄せた。シャーロットが王子妃候補で無くなったあの時、何か償う方法は無いかと躍起になっていた。そのせいで、シャーロットが自分の気持ちを噤んでしまったのだ。
「それで、シャーロット様はずっと気に掛かっていたようです。恐らく殿下も、私も、シャーロット様のことを気にして遠慮するだろう、と。•••その、殿下と私が、ずっと両思いだったのに、と。」
「な、に•••。」
ステファニーは、少し迷ったように視線を左右に動かした後、決心したように口を開いた。
「•••殿下。幼い頃から、ずっとお慕いしておりました。」
目を潤ませ、頬を染めるステファニーを、エドモンドは信じられない思いで見つめていた。
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